第14話 初ダンジョン探索

 朝8時にトウキン探索部の広間に出社し、朝の朝礼を始める。


 そのあと各班ごと点呼を行い、コンディションの確認をする。


 我々の班は第4班になる。


 古来より続くラジオ体操などはせず、個人で柔軟体操などを15分行い、ギルドに移動する。


 第4班のメンバーは俺と梢を抜かして


 遠藤えんどう寿人ひさと 23才

 探索中の呼び名は「ヒサ」 高身長でガタイがよく、まさに「タンク」盾役にもってこいのナイスガイである。


 山田やまだ健人けんと 23才

 呼び名は「ヤマ」 寡黙な男で、あまり発言はしないが、指示には忠実に従ってくれて、さり気なく援護をしてくれる、ザ職人!である。


 安藤あんどうアキナ 22才

 呼び名は「アキ」 彼女はモデルのような体型な高身長で、その長い脚から繰り出される、しなりのあるキックは、強力な武器となるだろう。ちなみに一番血の気が多いのは、このアキナである。


 俺の呼び名は「イソ」 梢は「コズ」となった。探索中の敬称は不要だ。


 今日からしばらくは森の浅い層へのアタックで、モンスターとの戦闘への慣れを得るための順応期間となる。


 各班、お互いに離れて探索が始まる。


 先頭はヒサで、盾と拳銃を持って慎重に歩いていく。その後ろに2列で続く。俺は2列目の左で一応銃とナイフを構えている。右側のコズも、後列のヤマとアキも同じだ。



 森の中は射線が確保出来ず、近接での戦闘になりそうだ。


 そうこう進んでいくと、我ら以外の、下草を踏む足音が聞こえてきた。モンスターである。


 初戦闘は、ゴブリン二体となった。


 2列目以降の我々が構える前に、先頭のヒサが焦って、拳銃2射で二体のゴブリンを倒してしまった。うん。楽勝すぎね……。


 魔石を回収し、軽く作戦会議。


「ちょっとみんな、一旦集合しよっか」


 こう言っちゃ何だが、俺は今日の為に厳しい訓練を積んできたのだ。このままでは出番が無さそうだからね。


 訓練ではヒサが盾を構えて惹きつける間に我々が、という模擬戦の流れだったのだが、こんな浅い層でそれをするつもりはない。


 それでも各自勝手に動けば、味方の弾にあたってしまう可能性だってある。


 それなので、先頭を交代制にした。


 そして最初は俺から行くことが決まったので、歩き始める。


 次に現れたのはスライムだった。俺は試しに大型のサバイバルナイフで戦ってみた。

 

 プスッと一突きで終わってしまった…。


「このナイフ切れ味バツグン…」いやこれはきっと我々が強くなりすぎてしまったのだ、と思うことにしよう。そして俺の先頭は交代となった。


 その後、皆もローテーションで先頭に立ち、オオカミ、コボルト、ネズミ、イモムシなどとも戦ってみたが、全て楽勝だった。


 合計50個くらいの魔石を集めて初日の探索は終わりの時間となったので、ギルドに戻り、魔石を渡し、大きさと量の書かれた受領書にサインし、武器と防具を保管部屋に置いて自社に戻る。


 この魔石は、一旦国で全て買い上げ各委託企業に優先的に半分払い下げられる。


 残りの半分は、他の研究機関や、軍需企業などに振り分けて売られる。


 トウキン工業は、それだけでも他のメーカーより優位に開発が進められるため、後々莫大な利益をうむ。そして我々がダンジョン内で活動しているデータでも、兵器開発や、研究機関へデータの売却などでも儲けは出ているようだ。


 小指の先程度の魔石でも、現存するどんなバッテリーより高出力である。


 その後、トウキン探索部の人間を交え、探索者全員でミーティングをする。

 やはりどの班も手応えがなく、拍子抜けだったようだ。そして早くも「ヒール」のスクロールが出た班があり、班長の女性が早速覚えたようだ。


 ダンジョンの外では魔法は使えないので、見せてもらう事は出来ないが、中に入っても、無駄撃ちは出来ないので、気楽には見せてもらえなそうだ。


 その他、特に問題は無さそうなので解散となった。労働時間はかなりホワイトだ。


 それでいて魔石回収量に応じて、給料に色がつくのだから最高である。


 ちょっと初日の探索が消化不良に終わったので、自主トレをしてから夕飯にしようと考えてトレーニングルームに行くと、第4班は皆、集まっていた。


 「なんだ、皆んな消化不良?」と声を掛けると、みんな「うん」と答えてきたので1時間程度、交代で模擬戦をして汗を流した。


 その後、皆で食事をしてから明日に備えて部屋に戻る。




 探索2日目も朝食を取り、8時出社、ミーティングをして柔軟をしてギルドに移動。

 装備を整えて、今日の探索スタートである。


 今日は昨日ほど慎重にはならず、先頭は俺で、両手にナイフを握り、小走りで森の入口から1kmくらいの所を一気に目指す。


 これには一応「素早さ」と「体力」を鍛えることが出来るメリットもある。


 最初に現れたのは可愛らしい角ウサギだったが、通り過ぎ様、首に一閃、瞬殺で魔石に変える。


 その後もパラパラとモンスターが現れるが瞬殺していく。そして1kmほど進んだ所で一旦ドローンを飛ばして映像を撮影し、地上で小型モニターを見ながら周りの確認。中心の建築物までは、おそらく50kmは有るだろうと思われている。


 その距離を周囲を警戒し、戦闘しながら必要分の食料と水を運びながら進むとなると、今の能力だと往復で10日以上は掛かるだろう。

 それにまだ、中心に踏み込む許可が降りない。それより手前で小さめの魔石を集めるという指令も受けているので勝手な事は出来ない。


 それでも俺…というより探索者全員の気持ちは一緒で、あの建築物を目指さずには居られない。


 取り敢えずドローンでは、ここから大体2~3km先に、丸く木々の生えてない一点が気になる所だが、他は木々に覆われていると言うことくらいしか解らずに、二手に分かれて、1時間後にまた今いる場所に戻ろうと話し、俺はコズと一緒に探索を始める。

 

 まずはコズが先導で俺が続く。コズのハンドサインで止まり、周囲を警戒すると、ゴブリンが3体いた。拳銃で倒すのは簡単だが、今回はナイフで倒すことにする。

「わたしが先ず左のゴブリンに行ってか真ん中のに行くので、イソは右から真ん中へ」


 そう言ってコズがダッシュでゴブリンに近づいていく。俺も遅れることなく付いて行き、右のゴブリンの首を斬る。そのまま真ん中も行こうとしたが、すでに終わっていた。


 今迄で一番、理想通りな流れで戦闘が出来たと思った。そもそもまだ森の入り口付近なのだから、少人数で充分なのである。


 会社の方針だから文句言わずにやるが、実際は一人でも良いくらいだ。


 そんなこんなでその後さらに3匹のイモムシと角ウサギを刈って合流した。


 合流すると、アキがスキルブックを持っているのが目に入った。

 どうやらアキが倒したコボルトからドロップしたらしい。スキルはアクティブスキルの「二段突き」で、そのままアキが使ってみることになった。

 遂にウチの班にもスキル持ちが誕生した。


 それから昼食を簡単に済ませてから少し移動し、アキの「二段突き」を見せてもらってた。


 スキルの使用を初めて目の当たりにしたのだが、見学者は皆、唖然としていた。


 今回は武器がナイフなのだが、突く特性のある武器なら何でも行けるようだ。


 スキルが発動すると、尋常ではない速さで2回高速で突きをだす。これは今後会うであろう強敵とも、戦えるようになるだろう。


 その後、また二手に分かれて、今度は2時間後集合にして同じメンバーで別れた。


 今度はおれが先導でコズが後ろ、適当に歩き回って見る。


 ゴブリンが2パーティ計5体、イモムシ3匹にオオカミ5匹倒した所で合流の時間になり、戻り始める。


 するとコズが「イソ、あれ何?」と声を掛けてきたので振り返って、指の差す方を確認してみると、木で出来たどう見ても宝箱らしき物が地面にあるのが確認できた。


 



 

 




 


 



 


 

 

 


 

 


 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る