第11話 「あの日」から1~2年

 ダンマスが現れた「あの日」から1年くらいは、まあ世の中、大賑わいであった。


 まずネット民は、ダンジョン暦なる新たなこよみを勝手に産み出し、ダンジョンが現れた年をダンジョン元年と言うようになった。


 そしてダンマスが現れた日を「あの日」と言うことが世間では暗黙のルールみたくなった。

 

 ワイドショーなども連日、ダンジョンの話題で盛り上がっていた。何処かで内戦が起こったとか、何処かの少年が病からの奇跡の復活とか、そんな話題はすぐに忘れ去られていった。


 そして当然、穀物が採れるダンジョンも同じく賑わっていた。


 なんせ今まで輸入に頼っていた穀物が、自国で取れるようになるというので当然と言えば当然であろう。


 ただ国としてはそう簡単にはいかないらしく、あの国やあっちの方の国から、かなりの買え買え圧力を掛けられていたようだ。


 ノーとは言えない敗戦国の弱腰外交が招いた悲劇であろう。


 それでも国内では、新たにダンジョン省が設立され、法が整備され、ダンジョンへの雇用が産まれ始めた。


 魔王にビビった御上達の必死さが伺える迅速さであった。


 ダンジョンへの入口の門(「転送門」というらしい)へ、ダンジョン内に建てる施設用の建築資材がバンバントラックで搬入されていき、素人目からでも好景気を迎えそうな様相をしていた。


 そしてダンジョンに入った人は、みんな透明タブレットで、自分の能力の数字を知っているようだった。


 マトメサイトなどで大体数字の基準がわかってきた。


 項目としては、「生命」「チカラ」「体力」「素早さ」「器用さ」「賢さ」で、「生命」はパーセンテージで表示され、なぜか皆90%になってるらしい。


 ダンジョンに入るには「生命」を削らないと入れないのか?


 だがそれもダンジョン内で一夜を過ごした自衛隊員により、0時を跨ぐと、さらに10%削られ、睡眠を取ると100%に回復する事が判明していた。

 「生命」がパーセンテージで表示されているので、仕事で疲れが溜まってくれば、数値は減っていのがわかるので、自分の体調管理がとてもしやすくなったらしく、大好評みたいだ。完全に自己申告だけどな。

 

 それ以外の項目は、一般的な能力は10らしく、人より少し優れていると11、天才と言われる人で15行くか行かないか位らしい。


 俺も調べてみたくてしょうがなかったけど、勝手にダンジョンには入ることは出来ない。


 当然である。なんせダンジョン内で建設に携わった職人たちが、比較的早くに「チカラ」の能力が上がっている事が判明したからだ。


 これは大問題であろう事は誰でもすぐわかり、国もダンジョンに入る人間の規制を始めた。

 なんせすぐ能力が伸びてしまうのであるから、ドーピング以上の効果である。


 スポーツの公式試合や、大会には出場が禁止になってしまった。


 初期の頃の作業員達は可哀想ではあるが、国からの賠償金が出たとかなんとか。


 その後はダンジョンに立ち入る人間は、自分で誓約書を書くようになったようだ。


 問題は国内より国外からの視察団の連中だった。視察団の人間も、ダンジョンに入れば、肉体的に成長してしまう可能性が出てきてしまったので、そこら辺をしっかり解決していかないと、まずい問題であった。


 逆に自衛隊の方達は、ダンジョン内で交代でトレーニングや軽い訓練を行っているらしい。

 これは「あの日」ダンマスが言っていた、魔物の居るエリアの開放に、いち早く対応するための処置だったらしい。


 いつ開放されるかわからないのに、頭の下がる思いであった。


 「あの日」から1年経った頃、また突然新たな転送門が現れたのには、日本中が歓喜の声を上げた。


 待ちに待ったモンスターエリア開放か!と

お祭り騒ぎだったが、調査の結果、どうやらレアメタルやレアアースが埋蔵されているらしいエリアだったことが判明し、これはこれで大騒ぎだった。


 もともと日本の地下にも、レアメタルは眠って居ると言われているが、彼の国の圧力で手を出せていない。


 そんな所にダンジョン産のレアメタル、レアアースである。海外の圧力など何のその、文句があるならダンジョンへ!がスローガンになりつつあった。


 完全にダンジョンは、日本の味方!


 ただ0時跨ぎの壁で、掘った所が復元されてしまうのを、どう対処するのか、専門家や評論家が議論を繰り広げていた。



 そしてダンジョン暦3年、実質「あの日」から2年弱くらい経った頃には、穀物用の工場もかなり稼働し始め、雇用もかなりの人数になってきていた。


 電気や水の問題が当初心配されていたが、電気は火力発電で賄っていたようだ。


 水に関しては、「ここら辺に水が湧いていればな」と調査隊が話していたら、翌日にはその願いが叶えられていたという。

 火力発電の方では、どれだけ空気を汚しても、0時を跨げば完全にクリーンになってしまうのである。


 そのため、ゴミの焼却炉を作る計画も立っているが、今だ実行はされていない。ダンマスを気にしての事なのかな?


 トイレで出る汚物も、当初は心配されていた。なんせ地面を掘っても、0時を跨ぐと元に戻ってしまうのであるから、困ったものであったらしい。


 偶然の発見で、地面に落ちてた汚物が、0時を過ぎた途端に消えたのを見た。と言うネットの書き込みで、全て解消されたみたいだ。

 上モノをしっかり作って、地面に落ちるように設計すれば毎日キレイで清潔である。


 そして世界に衝撃を与えたのが、ダンマスからのプレゼントで受け取った魔石と言われた例の宝石のような石である。


 この魔石は、詳しくはわからないがこれ1つで東京の使用電力を3ヶ月は補える程の凄い量のエネルギーを蓄えている事が解ってきていたらしい。


 まだ1個しかない魔石の為、研究機関で取り合っていたようだが、このエネルギーを取り出す装置の開発に、国中が力を注いでいた。



 とまあ、ざっとこんな感じで「あの日」から、まる2年が経った時、遂にそれは現れた。



 


 



 

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