第9話 Xデイ前夜

 人辞め宣言から、あっという間に8ヶ月がたった。


 いよいよ明日、ダンジョンと地上を繋ぐ転送門を設置する。

 

 あれからもコツコツ穀物広場を拡張していて、今では10km四方まで拡げることが出来ている。

 中心に工場誘致用のスペースとして、何もない土地を1km四方用意した。

 電源は外から引っ張って来ることは出来ないので、発電所とかはどうしようか考えているが俺の頭では答えは見つけられなかったので、頭の良い人に任せよう!うん


 用地が足りないようなら、また増やせばいいから、現時点ではこの広さで行こうと思う。


 そして、さらにその中心に転送門を設置する予定である。


 転送門は一方向からしか出入り出来ないなので、ダンジョン側は門の少し先に十字路があり、そのまま真っすぐ端まで繋がる道を作った。インフラは大事。


 十字に伸びた道の脇は全て穀物の畑で、小麦、トウモロコシ、大豆にしてみた。 


 ここら辺の穀物は、人間が消費する分もあるが、家畜の飼料にもなる。


 飼料の値段が下がれば、肉関係も値段が下がって、消費者もハッピー!そんなに簡単にはいかないのかな?考えが浅すぎるかな?所詮、高校生の独りよがりではあるのだけど、頭使っていれば賢さが上がる…全く変わって無いけどね。


 畑に小麦色が一面に広がってる風景を見ていると、何だか毎年放送される、スタ○オジ○リの有名な映画「その者〜。金色〜」を思いだし、心トキメク。


 そのうち学者や文化人とかが、ワイドショーなどで、あれがあれば、これがこうなら、って言い出しそうだし、そうしたら願いを叶えてやろう。(神目線


 とまあ穀物ダンジョンの方はこんな感で、こちらの準備は終わっている。


 門を繋げるタイミングも決定した。


 サブマスの雫と相談した結果、「最初に公表しちゃったら?」と言われ、俺としてもその方が、今後の運営にも効果的なので、その方向で考えてる。


 明日、国会中継が有るので、中継中に転送門で乗り込んで、大々的に発表してやろうと思っている。国会ジャックである。


 当然正体がバレないように変装して重装備を身に纏い、スライムに跨り、まるでスライムのナイトかのように登場してやろうと思っている。


 ダンジョンの外では不死じゃ無くなるので、慎重に行かないとね。


 ダンジョン内でも、即死系の攻撃を受ければ不死もなにもない。


 スライムは護衛には不向き(ヌッコロは得意)なので、ダークナイトと言うモンスターも5体召喚し、連れて行く予定だ。


 このダークナイトはメガスライムより格上の「男爵級」で、影に潜り込める能力があるので、隠密行動が得意で、混乱した会場を制圧するには適任だと思っている。


 世界よ!震えて眠れ!


 ちなみにスライムは雫用にメガを1体召喚し、その他もキング以外は召喚済みである。


 テラスライムを召喚した時点でDPが予定より使ってしまったので、キングはオアズケである。キングは当分無理そうだ。


 ちなみにテラスライムのランクは「公爵級」、キングスライムは「魔王級」だ。

 


 そして個人的な、一番大事なイベントが有る。

 

 そう、霊薬「エリクシール」での癌の治療である。


 ポイントも貯まり、いつでも交換出来る分は有る。


 これからは地球での活動も増えて来るかもしれないので、今日のうちに使っておこうと思う。


 なのでこれから、何が起こるかわからないので、家族の前で使おうとしているところである。


 目の前には凄い豪華な銀細工の施された美しいガラスビンがある。


 中には100ccくらいの虹色に輝く液体が入っている。この量で10億円である。

 

 家族が固唾を飲んで見守ってくれてる前で、先の尖たクリスタルのように美しい蓋を外す。


 フワッと甘ったるい匂いが鼻腔をくすぐり、ビンを持つ手が震えていくる。


 震える手を両親が握ってくれたので、少し落ち着く。


 いざ!!

 

 少しトロミのある液体が、喉を通った途端、自分の身体から眩い光が放たれ始める。


 霊薬の入っていたガラスビンは、蓋ごと何処かともなく消えて無くなった。


 家族も直視出来ないようで、手で目を覆っているのが目に入った。


 自分の身体が、作り変えられる感覚はあるが、指一本動かす事が出来ない。


 体感で5分くらい経ったころ、発光が収まっていく。


 今まで感じた事が無いくらい身体が軽い。


 常に悩まされていた頭のもやも、キレイに無くなっている。


 検査するでもなく、病巣が無くなっているであろうことは一目瞭然である。

 

 明日をも知れぬ身だった日々を思い出し、涙が溢れてくる。


 家族皆で泣きながら抱き合った。


 産まれて始めて生きてて良かったと思えた瞬間である。


 今日が俺のXデイ!


 世界よ待ってろ!明日は世界が生まれ変わる日となるだろう。


 その後、皆で食卓を囲んだ。もう、何時ぶりか思い出せないくらいに久しぶりな一家団欒。「こんなに楽しい食事が味わえるなんて」と、家族皆がまた涙を流した。


 心も身体も生まれ変わった俺は、明日に備え最終確認をして、ダンジョンに居る間は必要無くなってしまった睡眠を、実家でとることにする。


 久しぶりに雫が一緒に寝たいとモジモジしている。これがデレてるってやつか?一緒の布団に入り、昔ばなしに花を咲かせた。可愛いやつめ!

 

 寝る前にナビゲーターのパツコさんと「いよいよ明日か。そういえばチュートリアルは何処まで?」と頭の中で聞いてみると『チュートリアルはダンジョンが地上と繋がるまでです』と答えが帰ってきた。


「明日じゃん!」とびっくりして飛び起きる俺。


 ただヨクヨク聞いてみると、チュートリアルが終わったからと言って消えるわけではなく、そもそもダンジョンコアの化身のパツコさんなので、今後も相談することは出来ると言うことだった。

 

 それを聞いて、安心して今夜はぐっすり眠れそうだ。


 明日の発表で、何処の国が圧力を掛けて来るのか楽しみだ。



 待ってろよ世界!明日激震が走る事だろう!








☆一応ここまでが第一章と言うことで区切りとさせて頂きます。

 楽しんで頂けているか分かりませんが、これからも掲載していきますので、よろしくお願いします。



 


 

 

 

 

 

 




 



 

 

 

 


 

 

 


 

 

 

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