第4話 初登校2!今のところ異常……え?あるんですか!?

晴音のことを先生に送り、ひとまず落ち着いたところで、僕も自分の教室である2年7組に向かった。

ドアを開け教室に入ると、晴音を送るために早く来たのもあり、まだ誰も教室にはいなかった。


「誰もいないのか。…なんか久しぶりに一人になった気がするな。しかも、それを感じるのが家じゃなくて学校の教室って」

しかし、慣れというものは誰にでもあるもので

「…少し寂しいな」

そう思ってしまう。

しかし、そんなシリアスな展開になることはなく

「おはよぉー!」

とかなり大きな声での挨拶が聞こえた。



私、如月 晴音は今、すごく緊張しています。

…え?なんでかって?そんなの決まってます。

これから新しいクラスに行って自己紹介するからです。

私はもともと、かなりの人見知りで大勢の前で話したりすることが苦手なのです。

はい。なので今すぐにでもお兄ちゃんの教室に行きたいです。

でも、頑張るって言ったからにはちゃんと努力しないと。

そんなことを思いながら深呼吸をしていると、先生が声をかけてきてくれた。

「そろそろ教室に入りますけど、大丈夫ですか?」

「ふぅ。はい大丈夫です」

「わかりました。では入ってきてくださいと言ったら教室に入ってきて、自己紹介をお願いします」

「はい」

そして1分くらいたった頃、教室から入ってきてくださいという声が聞こえた。

教室に入り、みんなの前に立つ。

緊張して、今にも倒れそうになる。…でも、お兄ちゃんの「頑張ってこい」の一言を思い出して落ち着く。

「えっと、はじめまして。き、如月 晴音と言います。みんなと仲良くしたいです。その、よ、よろしくお願いします!」

言い切った。そのすぐあと、教室の中は大きな拍手と叫び声(主に男子)に包まれた。

「みんな静かに。それでは、晴音さんは1番後ろの佐々原ささはら 琴乃ことのさんの隣の席に座ってください。彼女は学級委員なので分からないことがあれば彼女に聞くようにしてください。もちろん私に聞きに来ても構いませんよ」

「はい。ありがとうございます」

「では、今日の1時間目の総合の時間はは仲良くなるために、全員の自己紹介と残った時間で晴音さんに少し質問をする時間にしましょう」

……はい?先生今なんとおっしゃいましたか?

質問をする時間?自己紹介するために準備が必要な人に?えっ?

頭の中で処理が追いつかなくなり固まってしまった。


1時間目。みんなの自己紹介がありました。

そのはずなのですが、誰一人名前が覚えられていません。

理由はもちろん私の質問コーナーの事です。

時間が余ったらとか言っていたのですが、あと20分ほど残っております。

皆さん自己紹介早いですね。

そんなこと考えている場合ではないのですが、まあ現実逃避みたいなものです。

なんででしょう?実際には喋ることが出来ないのに、心の中だとすごいおしゃべりになります。

そんなことを思っていると

「では、皆さんの自己紹介も終わったところで、晴音さんに質問をしましょうか。晴音さん。答えたくないことは答えなくて大丈夫なので、皆さんの質問に答えてあげて貰えますか?」

「……あっ!はっはい!」

言ってしまった…

「では質問のある人は挙手をお願いします」

「はーい」

初めは元気で活発な感じの女の子が手を挙げた。

「晴音ちゃんはどうして転校してきたのー?」

「えっと、親の、再婚です」

「そうなんだ〜」

よかった。このくらいの質問なら答えられそう!

「はい」

次は大人しそうな男の子。

「晴音さんの名前の由来は?」

「えっと、晴という字は『雲が晴れて太陽が照り輝く』という意味があって、音はそのまま音。だから、綺麗でくらいところから晴れた様子を音のようにみんなに伝えてあげてっていう意味です」

そう伝えると

「めっちゃいい名前じゃーん」

「晴音ちゃん綺麗だしピッタリだね」

と言う声が聞こえた。

お母さんから貰った名前を褒めて貰えて嬉しかった。

そこから、8人の質問に答えた。

そして、時間的に最後の質問。

「は〜い」

最後はなんというかちょっと悪そうな感じの男の子だった。

「晴音ちゃんは彼氏いんの〜?」

そういう事は聞かないものじゃないの!?

でも答えないと後々面倒くさそう…

だから

「彼氏は、いません。もちろん今までも。でも、ずっとずっと好きな人はいます。昔の私を助けてくれた人。この世界で1番かっこよくて頼りになって、私が世界で一番愛している人です」

本当のことを言った。

すごく幸せな顔で、儚い美しい顔だった。

それを聞いたクラスの男子たちが、何故か急に机に突っ伏してしまった。女子はポカンという表情をしている人が半分、キャー!という声をあげている人が半分だった。

「…えっと、みんなどうしたの?」

「……はぁ、蒼くんの不安が当たりましたね。晴音さん。ありがとうございました。席に戻って貰って大丈夫ですよ」

「えっ?は、はい」

結局、どうしてみんながあんな感じになったのか私はわかりませんでした。



「おはよぉー!」

大きな挨拶。これは2年7組ではもはや恒例行事のようなものである。

石島いしじま りく。俺の中学校の頃からの友達で親友である。野球部キャプテン、でムードメーカー的な存在。

「おはよ陸今日早いな」

「あれ、蒼だけか?まあな、早く起きすぎちゃったから来た」

そんな会話をしているうちにみんなが登校してきて、1時間目が始まる。

案の定、早く起きてしまった陸は眠そうである。

というか寝ている。それを先生見つかって注意されているのが面白かった。

そして1時間目が終わったところで、何故か田中先生が教室に来た。

「蒼くんいるかい?」

「どうしました田中先生?」

「いやー実はね……」


「えっ、晴音が問題を起こした!?どんなですか!?」

「うん。それが、みんなが晴音さんに質問する時間を設けたんだけど、その時に好きな人がいるということを言ってね、その時の表情を見た男子たちが机に突っ伏したまま動かないんだよ」

……あっ。そういう。

「あー。僕の心配した通りですね 。…というか問題を起こしたとか言わないでくださいよ。心配しますから」

「ごめんね、ちょっとびっくりさせようと。それと、みんなとは仲良くできそうだという報告も兼ねてね」

「そっか。良かったです」

「うん。じゃあ先生は仕事に戻るね」

「お疲れ様です」

そういうと、先生は教室を出ていった。

「とりあえずは安心かな」

(…ん?待てよ。先生なんて言った?

晴音に好きな人がいるって言ってなかったか?

え?マジ?

あれかな、前の学校の子とか?

うわすっごいモヤモヤする。)

先生の発言により、兄として謎の不安が生まれた。

だがそう考えているのもつかの間。

…今度は俺が質問攻めに会う時間だった。



















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