第2話 お休みなのに、心が休まりません…

翌朝、いつもより30分早い4時に起きた俺は、朝ごはんの準備を始めた。……んだけど、ちょっとだけ困ったことになった。

それは

「あの二人って、アレルギーとか嫌いなものとかどうなんだろう?あるなら、入れないようにしないとだけど……」

ということだった。

好き嫌いならまだしも、アレルギーのものを入れる訳にはいかないので、まだメニューを決めそこねている。


「うーん…さすがにそれを聞くためだけに起こすのも悪いよなぁ。昨日いきなり来て疲れてるだろうし」

うーん、うーんと唸っていると、

「あら、蒼くん。おはよう。早起きなのねぇ」

と言う声が聞こえてきた。


「あっ、おはようございます、澪さん…じゃなかった、お母さん」


「呼び方はなんでもいいのよ〜、澪さんって呼んでももちろんおっけーだし」


「そうですね。まあ、呼びやすいように呼ばせて貰います」


「それで、困ってたみたいだけどどうしたの〜?」


「ああ、ちょうど良かった、澪さんと晴音さんってアレルギーとか、好き嫌いってありますか?なければ準備朝ごはん作っちゃおうと思って」


「あら〜、私が作ろうと思ってたのだけど、ありがとう!えぇっと、アレルギーはないけど、晴音はトマトが苦手」


「いつも作ってるから気にしないでください。トマトが苦手か…じゃあ、晴音さんのサラダには入れない方がいいですね」


「出来ればそうしてあげて欲しいわ〜」


「はい。澪さんは休んでてください。昨日急に来てもらって疲れてるでしょうから」


「うん。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうね〜。あ!あと、晴音の事は呼び捨てにしてあげて欲しいの」


「どうしてですか?」


「いろいろあるのよ〜」


……教えてくれないということは、まあ何かしら事情があったりするのだろうか。

呼び方に事情……。ごめん、なんも思い浮かばなかった。

とりあえず、

「わかりました。最初は慣れないかもだけどそうします」



澪さんとそんなやり取りをした後、僕は朝ごはんの準備を始め、澪さんはソファーに座った。

(…改めて見ると澪さんって凄い美人だよな。)

綺麗な長い黒髪に、まさに本物のモデルのような体型。そして、優しく落ち着いた顔立ち。

(父さんよくこんな人と再婚できたよな…。てか、二人がどこでどんな出会いをしたとか、いつ頃から関わりがあったとか知らないな)

今度、父さんに聞いてみよう。


そして、父さんと晴音も起きてきたので、朝ごはんにした。

今日は普通に和食にした。アニメとかによくある焼き鮭とお味噌汁とご飯みたいなやつ。

『 いただきまーす 』


さて、ご飯を食べ終わって片付けまで済ませた。

…で、今俺の部屋なんだけど、

「晴音さん?どうして俺の部屋の押し入れを漁っているんだい」

「………」

「…?あの、晴音さん?」

「………」

「あの〜…」

「…晴音」

「…?あっ!そうか。晴音〜どうかしたのか」

「!はい、えっと、その、お兄ちゃんのアルバムを、見たくて」

…急すぎない?いや別にアルバムくらいいいんだけどさ、なんかほら、他の人の部屋に入るなら一声かけてくれないかな?普通。

「いいけど 、そこにはないよ。アルバムはこっち」

本棚を指さすと、晴音はすごい勢いで取りに行った。

…なんか小動物を飼ってる人の気持ちがわかった気がする。

(それにしても…)

晴音も澪さんとは違う雰囲気だが、すごい美少女だ。澪さんの優しい感じではなく、儚いというのだろうか?

可憐で儚い、だからなのかすごく守ってあげたくなる。澪さん譲りの綺麗な黒髪に、左右対称と言っていいほど整った顔。そして、おそらく、父親と同じ蒼色の綺麗な目。

父親は外国の血が入っていたのだろうか?

ひとまず、久しぶりにアルバム鑑賞でもするか。



「お兄ちゃん!これって中学校の文化祭のやつですか?」

…晴音さんや。楽しんでいるのはいいんだけど、近すぎないかい?

そんな動揺を隠すように晴音の質問に答える。

「そうだよ。懐かしいなぁ中学3年の時だから、母さんと一緒に楽しんだ最後のイベントだったかな?」

「…!えっと、ごめんなさい」

「ん?あぁ、いいのいいの。もう2年前の話だし。何より、こう言ったら悪いけど、二人が別れたおかげでこうやって晴音と家族になれたし」

…いま変な事言ったな。ほら、晴音の顔赤くなってるじゃん。なにしてんの俺?

「まあ、気にしないでね。と言うか、どうして急にアルバムなんか探してたの?」

「それは…その……なんでもないです。ただ、見たかっただけです」

「そうなの?見たいのがあればいつでも言ってね」

「はい。お兄ちゃんありがとうございます!」

…至近距離でのその笑顔は反則だと思います。

明日もこんな感じだったら、心が持たない気がする…



そう言えば

「晴音の部屋ってもう片付いたのか?」

「はい、ある程度は。」

「明後日から学校行くんだよな?準備はしておいた方がいいぞ、って言っても特にないか」

転校初日は教科書とかもないから心配はないか。

「明日もお休みだから、分からないことがあったら遠慮なく聞いてね」

「うん!」

……晴音が入った教室の男子、全員死ぬんじゃないか?

そんなちょっとした不安があるけど、大丈夫だと信じよう。

後輩くん達頑張れ!

ひとまず、明日の休みにしっかり心を休めよう。






蒼の心がさらに疲れるまであと数時間。











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