第1話 緊急家族会議(ほぼ会議しない)ーーー!
一度自室に戻り、制服から部屋着に着替えた僕は改めて父さんたちに話を聞くことにした。
もちろん今度は詳しく教えてもらう。
「ふぅ」
溜息をつきながらひとまずリビングのソファーに全員で座った。……のはいいものの、俺は今かなり困惑している。
その理由は目の前で何故か土下座をかましている父さんにあった。
「さてと。……とりあえず父さんはどうしたんだよ!なんで土下座してんの!?」
……これ本当に俺の父さんか?
この人、普段はめっちゃちゃんとしてる人なのに。
でも、さすがに自分の父親を間違えることは無い。間違いなく俺の父さんだ。
しかしそれなら、親としての威厳をもう少し保って欲しいものである。
「蒼。今まで黙っていて本当にすまない!」
……どうやら落ち着いたようだ。
おそらくさっきの土下座も落ち着いて考えた結果、やっていたことがおかしいと気がついての謝罪だったのだろう。
「もういいから。……とりあえず、改めて結婚おめでとう、父さん。」
「ああ。ありがとう。」
「まあ、聞きたいことは山ほどあるけど、とりあえず先に二人の名前を教えてほしい。」
「そうだな。まずこちらが、これから君の母親になる
「澪です。蒼くん、これからよろしくねぇ。」
「晴音です。お願いします。」
「蒼です。こちらこそよろしくお願いします。」
「
「そんなことないですよ」
というか、久しぶりに父さんの名前聞いたわ!
ずっと父さんとしか呼んでなかったから春翔さんって呼び方新鮮だな。
「そうだ!蒼くん。私のことは好きに呼んで貰って構わないからね。」
「そうですね………じゃあ、お母さんって呼ぼうと思います。」
「ん?なんだ。母さんじゃないのか?」
「いや、それだと母さんに失礼だろ。別れたとはいえ、産んでくれて、育ててくれたことには感謝しているからさ。」
「そうか…やっぱり蒼は優しいな。」
……!そうか、父さんは心配してくれてたのか。
母親がいないって普通じゃないもんな。
だったら、俺が返すべき言葉は決まっている。
「父さんこそ。いつも俺の事考えてくれてありがとうな」
そんな会話を繰り広げていると、
「さて、自己紹介が終わったところでこれからのことについて話し合おうと思うのだけど…」
「どうした、父さん?」
「いや、使ってない部屋があとひとつあるけど、いま使えない状態だろ?だから今日寝る時どうしたものかと。」
「あ〜。そうだな……晩ご飯までまだ時間あるから、俺が物置部屋片付けとくよ。でもさすがに晩ご飯作るの遅くなるから、そこは許してくれ。」
「あらぁ〜。じゃあ、私が作っちゃってもいい?」
「えっ?作ってもらってもいいんですか?」
「もちろん!これでも料理には自信があるの〜。それに、お母さんなんだから。」
……今まで、俺以外が料理したことはほとんどなかった。
そうか。お母さんだからか。
「……じゃあお願いします!」
「は〜い!」
「ふぅ。こんなもんか。」
掃除を始めてから約1時間。
物置部屋はそこまで酷いわけではなかったので、思いのほか時間はかからなかった。
それにしても、今日はいろいろと疲れた。
……いや、普通ないぞ。急に親が再婚するって。
でも、嫌な疲れじゃない。むしろ、嬉しくて体力が切れかかってる感じだ。
「……これからは、俺も父さんも少しは楽になるかな。」
ずっと仕事をしている父さんと家事を全てやっている俺。
負担が少しでも減ればいいと思う。
……いや、とりあえず俺はいいから、父さんが休めるようになって欲しいな。
そう考えながら、俺は3人がいる暖かいリビングに戻った。
「いや、すっご!」
澪さんの作ったご飯は凄かった。
出てきたのはオムライスだったのだが、きれいに包まれていて、お店に出せるのでは?と思ったほどだ。
「冷めないうちに食べちゃいましょう。」
「そうですね」
「じゃあ、いただきます」
多分、父さんも同じことを思っていると思う。みんなで食べるご飯っていつもより暖かい。
さて、食べ終わった。
率直に言おう。めちゃくちゃ美味しかった。
マジで店の味だったって!
今度からもお願いしようそうしよう。
そして、片付けも終わったところで、父さんが
「さて、じゃあ、部屋はどうしようか?」
と切り出してきた。
「まあ、普通に俺と晴音ちゃんが一部屋ずつで父さん達が2人でって感じかな。あっ!あと、晴音ちゃんは俺の部屋を使ってくれる?物置部屋にベッドがないからさ。」と俺は答える。
しかしそこに、大砲並みの発言が飛び出してきた。
「…?蒼くんと晴音が一緒に寝ればいいじゃない?」
……いや、何言ってんのこの人。
「いやいやいや、いろいろとまずいでしょ!?それに、この家に来たばっかりなんですからしっかり休んで貰わないと」
「そう、ざんねんだわぁ〜」
…よし。わかったことがある。
この人は………なんかすごいズレている!
「とりあえず、今言った通りで今日はお願いします。父さんもいいよな?」
「ああ。ありがとう」
……マジで明日が土曜日で良かった。とりあえず、明日は休みだから、改めていろいろと考えよう。
掃除当番とか寝室とか。
そう考え込んでいると、袖が引っ張られ、
「ベッド、ありがとうお兄ちゃん」
そう言われた。
そう。ただそれだけなのに……破壊力がすごい。
……心が浄化された気もするし、えぐられた気もした。
シスコンになる人達に対してなんでって思ってたけどこれはなっても仕方ないね!
そんな動揺を隠すように
「大丈夫だよ。ゆっくり休んでね」
と伝えた。
「うん!」
とびきり可愛い笑顔が帰ってきたよ。
そして俺のライフが終わった。やったね!
……俺も今日は早く寝よう。
この騒がしい心臓を早く落ち着かせなくては。
「あ!そうだ、言い忘れてた。」
…?なんだろう。
「晴音、お兄ちゃんと、同じ学校、に通うことになりました。でも道がまだ分からないから…その…」
なるほど。
「そうなんだ!じゃあ、来週からは一緒に行こうか。」
「…!ありがとうお兄ちゃん!」
「いいんだよ〜。じゃあ、またあしたね。おやすみ晴音ちゃん」
「はい!おやすみなさいお兄ちゃん」
てててて、という小さな足音が聞こえなくなった。
「ふぅ。」
……もう何も考えちゃいけない気がする。
可愛いすぎるだろ。
…よし。寝よう。
俺は、明日に備えていつもよりも1時間早く寝ることにした。
今日は久しぶりに普通じゃない日だった。
なんか、嬉しい気がする。
その気持ちを感じながら少しでも早く明日が来るように願って、布団に潜った。
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