第64話
二人で頭を抱え込む。なんだろう。何が足りないのかな? 冒頭のシーンはいい。いいのだけど。
「お前が力不足なんじゃないのか?」
蓮さんがここぞとばかり言い出した。
「俺がやってみてもいいですか?」
急にそんな事を言い出す。みんなが、えっ。という顔になった。
「なんだよ? 俺がプロデューサーなんだぞ? どうやろうが自由だろうが!」
そう言って僕を押しのけると、京花さんと芝居を始めた。
隆二が言っていた通りだ。彼は僕の台詞をすべて頭に入れていた。
そしてそれが自然に出る。くやしいけれど、流石劇団海洋の人だ。相当に上手くて驚いた。
その時演出家の先生が言った。
「蓮くん、相変わらずいいね、そうそうこれくらい気障な感じが欲しいな。これくらい嫌味な感じに……」
はぁ……だよなぁ。凄い上手い。
やっぱ本場の劇団の人には叶わないや……。
「蓮さんが上手いのは当たり前よ、私とも共演したことあるし」
京花さんが耳元で囁く。
きょ、京花さーーーーん。
僕はもうあなたにホーリンラブです、優しいっ、素敵っ、あなたになら抱かれてもいいっ!
「ただ、悲壮感は守君の方が出てるな」
そう言うとその場にいた観覧席の瑠璃さん達が一斉に噴きだした。
瑠璃さーーーん。てかあの一角煩いっ。
海倉監督なんて昼間っから酒飲んでる! あの親父ーー! そのうち酒の海で溺れてしまえ!
しかもライダーの脚本家の花園先生もどうでもいいですけどここ一週間ずっと来てる。
あの人たち暇なのかな……。ううっ。
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