第53話
「これはこれでなかなか美味しいだろ」
隆二はそういうと僕が手にしていた水筒を取って自分もそれを飲んだ。
「えっ、あっ」
「ごめん、水筒一つしか持ってこなかった。まぁこれ沢山入ってるから大丈夫だろ?」
そう言うと自分の分のおにぎりを食べ始める。
周囲もみんなお弁当やら買ってきた物を思い思いに食べているけど、視線がやはりこちらに向いているようで、僕はもう見られるのを覚悟して背中を向けた。
とりあえずタオルで首隠したから大丈夫かな。
おにぎりは本当に一個の中に色々入っていた。梅とかシャケとか昆布とか……凄い大胆。
面白い発想かも。今度真似してみようかな……。
食事が終わってしばらくすると隆二は僕の肩を揉み始めた。
「隆二……」
「いいから、いつもお前が俺について来てくれる時やってくれてるだろ。その真似事をしてるだけだよ。いつも本当ありがとう」
「そんな……」
あ、結構上手い……。
あ、そこ、いいっ……。
時々隆二に肩を揉んでもらうのだけど、こんなに本格的に揉まれるのは始めてだ。
肩を揉まれると、更に今度はストレッチの手伝いをしてくれた。
「いててて」
隆二に背中を押されて限界まで体を折り曲げる。
「足を広げて」
「はい」
もうされるがままだ。
「ほら、ほら」
ううっ、いたっ。体柔らかくしなきゃなぁ。
隆二は僕の足を揉んでくれたり色々する。でも上手いなぁ……。
「隆二、マッサージ師の資格とか取れるんじゃない?」
「うん? そうかな? 昔習った事はあるんだけどね。体のツボとかね。それは今も勉強中だけど」
「へぇ……本当? 体のツボねぇ」
「うん、時々教えてくれる先生がいてね、人体に関しては色々知りたいんだよね。ちょっと痛いけどツボ押させてくれない?」
「うん、はい、あっ、いたたたたた!」
隆二は足の裏をぐりっと押すと僕は思わずのけぞってしまった。
「うーん、胃腸の状態が今ひとつかな、ストレスかかってる?」
「いたたたたたた! 痛いっ、そこっ痛いーー!!」
うっ、みんなが見てるっ。静かに静かに……。
うおっ、痛いーー!!
両方の足のツボをあちこち押されて僕は悶えてしまった。
体を仰向けに寝かされ、なんと隆二が乗っかってきた。
ちょっとおおおお!!
「ここは?」
そう言うと彼はおへその下や恥骨に近い部分をぎゅーっと指厚する。
「いっ! うっ、あっ!!」
何ここ? ちょっと気持ちいいかな……。
「ここはなに?」
「ここは精力回復のツボ」
「やらなくていい、やらなくていい!!」
「なんだよーやって欲しいくせに、こら、こらっ」
そういうと何を思ったのか僕の上に乗っかったままわき腹をくすぐりだしたじゃないか?
僕はあまりの可笑しさに笑いが堪えきれずに、手足をバタバタさせて暴れた。
「もっ、止めて、あはははくっ、苦しっ! わかった、わかったから止めてぇーー!」
はぁはぁはぁ……。
なんだかよくわからない汗をかいてしまった。
まだ開始まで30分ある……。
みんな各々休んでいる。
もう見られてる事がどうでもよくなってきた。
満腹と連日の疲れから不意に眠気がすると、急に僕は彼に引き寄せられ、もたれかかる様に寝てしまった。
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