第54話

「隆二、マッサージ師の資格とか取れるんじゃない?」


「うん? そうかな? 昔習った事はあるんだけどね。体のツボとかね。それは今も勉強中だけど」


「へぇ……本当? 体のツボねぇ」


「うん、時々教えてくれる先生がいてね、人体に関しては色々知りたいんだよね。ちょっと痛いけどツボ押させてくれない?」


「うん、はい、あっ、いたたたたた!!」


 隆二は足の裏をぐりっと押すと僕は思わずのけぞってしまった。


「うーん、胃腸の状態が今ひとつかな、ストレスかかってる?」


「いたたたたたた! 痛いっ、そこっ痛いーー!!」


 うっ、みんなが見てるっ。静かに静かに……。

 うおっ、痛いーーーーー!!


 両方の足のツボをあちこち押されて僕は悶えてしまった。

 体を仰向けに寝かされ、なんと隆二が乗っかってきた。


 ちょっとおおおお!!!!


「ここは?」


 そう言うと彼はおへその下や恥骨に近い部分をぎゅーっと指厚する。


「いっ! うっ、あっ!!」


 何ここ? ちょっと気持ちいいかな……。


「ここはなに?」


「ここは精力回復のツボ」


「やらなくていい、やらなくていい!!」


「なんだよーやって欲しいくせに、こら、こらっ」


 そういうと何を思ったのか僕の上に乗っかったままわき腹をくすぐりだしたじゃないか?!

 僕はあまりの可笑しさに笑いが堪えきれずに、手足をバタバタさせて暴れた。


「もっ、止めて、あはははくっ、苦しっ! わかった、わかったから止めてぇーー!!」


 はぁはぁはぁ……。


 なんだかよくわからない汗をかいてしまった。


 まだ開始まで30分ある……。

 

 みんな各々休んでいる。


 もう見られてる事がどうでもよくなってきた。


 満腹と連日の疲れから不意に眠気がすると、急に僕は彼に引き寄せられ、もたれかかる様に寝てしまった。

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