第7話
「滝川隆二さんのファンの人達、守くんの事も逐一チェックしてて、守くんのサイトも見てるのね。守くんの事務所が変わった時とか、隆二さんと行動が同じだとか、格好が変わったとか、何かある度にいちいち大騒ぎだよ。守くん本人から聞いていないかってしつこく聞かれても、僕らも今日初めて聞いたし、聞いたからってこれからも言う気もないし、この会にも参加させろって連日メールとかでうるさいしさ、どっから俺の電話番号知ったんだか、電話番号も変える羽目になったわけ。結局付き合ってるかもしれない守さんから滝川さんのプライベートが知りたいだけじゃんって」
「あたしたちは守くんのファンなんだし、今までと変わりなくのんびり行きたいし、守くんに迷惑かかるから駄目って言ったら凄い睨まれたー」
そうなんだ。
その時僕はなんとなーく嫌な予感がしていた。
僕はこの通り小劇団に所属している小さな役者だけど、隆二はテレビドラマや映画にも出ている。
彼は謙遜して僕はまだまだと言うけど、やっぱりある程度は知名度がある。けれど近くにいるとその現実を僕自身が時折忘れてしまう時があるのだ。
毎日一緒に暮らしているのか、隆二とは遊びに行ったり、一緒にゲームしたり。……したりと。本当に隆二のオフの時は普通の恋人のように遊んでいるので全くその事を気にもしていなかった。
たぶん、隆二が有名だとかそうじゃないとか、そんなことは僕にはどうでもよくて、彼が仮に俳優を廃業したとして、例えば、そうだなぁ。サラリーマンとか個人事業主でなにか商売を始めたとしても僕の気持ちは変わることはないと思う。
というか僕には彼は一人の大好きな大切な人で……。それ以上でもそれ以下でもない。
けれど、デートのエスコートは隆二が仕切る事が多くて、確かにどこかの個室を借りたり、飲みに行くにも遊びに行くにも予約が多くて、旅館にもお部屋にお風呂があるところとかそういう少し隠れた場所が多いということを改めて思い出した。
「守くんのファンクラブ今入会者増えてるの知ってる?」
不意に野嶋さんが僕の顔を覗き込んで言います。長い髪の毛をシュシュで結わいていて勝気な性格の中にちょっとした乙女さを感じる時があります。
「あ、う、うん。僕今まで通り劇団イルカ位しか活動してないし、時々彰人くん経由で縁が出来た、ライダーに脇役で出るくらいだからなんでかわからなかったんだよね」
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