第6話

「もうみんなにはなんとなく勘付かれてると思うけど、僕、滝川隆二さんと付き合ってて、実は先日役所で証明書をもらったんだ。その……同性婚した人がもらえる証明書なんだけどね。僕の親も隆二のお姉さんもそうしろって、話し合って決めたんだ」

 

 ファンクラブの人たちに面と向かって隆二の話をするのは初めてだった。

 いままで特に聞かれなかったし、照れくさかったけど、結婚となるとなんとなく話した方がいいかなと思った。


 僕の口から初めてプライベートの話を聞いたみんなはやっぱり凄く僕の話に集中してくれた。


「や、やっぱり。そうだったんですか。滝川隆二さんと付き合ってるってなんとなく聞いたことあったし。でもまさか結婚までしてたなんて。いや。うん。お、おめでとうございますっ」

 

 みんなから笑顔でおめでとうの言葉を聞いて、僕は少し照れくさいようなでも少しだけスッキリしたようなそんな気分で「ありがとうございます」と返した。


「滝川さんの本名って瀧河隆弐って言うんですね……。知らなかった。素敵な名前ね。彼も一年位前に事務所のホームページのプロフィール欄の本名変わったから、あっちのファンクラブの人も騒いでたなー」


 宮さんがそう呟きます。宮慶子(みや けいこ)さんは隆二のファンクラブにも入っているそうで、そっちも詳しいらしい。

 宮さんは僕のファンクラブ創設の頃からいる人なので、隆二のファンからもあれこれ言われてるみたいだけど、本人的には自分は隆二のファンでも一般の方だからなんて言い方をする。


 一般とかそうじゃないとかファンクラブの仕組みはよくわからない。あちらはあちらで色々あるんだろうなぁ。


「へぇ~本世屋くんたちって、隆二のファンクラブの人との交流もあるの?」


 僕は少しだけ興味が沸いてきた。


「もちろん、でも以前はいい感じにきてたんだけどね、ここ半年はもうなんかね」

「うん、ね」

 隆二のファンクラブの話になるとなんかみんな歯切れが悪そうだ。


「どうしたの?」

「うーん、守くんごめんね。私あの人達怖い……」

「うん、うん、怖い」


 みんな口々に頷く。少し何か思いを巡らせたのか疲れたような表情を見せた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る