第6話 7月・みとめること
「あ……、キミか。うん、ごめんね。まだ、受け止めきれなくてさ……。
ボクね、女の子になったって言ってたけど、心のどこかでまだ男だって思ってたんだ。だから、自分は変なんだって思えてた……。
でもね、お腹から血が出て、痛い、死んじゃうって蹲ったボクをキミが抱き抱えて、病院まで連れて行ってくれた時……男だったボクの心にね、ズレが起きたんだ。
それで……さっき、先生にボクの体は完全に女の子なんだから、思考も体に引っ張られて、女の子になっていくだろうって……説明されちゃった。
そう言われたら、ボクって男なのか、女なのか、わかんなくなっちゃった……。
……ねえ、ボクってさ、なんだろうね? こんなことを思うくらいなら、病気で死んでたら良かっ――っ!?」
(死んでたら良かった。そう言い終わる前に『ふざけるな!』って彼は怒鳴った。
本気で、ボクがいま言おうとしたことを……彼は怒ってる。
ボクの肩を掴んで、ボクをジッと見て、こんな風に落ちこむなんて、らしくないって言ってくれてる。
その顔を見ていると、ボクの心は彼に……キミに惹かれているんだって、理解してしまう。
でも、でも、それよりも……)
「あ、あは、はは……。らしくないって、なんだよ?
そんな風にボクのことを知ってるぐらい、キミはボクのことを理解してる?
……まあ、幼馴染なんだから知ってるだろうけど……。でもさ、この姿になってからのボクのことなんてちゃんと知らな――うぇぇっ!?」
(言い終わるよりも前に、彼はボクの女の子としての魅力を語ってきた。
……って、そんなの良いから! パ、パンツとかも見せてるつもりなんて……か、考えてみると、彼の前でボクってかなり無防備じゃなかった?
はだか見られてドギマギしちゃってたけど、ふっつーにパンツ見せてたし……服も脱いでた。
や、やばい……考えれば考えるほど、恥ずかしくって顔が熱くなってくる)
「って、そ、それ以上は良いから! というか、これ以上はダメーーっ!!」
「はあ、はあ……え? ようやく悲しそうな顔をしなくなった?
あ、当たり前だよ。あ、あんなこと言われたら……うぅ、思い返すと恥ずかしい……。
け、けど……そんな風に思ってるなら、ちゃんと責任取ってよ!
……え? そ、そう言えば、キミってば面と向かってボクに好きだって言ってたんだった……。
そ、相思相愛?! 何でそうなるんだよ!? バ、バカっ!! ――い、いたた……」
(怒った瞬間、お腹の痛みがぶり返してきて、しゃがみこむ。すると彼は心配した声をかけてくる。それに対して、ボクは平気というけど……初めての指すような痛みは慣れないから立ちあがれない。
そんなボクを抱えて、彼はイスに座らせて……家に帰るためにタクシーを呼びに行ってくれた。
……正直、ボクは男なのか、女なのか、わかんない。
でも、キミの前だとこれまで通りでいたい。
だけど……同じくらい、女の子として……わたしはキミと接したいって、思ってしまった。
きっと、これがわたしのなかで芽生えた……恋心)
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