第5話 7月・ターニングポイント

(あいつと会うと、ちょっと……ううん、かなりドキドキする。何で?

 だから朝の通学でも避けちゃうし、帰りだって用事をつけていっしょに帰らないようにしちゃってる……。どうしてだろう……)

「え、あ、なんで? 『なんか会わないようにしてるから理由が知りたい?』……な、何でもないよ? ただちょっと用事があるだけで――ち、違うよ! キミに興味なくしたなんて思ってない! 自分でもちょっと分からなくて……」


「え――な、なんでキミが謝るんだよ?! は、はだかを見たことを気にしてるみたいだからだって……? それは、その……」

(うぅ、はだか見られて恥ずかしかったけど、そう言うわけじゃなくて……でも、こんなことこいつに言ったら、変だって思われたりしないかな? でも……)

「あの、さ……ボク、なんだか変なんだ……。キミと会うと……なんだかドキドキして、顔も見れないんだ……。

 へ、変だよね? ボクって男のはずなのに、男にドキドキするなんて……。

 なんだか変になってるみたいだからさ、ボクと一緒に居ないほうがい――え? 『俺にとってはお前はお前だから、気にしなくてもいい?』……う、うん。でも、やっぱり変だよn――っ!?」


 ――何があっても、俺はお前のそばに居るから。


(っ!? 胸、ドキドキする……。それに、お腹の奥が……きゅん、ってする。

 でも、イヤじゃ……ない。それに、キミのにおい……ボクは好き)

「あ…………。え、あ、い、いやその、離れたくなかった……とかじゃなくて、その、えっと……。ああもう、なんだかやっぱりボク、変だよぉ!」

(抱きしめられてボーっとしちゃったし、キミの顔、うまく見れないし、頭グルグルしてるし、お腹が痛くなってるし……う、うぅぅ~~……)

「――ぇ、あ? な、なに? え……? 血……? …………え、え?

 血が、垂れてる? え、なに、どういうこと?! 痛っ、いた……! いたたたた…………っ!」


「……え? せ、せいり?

 な、なんで? ボクは男で……え、『前にも言ったように別の世界の君をコピーして、こちらの世界の君にペーストするから間違いはない』って……?

 じゃ、じゃあ……ボクって、男じゃ……なくなってるんですね。はい……」

(知っているものと思ってたなんて……、ボクがボクじゃなくなってるのなんて、わかるわけないよ……。

 こわい、こわいよ……)

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