第17話
(・・ああ、邪神像・・確かコイツ・・)服の中にしまってたような・・
横たわる悪魔神官のまだ熱い身体をさぐる。
指先が堅い石に触れ、鳥肌の立つような嫌な感覚が全身に走る。
それをゆっくりと取り出すと、、予想通り邪神像だった。
(これで・・依頼完了・・か、疲れた・・)?
一瞬コイツ、動かなかったか?
・・指で肉を押さえた反応か?
それとも体内の神経が電撃の名残に反応しただけ・・だよな?
首を掻き切ったんだぞ。
「!!ぎ・げ・が・・・ギグ・・
人間・・め!・・コレで・・が・っだと・・思う・・な!
邪ジン・・サマ・・像は・・世界中・・に・・
呪わ・・れろ・人間!・・苦しみの生を・・精々・・生きていろ!
地獄・・は・・ぞご・に・・
魔界の・・炎の・・中で・・待っているから・・な!」
悪魔神官は不意に立上がり、手を伸ばしてきた。
オレの体はへたり込み、脱力して足が立とうとしない。
そんな状態でもう一戦なんて逃げるのも無理だ、魔法一つでもこの距離で放たれたら避ける事も無理だ!
(・・マジかよ、やべえな・・)
悪魔神官の気迫に押され、身体が動かなかった。
「勇さん!」
動け無いオレを庇い、ピョートルが体当たりして悪魔神官を階下に突き落とす!!
悪魔神官は無防備な横っ腹を打たれ、階段を血で染めながら転がり落ち、そして完全に動きを止めた。
「すまん、助かった・・もう大丈夫だよな?」
ようやく銅の剣を掴み、階段下を見下ろすオレに
・・『勇者はレベルが上がった・・・体力が・・』頭に声が響く。
チッ・・今更かよ・・
階段の下で手足をひんまげ、割れた仮面の内から悪魔の素顔が覗く。
剥き出した目玉と歪んだ口・・青黒い肌、醜いがそれでも命を賭けて戦い合ったヤツだ。
「仮面くらい・・直してやるか・・」
レベルが上がったせいで、体が少しだけ動くようになっているからな。
「ピョートル、肩を貸してくれ」
オレ達はフラフラになりながら階段を下り、悪魔神官の傍に立つ。
「そっちを頼む」
仮面の位置を直し、死体を祭壇の脇に寝かせた。
いずれは遺跡の魔物の糧になるか骨になり土に還るか・・少なくとも敵である人間に荒らされる事は少ないだろう。
(こいつも、死んでからも敵である人間に足蹴にされるほど不快な事は無いだろうし、そんな人間の姿をオレは見たくなからな)
神の敵・魔物・悪魔神官、やつの死体を教会に持って行けば報奨金くらいは出るかも知れない。
そうして手に入れた死体を張り付け・吊るし、聴衆の前で燃やす。
教会のヤツらは、信者を前にそんなパフォーマンスをするのが得意だからな。
さて・・戻るか・・(大丈夫だろな、ホントに・・生き返らないよな?)
探索は帰るまでが探索・・だったか?
「帰る途中で、魔物に襲われて倒れるなんて不幸過ぎるから慎重に帰るぞ。
怪我とか体力は大丈夫か?」
「ええ、大丈夫です。。」悪魔神官の死体を見つめるピョートル、なにかやっぱり思う所があるのだろうか。
「行くぞ!」「はい!」スラヲがぴょんと跳ねる。
切り替えて行かないとな。
よいしょ!っと、やたら不快で重い像を袋に入れ、槍を杖に・・悪魔神官、鉄の杖を貰うからな。
([棍棒]と[ヒノキの棒]の代わりだからな、泥棒じゃないぞ?)
「よし、オレは鉄の杖を持つからピョートルは鉄の槍を」
ピョートルは剣を使いたそうだが、今は槍を使ってくれ。
(持ちにくい・・なんだよ、この棘・・邪魔)
重いわ持ちにくいわで、鉄の杖は予想以上に鈍器に特化していた。
クソッ失敗した、これなら鉄の槍の方がましジャンか!
・・・・
「よう、そっちが先だったんだな」
「・・・まあ・・そうだな」
遺跡の魔物と罠を避けながら戻って来たのに、最後の最後で面倒な事になった。
(たしか・・ウェン?)
狩人の男が待ち構えていたように通路に立ち、その後を続くように戦士と・・僧侶か。
(契約では一応[先に手に入れた方に報酬を渡す]って事になってるが・・)
「そんな顔すんなよ、オレが斥候だから先にいるだけで敵じゃないんだぜ?」
狩人は片手のナイフをしまい、手の平を見せるように肩を上げた。
敵意は無いって感じを見せるが・・カネが絡めば人は変る、平気で人を裏切り、欺すもんだ。
「・・おい、お前。像を持っているのか?」
リーダーの男の目がオレの持つ袋に向き、明らかに敵意のある声を出す。
「持っている」
抵抗するなら一人は道連れに出来るが・・こっちは全滅する、、、だろうな。
オレ達は体力の限界を超えた戦いで、魔力も気力も空っ穴なんですよ。
(確実に殺して、オレたちの口を塞いでくるな。
魔物でも・・魔物なら遠慮無く殺しに来るか)
「・・そうか、それで・・どうする?こっちは一戦交えてやってもいいんだぞ?」
「リーダー!、そりゃぁ駄目だ!
しっかり契約までしておいて後で奪い取るなんてのは、そりゃ冒険者じゃねぇよ。野盗のする事だ!」
「・・そうですね。
契約を交す前なら乱暴な手段ではありますが、冒険者の間でも稀にある事です。。 ですが・・・自分達が先を越されたからと言って・・契約破りは信頼を損ないます。
それに自ら契約を軽視する人間は、自分の時に契約を反故にされても神は味方してくれません」
正義を失う、多分そんな事を僧侶の男が言った。
(世の中には元々正義なんて無いんだ。
正しい・正しく無いでは無く、[正当性]を主張できるかどうかだろ?)
とか、オレは思うんだけれど。
「そんなもん、お前らが黙っていれば解りっこないだろ!
お前らはどっちの味方だ!」
「絶対バレるってリーダー、あのお嬢様の目を見ただろ?
ありゃぁただもんじゃ無いって!」
「お前らアレか?薬草を恵んで貰った程度でコイツの味方する気か?
この仕事がどれだけオレ達にとって重要か、お前らは解らないのかよ?」
冒険者達がもめている間にオレは呼吸を整えて置く、こいつらの倫理がカネの誘惑に負けた時、全力で逃げ出せるように準備だけはしておかないと。
「おい、よかったなお前の味方ばっかりだ。
お前の蒔いた薬草がこんなに役にたって。
お陰でこっちはパーティー崩壊の危機だぜ!」
リーダーの男が声を荒げ、柄に手を置くと空気がひりつく。
剣が鞘から抜けた瞬間から戦闘が始まってしまうだろう。
「だから落ち着けって!
契約破りがバレたら、今後は、もうまともな依頼は受けられねぇんだぞ!
それじゃあ、有名になるとか金持ちになるとかのリーダーの夢も叶わなくなるんだ!」
「そうですよ!
例えここで秘物を奪ったとしても、あの女性はそれに気が付くでしょう。
今は笑顔で秘物を受け取ったとしても、貴族同士のたわいない雑談に私達の契約違反が出た瞬間、冒険者組合は私達に重要な依頼は与えなくなるでしょう。
そして貴族達からもです。
私は彼の味方ではありませんが、それでも双方で交わした約束の反故で多くの人達から信用を無くすより、今は耐えるべきだと。それくらいは解りませんか?」
「ゆ・・ジョンさん、逃げる時は合図をして下さい、私が盾になります」
ピョートルは覚悟を決めたように盾を構え始めていた。
「いいよ、こんな所で覚悟なんか決めるな。」相手は多分話せばわかる・・と思う。
後は彼らと、俺たちの損得の問題だろ、それに。
(・・・なんか・・本気で面倒になって来た・・)
「なあ!そっち!」
「ちょっと待ってろ!もめてるのが解んないのか!」
オレが声をかけたら怒られた、少し冷静になってると思ったのに・・
「いいから聞け!そっちにも得になる提案だ!
殺し合うより建設的な話だ。
そっちに殺し合いか・何もしないで報酬をあきらめるか、それ以外に選択指が無いなら話を聞いてくれ!」
「ウルセェ!お前が決めるなと言っただろ!どのみち最初にころ***」
僧侶に口を塞がれたリーダーの男が、僧侶をにらむ。
「ムノフ、少し冷静になりなさい。
敵と味方、損と得、そこを見分ける為には常に冷静に。
でないといつか全てを失いますよ」
僧侶がリーダの男をさとすように、静かに口にした。
・・チッ「解った・わーたよ、話を聞けばいいんだな?
その後でオレが判断する。それな、らお前らも納得すんだよな?」
「・・それで・・聞かせて下さい。建設的とは?
・・もし双方・・いえ正直に言いましょう。
私達に利益がある話なら聞かせていただきますよ」
「そうだな、ジョン、お前の話しだいでオレはお前の味方になってやる。
当然、今のパーティーを裏切れって話ならお断りだけどな」
狩人はおどけているが、目はオレを値踏みするように細めて光らせた。
僧侶と狩人には話が出来そうな空気が出来た。
(よし・・二人が交渉のテーブルに着いて、一人は様子見って所か。
これなら・・話は、進められる)
「・・そっちは秘物が欲しいのか、カネが欲しいのかは知らない。
が、こっちもカネは欲しいし、あのお嬢様にも用がある。そこで提案だ・・・」
「こっちは見ての通り、体力も魔法力も限界が近い。
そしてこの遺跡の出口はまだ先だ・・」
「つまり、オレ達に護衛をしろってことか?
う~~ん、今ジョンに雇われるのは・・リーダーが・・」
「そうじゃない、今からお嬢様に秘物を渡すまでの間、そっちのパーティーに入れてくれって提案だ。
そうしたら秘物はここにいる全員で持ち帰った事になるだろ?」
「!?・・そいつは・・!どうなんだ?」
狩人の男が驚き、確認するように仲間の方に振り向いて二人の顔を見た。
「確かに・・私達、イエ・・・リーダーは貴方には決して雇われる事は無いでしょうが・・貴方からの提案で一時的にパーティーに加入するのであれば・・」
「でもいいのか?取り分は・・かなり減るぜ?」
今度はオレの方に向いて聞いてくる、忙しいそうだな。
「こっちは・・顔を知られると困る、そっちは利益とパイプが手に入る。
・・あとオレ達は、体力が限界だ。出来れば外まで連れて行って欲しい」
「知られたくない事情と体力、でこっちカネと依頼成功の結果と名声が手にはいる。
二の二だな・・リーダー、どうする?おれは乗るべきだと思う」
(て言うか、これ以上の話は無いと思う・・・ジョンか・・コイツ、体力無いって言ってっけど・・)
「私も乗る方に賛成します。
メリット・デメリットを考えても、これ以上お互いにとって有益な形は私には思い付きません」
(・・それに、私は彼とは戦うべきでは無いと・・)
「・・リーダーはオレだ、オレはお前が嫌い・・か好きじゃ無い。
気に食わない。
それでもお前は・・[オレのパーティー]に入るって言っているんだよな?」
「ああ、こっちは、面倒事は困る。穏便に済むなら従う」
「報酬も6等分・・7等分か・・フゥ・・解った。
だが先に秘物っての渡して貰おうか・・それが条件だ。
オレ達の手で[秘物]を渡す、当然オレが報酬を受け取り分配する。
それでいいなら」
リーダーの男は手を伸ばし、『よこせ』というように、手の平を開いたり閉じたりしてきた。
・・・(不味いな・・アレ・・多分、精神汚染する類いの物だ・・う~~ん)
「いい、正し[ただし]・・そっちの僧侶が持ってくれ、かなりヤバイ物なんだ」
オレは袋から邪神像を取り出し、僧侶のバックパックに入れる。
布に包んだままだから姿は見えないはずなんだが・・
「・・これは・・よくこんな物を持っていられましたね・・」
邪悪な波動を感じたように男が顔を顰め[しかめ]、明らかに嫌そうな・・苦痛でも感じるように眉間を押さえ、十字を切る。
「オレは魔物の使う力に・・・耐性があるんだよ」適当に答えて置く事にした。
(多分、勇者の力だろうな。[邪悪な波動]耐性とか?・・ハハ、どっちかと言うと魔物側の存在だったりしてな、勇者ってのは)
「オレには渡せないっていうのか」
薄く怒気をはらませたリーダーが僧侶とオレを睨む。
「・・この邪悪な像は、見た者・触れた者の精神を汚染する可能生が有ります。
余程強く、正しき神を信仰している者でないと凶気に飲まれるでしょう」
(後は多分、神ってヤツに呪われてるヤツだろうな。オレみたいに)少し笑える。
仲間の僧侶が説明しても、リーダーの不機嫌なオーラが消える気配は無い。
多分オレが説明しても絶対に信じないだろうな。
「コイツが神を信じているのか?クエルより。こんな顔を隠すようなヤツが?」
「神を信じる形は人それぞれです。
[回復]を使えると言う事は、その資質が有ると言うことです」
僧侶のバックパックに秘物が入れられ、リーダーは納得いかないような顔をしているが足をガンッ!と石畳を踏みつけて怒り抑え背中を向ける。
(ぎりぎり我慢した・・ってとこか、どうでもいいけど)
「物は手に入ったんだ!こんな所にもう用は無い!
さっさと脱出するぞウェン、帰り道の罠を見逃すなよ!」
「おうさ!」
狩人の男が飛び跳ねるように先頭に立ち、手を壁や床に当てながら進む。
「では・・私達も行きましょう」
僧侶が立ち上がり、その後をオレとピョートルが続く。
(・・リーダーがオレに対する敵意の理由はなんだ?
オレがなにかしたか、わからないが。
こっちに理由がなくても気に喰わないって事もあるんだろうが・・わからん)
───────
「では、こちらの方が秘物をお持ちなんですね?」
「おう!お嬢様のご希望通りの物かどうかは、どうか解りませんがね」
ようやく遺跡を出たオレたちを待ち構えていたようにお嬢様が出迎え、それぞれの道具袋を見比べ。
お嬢様は勇者の方をじ~~と見たあと、僧侶の持つ袋に目線を移す。
「お嬢さん、この秘物は持つだけで精神を削ります。
今この場で像を見る事は、教会の法師としては身と精神の保証する事が出来ません。
・・それと、どうかこの地像を置き、再度封印しておく事を願います」
僧侶の男は袋の口を堅く縛ったまま地面に立たせ、膝を着くように頭を下げて願い出た。
ウフフッ「ですが、中身も見ずに『コレは秘物だ』と言われ、その上『この場に置き去りにせよ』では依頼も報酬もありませんわ。
・・それに私にはコレがありますので」
お嬢様は胸元から、細い鎖で繋いだ[金に光る何か]を取り出して見せた。
(鳥?それとも人?なんだ?何かの形を単純化した象形のような・・)
「古い精霊の印[エルダーサイン]と呼ばれるお守りです。
この守りがあれば精神を乱すような呪いも、毒蛇毒蟲の災いも避けると言われています」
オレの視線・・この場にいる者の視線に説明するように[守り]を手の平に置いて見せ、お嬢様は自らの首に架け戻した。
(確かに、なにか力を感じるお守りっぽいけど・・なんだろう、どこかで・・)
見た事のあるような、懐かしい何か・・
「よろしいでしょうか?では、見せて頂きますね
・・それと、身の守りが確かで無い方は背中を向いて頂けますか
・・その方がどうかなされても、私は責任は負いかねますので」
リーダーは興味ありそうな顔を見せたが、僧侶の男が首を振って見ないように促す。
「大丈夫です、持って逃げたりはしませんから」
「ああ、こっちでも見てるから大丈夫だリーダー。
しっかり休ませて貰ったんだ、これくらいはする」
待機していた戦士の男が、少し離れた場所でお嬢様の背中を盾に像を直接見ないようしてに挙動を見張り立っている。
(・・それでも、その気になればふところに隠した[旅人の翼]とか使って逃げられると思うんだが・・一応の牽制ってやつか?)
「フフ、それでは」
袋を縛るロープを解く音がシュルシュルと鳴る。
蛇が這うような虫唾[むしず]が走る不快な音が、ボトッと地面を叩くまで続きガサガサと袋の口が開き中の布が解かれる音が続く。
(オレは見ても問題ないんだが・・アレを前に[大丈夫だ]と思わせたくない。
それに自分の弱点を教えるヤツは馬鹿だが、怪しい人間に[自分の出来る事]も教えるのも危険だから・・)
勇者の警戒を見透かされたように、背中にチラチラと視線を感じる。
色々あって視線に敏感なオレは、逃げるように1歩遠退いた。
背後から、ふふっと笑い声がした。
空気にも汚染するような邪悪な波動。
禍々しくおぞましい姿が、久しく触れていなかった太陽の光を憎悪で包むように深い息を吐いているようだった。
キィィィィィンンン・・
堅い金属が振るえるような高音、耳の奥・下顎の奥歯を押さえ付け刺すような金斬り音と痛み。
存在するだけで世界を冒涜するような、形容しがたい狂った邪気。
邪神を象った[かたどった]だけの金属の像が、邪神の分身のように世界を毒して行く感覚。
(やっぱり壊すか、)
勇者が振り向くと、女は笑顔を作り像を袋に入れている最中だった。
「確認出来ました、お疲れ様ですジョン?様」
・・・「オレだけの力で手に入れた物じゃない、・・が納品が確認出来たなら、それでいい」
(一瞬だが、この女・・)多分ヤバイ、本当に人間じゃないかも知れない。
そう思った。
落雷より早く、瞬きよりも刹那の時間。
神経が反応するより早く感じたナニカ、一瞬世界の一コマに白黒の世界を差し込まれたような錯覚。
(無理、絶対無理だ)
毒蛇の類いならまだ何とか出来たと思う。
だが、アレは別の・・違う世界の法則にいるバケモノだ。
ウフフ・・「どうか・いたし・・ましたか?」
整い過ぎた顔は美しい笑顔の下のある無貌を覆い隠し、華のように色付く頬や唇が、童女のように笑う目が・完全・完璧に作られ過ぎた肉仮面のようで怪しくて恐い。
「・・どうも・・しない・・」オレはその言葉を絞り出すだけで精一杯だった。
「少し、失敗してしまいましたか?
ウフフ、でも男性は美しい女性が好きだと聞きますわ。
それとも・・み・に・く・い・方がお好みですか?」
その醜いという姿は、女の目に光る邪悪を体現した物ならば。
彼女を見た者は、狂い壊れた方がマシと思うような物を見る事になるのだろうか。
「・・ふぅ・・そうだな、美人の方がマシだ」[がわ]だけでも美しいなら、
狂う人間が少なくて済む。
どうせ心なんか見えないんだ、中身がどんな化物でも見なければ表に出さなければ、オレに関係無ければそれでいい。
「お褒め戴いたと思ってよろしいので?嬉しいですわ」
その笑顔は作り物では無く、本物の宝石を磨いたような笑顔だった。
「それで!オレ達の方は仕事が終わった・・でいいんだよな?
これで後は[旅人の翼]で館に帰ればいいんだからな、そっちは」
イラついたようにリーダーが言うと、お嬢様の笑顔がリーダーに向く。
「ハイ、これで依頼は完了です。
では皆様馬車の方へ、全員を館までご招待します」
その方がよろしいのでは?
小さくリーダーとオレ、両方に聞こえるように口にしてリーダーの男が嬉しそうに「おう!」と。
(多分その先は地獄だろうが・・)
オレは嫌だったが、無言でうなずき答えるしか無かったのである。
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