第13話
「魔物使いという職業もそうですがその変った武器、そして今もお顔を隠しお名前もお隠しになる所も・・ひょっとして、どこかで諜報のお仕事をしていらっしゃったのでは?」
馬車の中で彼女は何が楽しいのか、じろじろと観察してしては推理した事を口にしてオレの様子を見るルべリアのお嬢様。
「黙秘する、次いでに言えばこの武器も成り行きで使っているだけだ」
(オレはジョンだと名乗っているだろ、、この女、ひょっとしてオレの反応を見て情報を引き出そうとしているのか・・
なら全ての質問は黙秘すべきだな、頭からしっぽまで全部黙秘してやれば推理のし様もないだろ)
・・・・・
「うふふふっ、私が先程の貴方の戦い方を彼等に言わなかった事、不審に思いますか?」
(しつこい、こっちがいやがっているのにこの女、、それに隣に座ってる護衛もオレが無視し続けているからイライラしてるし!)
グイグイくるルべリアを無視してる彼女の隣で睨んでくる護衛の女、オレの態度が気に食わないのは解るがあんまり見て来るなよ。お尋ね者なんだよおれは。
仕方ない、くそっ。
「べつに・・あんなのは誉められるような戦いじゃないからな、どう言われようと気にしない」
できるだけ話たくないが完全黙秘は無理そうなので、返事を選んで答えるしかなかった。
閉じられた空間で女2人に男一人、せめて窓があればと思う。
だが風景を覗ける馬車の窓は『弓で狙われては困りますので』と閉められている。
「私ばかり質問していますよね、ご質問があれば言っていただけませんが?」
かと言って彼女の答えが正しいとも、誠実に答えるとも言っていないのだろう?
(それに下手な質問は・・泥沼に足を突っ込むような気がするんだよ)
なので「特にない」が正解だろう。
「フフフッ、慎重なんですね。それに口も堅い、寡黙は美徳ですわよ?」
そうなんですかね?
じゃあ[お嬢様]の質問は美徳を失ってもすべき・・情報収集で間違いないんだなよな。
『雄弁は銀となり・沈黙は金の価値がある』だっけか?
だがそれ以上に『正しく正確な情報は金より価値がある』って聞いた事がある。
誰から聞いたのかは忘れた。
カネを使ってでも正し情報を、より早く・誰より早く手に入れた者が商売を成功させるって話だ。
(ああそうか、道具屋のオヤジの言葉だったか・・
気が付かない内に色々教えてくれていたのか。
見かけは恐いジジイだったけど良い人だったんだな・・
ああすれば・・こうしていれば・・か)
過去は取り戻せない。
だからこそ、次ぎは間違えないようにしないと。
(・・・でもこの女からは・・善人の気配はしないんだよな)
見かけだけで判断するのは良くない、そう考え直したばっかりだが。。。
怪しいんだよな、この子爵のお嬢さまは。
「それで、今はどこに向かっているんだ、オレの仕事は護衛でいいんだよな?」
んぇ?「ええ、そうですね。
本来は魔物が作ったと噂される遺跡に用が・・本当はその中に隠された秘物の探索と入手が目的でしたが・・」
馬車に乗る事でようやく戦いの空気が薄れて緊張が溶けたのか、目を瞑り護衛の女に肩に体を預けていたお嬢様が眠そうな目を薄く開き考えるように言葉を選ぶ。
「強行して得られるか・・と考えますと・・可能生は・・難しいでしょう。
そもそも目的の物があるかどうかも難しい所ですね・・先ずは遺跡の場所を確認し・・現地の状態を見てから・・と言う事で・・」
その先は仕事の結果次第で、と。今度こそ彼女は本当に船を漕ぎ始めた。
頭を使いすぎると頭が熱を持ち眠くなる、このお嬢様は頭を使って情報を引き出し利用するタイプの人間か、緊張が融けると同時に眠気に襲われたのだろうか。
(って事は、今までの質問攻めは興奮状態だったからか?なら悪い事をしたんだろうけど)こっちにも事情があるだよ。
(他人を信用しない奴は、人を裏切る事も当たり前と思う。
その逆に、他人を信用する人間はそう簡単に人を裏切らない・・か。
少なくとも彼女達は、契約の範囲内ではお互い裏切らない・・程度の信用はしていいのか?)解らないな。
その無防備な寝顔に今は問う事は出来ないが、出来れば彼女の言う『民の為・国の為』ってのが誠である事を信じるしかないのだろう。
(それにしても、一度探索した遺跡に戻る事になろうとはな。
ああ多分アレだな、邪神像の呪いってヤツか?
捨てても捨てても戻って来る呪いの人形かよ)
「オレ達が先に行く」
遺跡に戻ったおれ達は馬車を止め、冒険者達はお嬢様の護衛を一人残し、魔物の遺跡に入って行くのが見えた。
「彼等は何が目的なんだ?」多分アレだろうが一応聞いてみることにする。
「魔物達が遺跡深くに隠し守る[秘物]邪神像です。
その形・大きさは知られてませんが、人が見れば直ぐに解るそうです」
そんな物何に使うんだ?とは聞ける感じはしない。
金持ち・権力者の考える事は詮索しないほうが長生きできる、さらに言えば関わらないのが一番いいんだ。
で「・・なぁ、オレ達も行かなきゃいけませんかね」関わりたくありませんが。
ニッコリ、オレの言葉に笑顔だけで答えてきた。
それは『期待しています』か『早く行け』のどちらかだろう、と受け取れる。
(はぁ・・「詮索するな、行け」か。
危険を冒してまでアレを手に入れて、あんな物を何に使うんだよ、全く・・・)
『ウワァァァァァ!!!!』男の声だ。
オレが馬車を降り、潜入の用意をしていると遺跡の入り口から悲鳴が聞こた。
遺跡の罠に誰かが嵌まったのか・・ばかだなぁ。
(あいつら・・罠に関してなにも対策無しで突っ込んだのかよ、馬鹿なのか?)
「p、罠を外す必要は無い。オレたちは、ゆっくりと慎重に行くぞ」
一度攻略した事がバレると厄介だ、(深読みすれば、あの女・・オレ達が遺跡を知っている・侵入した事も計算の内だったりしないだろうな?)
だとすればバケモノだ。
あの戦いの中、オレ達の姿を見た瞬間にそこまで読み取れるとしたら本物の化け物。そこまで計算してオレを『魔物使い』と言ったのだったらな。
(オレ達がこの遺跡の辺りをうろうろしていたから?・・・)
怪しむほどに思考の深みにはまる、そんな感覚。
(そんな数%の可能生すら計算に入れて、オレ達を雇ったのか?)
・・背筋に寒気が走る、そんな・・馬鹿な事は・・無いよな・・
チラッ、背後を見れば笑顔を作り、お嬢様は手を振っている。
(笑顔は武器であり・防具である・・か)怖いねぇ。
表情を読ませない為の笑顔、貴族や社交界ではソレを武器にして偉いヤツらは戦っているらしいが・・(だとすると、あのお嬢様のアレは、正しく妖刀だな)
[女の笑顔は恐い]勇者は新たな知識を憶えた。
俺は人間不信のレベルが上がったような気がする。
背中に妖刀の気配を感じつつ遺跡の中に踏み入れ、その影に入ってようやく一息が付けた。
は~~~「なんで魔物のいる遺跡の方が安心するんだよ、おかしいだろ?」
「・・ジョンさん。オレにはジョンさんが、なんでそんなに怖がっているのか理解できませんが・・あの人間はそんなに強いんですか?」
ああ良いよな魔物は、強さだけが基準で。
じゃ
「人間はな、殺す殺される以外にも色々あるんだよ。
腕力で殺せるからと言って、オレより下とはならないんだ」
「そんなもんですかね」首を傾げるpを先頭に遺跡を進む。
ああ向こうで馬鹿が槍に引っかかっています、鎧と体勢で即死はまのがれていますが・・・助けてあげますか。
「そっちの足を上げろ、そんで手は壁から放せ、体はこっちで支えてやる」
罠に引っかかった男の肩を掴み、腰の所はpが持ち上げた。
っ・「痛てててて・・すまねぇ・・あんた[回復]は使えるか・・無理なら、仲間を呼んでくれ・」引っかかった男は痛そうに顔を歪めながらも、助けが来たからか顔は明るい。
「罠を外してからだ、[回復]の魔法は
一時的には出血を止められるが、罠の解除は出来ないんだからな」
しゃべれるくらいなら槍を抜いても即死はしない・よな?。
男の体を持ち上げ、足を床から放すと壁から飛び出した槍が引いた。
[回復]勇者の回復が男の傷を癒し、その上からpが布を巻いていく。
「[回復]は自分の体力しだいだからな、一度遺跡から出すぞ」
「勝手に決めるな!」
勇者に抱えられているグッタリとした男の代わりにリーダーっぽい男が答えた。
(じゃあどうしろと言うんだよ?アホなのか)
「[回復]はこっちでも使えるヤツがいるんだ。
コイツがどじっただけでお前が仕切るなよ!」
・・・・・
「・・でもさリーダー、この状態のフライを背負っていくのか?
オレ達だけで3人で進んだ方がまだ安全じゃねぇの?」
軽装の男がヤレヤレ顔でリーダーを止め、オレにウインクした。
「なぁリーダー、アンタはこの隊の隊長だ。
そしてオレらパーティーのリーダーだ、新入りが勝手に動くのは気に食わないのは解るけどよ、あっちは別口のヤツなんだよ。」
あの女は複数のチームを雇い、部隊を作る上でこの男を隊長にしたのだろう。
だとすると他のチームは何をしているのか、それとももう・・・
「そっちもすまねぇな、探索チームは護衛以外に別口報酬が付くんだよ。
・・分け前でもめるってのはチームが分裂する原因にもなるからな、リーダーは神経質になっているんだ」
その情報は他のチームには知られて無いのか、リーダーの男はあからさまに渋い顔を作り、向こうを向いてしまった。
(・・たしかにな、探索で報酬が上がるなら護衛は適当にして、探索に殺到するだろな・・
て事は、ここまでの護衛で生き残った理由もそれか)
「で・・結局どうすればいいんだ?
オレ的にはさっきの報酬の話も聞く必要があるから戻るが、[ついでに]この男を運んでやってもいいぞ」
笑顔で話しを逸らされたけれど、確定で報酬が増えるなら契約内容が変って来る。
今は冒険者っぽく動いた方がいいだろう。
チッ「今回の依頼は問題だらけだ、チッ!オレらも戻る。
コイツはオレが運ぶから貸せ。
クソッ、未開遺跡の探索依頼だって聞いたのに、兵士も出てくるわ・こんなヤツを雇うわ・・どうなってるんだよ」
機嫌の悪いリーダーはオレから男を奪い、運んでいく。
その後の軽装の男と無言で頭をさげる男、こっちは良い人っぽい。
(最後のヤツは・・僧侶か?)
戦士・狩人・僧侶・そして戦士か、二枚の盾で守りつつ探索するには丁度いいのかもしれない。
「すまねぇなコイツがドジった、傷は塞いだから死にはしないが、そのまま行くのも放置はできねぇし、帰って来た」
全員が戻ってのリーダーが言った言葉はそれだった。
リーダーの男がお嬢様を警護していた女に手を振り、フライだったか?その男を横に寝かせる。
「そっちもすまねぇ」お嬢様にも頭を下げて笑う。
・・なんだこの男は?女目当てか?
「謝罪など・・・私としては秘物を手に入れる事が出来るのであれば、どなたに報酬をお支払いしても構いませんので。
不可能とおっしゃるなら謝罪など必要はりません、代わりの方を用意しますので・・無論ここまで護衛していただいた分の報酬はお支払いいたしますよ」
戻って来たオレ達を一瞥したお嬢様は男のくさい笑顔を受け流し、全てを察したように微笑んで、予想通りの答えが返ってきた。
「じゃあ、オレが今からその秘物を持って来た場合、支払いはどうなる?
そっちの4人組と同じ報酬を払うのか、単純計算で4倍になるのかよ?」
・・・「そうですね、[秘物を買い取る]形の契約になりますので、そう考えていただいて結構です」
「そんな馬鹿な!」リーダーが声を上げ、その反応を聞き流すようにお嬢様は勇者の方に目を向けていた。
「ジョンさん?は解っていたようですね」
なんで疑問符なんだよ、まあそれは置いておくとして。
「・・それは、貴族の考え方じゃないけどな、商人の考え方だ。
商人は商品の質が良ければ買う相手の仕入れ先は二の次だ。
ヤツらは第1に儲かること・第2に自分の身の安全、その次ぎぐらいが違法性だ。
それも商人自身の心情とか許容範囲の問題で、特に気にしないヤツなら盗品だろうと商品棚に並べるだろ?」
だからこそ、商人は悪に傾き易いと言われている。
本質は人と物を繋ぐ重要な橋渡しなんだけれど。
「オレ達が盗賊だとでも言うのか!」
「まぁ、ジョンさんは商人の経験もおありで?」
「恩人が商人なんだよ」それだけだ。
女はリーダーの激昂[げっこう]を無視してオレをさぐってくる、嫌な感じだ。
「・・ムノフさん?そのように声を荒げられても、契約は変りませんよ?
正しく必要な物を用意していただく事で、こちらも報酬を正しくお支払いします。違いますか?」
「なあリーダー、コイツ・・ジョンを今だけチーム入れたらどうだ?
フライが倒れた穴埋めにもなるし、多分コイツ、レベル以上に役立つ気がするんだ」軽装の男がオレを見て軽く会釈する。
オレに関係ない所で話を進めないで下さい。
「ふざけるな、こんな怪しいヤツを入れて報酬も山分けするのか?
これ以上人数増やして取り分を減らしてどうするんだよ!」
「・・なぁ、勧誘はありがたいが。オレとpは別口だからな?二人分もらうぞ?」
そうだよ、オレ達は無関係なんだ。それに元より、こいつらの仲間になるつもりも無いぞ。
「こいつ!やっぱりか!
あとから現れて報酬を掠め盗ろうって魂胆だろ!こんなヤツを信用できるか」
「私としては、秘物を用意していただいた方に報酬をお支払う事は変りませんわ。
貴方達も、報酬と私の家のコネクションが必要なのでは?」
なら、ここでごねて醜態を見せるのは得策とは思えませんわ、と。
「頼れる方と言うのは、言葉は少なく結果だけ示せるものですから」ね?。
お嬢様はこっちを見ながら同意を求めるように微笑む。
(オレはただお前達と話したく無いだけだ、こっちを巻き込もうとするな)
「あら?冷たいお態度。ふふふ、興味が尽きませんわ。
ですがこのまま押し問答をしていても始まりませんので、契約の内容をハッキリいたしましょう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます