第7話

 確か・・[吹き飛ばし]とか[追放の光り]とか、魔物をどこかへ飛ばす魔法が有るらしいから、それの人間用だろうか。。

(よくわからないが、今は転移系のトラップに引っかかった。そう考えるべきか)


 ピョートル達とは別々の場所に飛ばされた、、か。

 大丈夫だよな、一応奴らの口にしていた悪魔ってやつをオレ達で倒したんだから、森の奴らに攻撃される理由は無くなったわけだし、野生に帰った魔物を魔物が襲うとかは・・オレが知らないだけかもしれないが、あまり聞いたことが無いし。


(同族が敵視する人間[オレ]もいない訳で、今頃きっと歓迎されているかも知れないな・・・はぁ、あちこちで嫌われてんなぁオレは。。。)


 勇者ってのは、人間にも魔物にも嫌われる職業なんだろうか。


 ため息をついてから、さて状況と現状の確認だ。

 ここは何処で悪いのは誰だ、、、どこかは解らないが今すべき事は、機械を作ったヤツをとっちめる事、そして王冠を返す事。


(それにしてもあの機械といいこの罠といい、博士ってヤツはいい性格をしてやがる。顔も名前も知らないが、殴る権利くらいはあるよな)オレは拳を握ってみた。


 手の中に有る熱い欠片で手の平が熱い、そうだよな機械との戦いは夢じゃ無いはずだ。熱いこの鉱物の感覚が、絶対夢じゃないと確信できる。


 足元がギリギリ見える霧の中をオレは道沿いに進み、気が付くと霧の中に一軒の家が見えてきた。中からもれ出す明かりは人間が住む証拠だ。


(ようやくかよ、、さて殴るか)そのあとで話があるなら聞けばいい。

プランが決ったら即実行だ。

 殺意も悪意も感じない家の扉をオレは叩き、ニッコリと笑顔を作る。

拳の出前ですよ?と。


・・・返事が無い。

家屋の中からはゴソゴソと人間の動きと足音が聞こえるのに、、、居留守かよ!


「そんな物が通じると思うな!引き籠もり生活5年、達人の領域まで極めたオレの前で半端な居留守が通じるか!!」


『おりゃ!』扉を引くと・・(鍵が掛かってない?)

 本当に馬鹿にしてるのか!?


「オイコラ!責任者出て来いや!」引き籠もりの仕方から教えてやるよ!


 まずは扉の鍵は閉めろ!

 そして人の気配がしたら音を立てるな!壁越しに聞き耳を立て、足音が消えたらこそ~と戸を開いて確認、

 それで食い物が置いて有れば部屋に取り込み、喰って一眠りしてから読書の時間だろが!!!。


 それで夜まで時間を潰して・・・て、違うな。


 あまりに幼稚な引き籠もり態度と児戯な技に、町を出る前の自分に戻ってしまった。


・・「なんだお前は、新聞はいらんぞ?

 薬の押し売りか、それとも何かの行商か?

 返れ帰れ!ワシは忙しいんだ!」


 髪の薄い男がバタバタと走り、怒鳴りながら部屋の奥に走って行く。


・・・?なんで今オレが怒られたんだ?不明過ぎる。


「いや、そうじゃ無くてだな。用が有ってだな」


 仕方ないので男の行った先を追う。

 先ずは一発殴ろうと思ってた気持ちが逆に怒られたせいでふっ飛んだ、なんなんだあのじじい、なんだっていうんだよ?


 家の中は紐?糸か?

 天上からぶら下がっているヒモに縛られた人形、壁には何か幾何学な絵?グラフ?

標記号と文字の羅列。なんなんだこの部屋は。。


「なんだシツコイぞ!

 金は研究が終わってからだと最初に決めていただろうが、

 成果が遅いからといって邪魔しに来るんじゃない!」


 薄毛の男は振り向かず背中を向けたままでオレを怒鳴りつける、剣幕だけで忙しいのはわかるが・・


「こっちも遊びで来ているんじゃないんだ、殴る前にこっちを向けよ!」


「なんじゃ!暴力でなんで解決出来ると思っているチンピラか!

ワシを殴ってもカネの音一つせんぞ!

 成果が出んのはカネが足らんせいだ!もっと出せと帰って上に伝えて・・・?」


 ようやくオレを見た男は一瞬目を丸くして、また背中を向けた。


「最近の金貸しはお前みたいな若い男も雇うのか、、、はぁ、若い男の仕事が

金の取り立てなど・・」

ブツクサ言いながらも手を動かし、ネジ・ゼンマイ・ボルトをガチャガチャやっては紙を覗く。


「おれは金の取り立てでも道具の押し売りでも無い、あんたが博士ってやつで間違い無いんだよな?」


 ガキの頃の講師を思い出す。

 この男の目は学問が世界を回していると本気で思い込んでいるタイプ人間の目だ、

実際の社会・労働者・人間の生活・営み、そんなものを見ない・見えないで数字を世界の全てだと思い込んでいるヤツらの目だ。


「なんじゃいその目は!

 お前はワシの研究がどれ程の物か、お前の目の前にあるソレがどれだけ世界を変える物かも解らん人間が、ワシを非難するのか!」


「知るか!」オレは剣を抜き、机の上の物体に刃を向けて男を黙らせた。


「お前の研究がなんなのかは知らんし、知りたくもない。

だから話を聞け、お前が博士ってやつか、それとも他に博士がいるのか?」

 その大事な研究ってヤツをぶっ潰すぞ!


「なんだお前は、貸しでも・物売りでも・研究を盗む泥棒でもないのか?」


「答えになって無い、次ぎに答えを間違えたらこのガラクタを本物のガラクタに変えてから殴る。一発殴ったらもうここには用は無い」


「・・もしワシが、ここには、ワシしか人間はいない。『博士とは、ワシの事か?』

といっても殴らんでくれ・・そうしたら答えてやるのも、やぶさかではない」


「殴る」拳を固め、オレは男の襟首を掴み拳を上げる。


「待ってくれ!確かにワシは博士だが、他にも博士がいるだろう?

数学博士も動物博士も天文学の博士もおるだろう?

なぜわしを殴るのだ?ワシがヌシに何をしたと言うのだ!

理由もわからず殴られるなど、理不尽だとは思わないのか」


・・・


「それとも理不尽に暴力を振るいたいだけの野蛮人なのかお主は?

年寄りが嫌いなだけの、暴力が振るいたいだけの若者なのか」


(憶えが無いのかそれとも、本気で本当に何も知らないのか?)


・・・ズボンに入れた鉱石を指で摘まむ、コレの関係者じゃないのか?

見せればわかる、たしかにアレとは関係ない博士かも知れないし・・な。


「コレに見覚えは無いか?あんたの物だと思ってったんだが・・」

鉱石を手の平に乗せて男に見せてみる。


「こっこれは!コレをどこで!

 ・・いや出自はこの際どうでもいい、コレをワシに譲ってくれ!

 礼はする!必ずあとでする!くれ!

 そうだ、ワシを殴るのだろう?殴らせてやるからコレをくれ!」


 男はオレの返事も聞かず、オレの手の平から鉱石を奪うとどこかへ走り去り・

金属の箱を持って戻って来ると、バタバタとガラクタに押し込んでゴチャゴチャやり始めた。


「・・・・なぁ?」


「すまん!今は本当に忙しいんだ!

 用はあとにしてくれ!そうだ、ワシの部屋を使っていいぞ!

 そこで休んでくれて構わん、とにかく今は手が離せないんだ!」


(・・・・はぁ・・わけがわからないな)

 確かに疲れている事だけは確かだ、しかたないので・・男の部屋を探して休ませてもらうが。。。。一体どうなってるんだ。


 埃っぽいベットと部屋の床に積もった埃・・勘弁してくれ・・ホントに。

 ガタガタと壁の向こうで作業が続く。

音が聞こえる、ゴソゴソと走る何かのバサバサと紙がこすれる音も。

 

 眠たさの中でまばたきの間に闇と光が繰り返し、明るさで頭が目覚めるころには静かになっていた。


(・・作業が終わったのか?それとも中断して眠っているのか・・・)

 欠伸で体を伸ばし、腕や背中も肩もがバキバキと音が鳴った。


 さぁて、説明とやらをしてもらうか。

 オレはベットから下りて部屋を出る??

 (なにか雰囲気が違うような・・気のせいか)


 昨日は疲れていたし、暗かった。多分それだけの事だろう。


「・・おはよう、ございます」

 片づいたダイニングとテーブルにおかれた謎色のスープ、

 そして少し老けたような男が席に座っていた。


「ああ、おはよう。

 キミも大変だね、行商の途中だったかな?

 久し振りに立ち寄ってくれたのは嬉しいが、疲れで半日も眠り続けるとは心配したじゃないか」


?・・ああ?そうなのか?そんな感じもするような・・


「さぁ我が家名物のスープだ、一緒に食べようじゃないか」


・・タマネギと斑点スライムとモコモコラット・マンドラゴラを混ぜて

顔のような盾からとった出汁で煮込んだような味・・・マズイ・物凄く不味い。


「はははは、ワシは鳥系のスープが好きなんだがな」


「ハカセ・スキキライ・ダメ・ゲンキナレナイ」


・・・どこかで見たような機械がスープをそそぎ、黄色の光る目が博士の方を向く。


「まだまだ改良する部分は有る、と言う事だよ・・・?

 相変わらすキミはワシのロボを見る度に驚くね、それほどいつも改良している訳で無いのだが」


「ああ・・ええ、以前と随分変ったような、なんというか・・それにスープも・・」


「そうなんだよ、きちんと狙った獲物だけを狩って来るようにしたいんだけどね」


 それでも毎日成長が見られて、このスープも慣れたら美味しいよ。


(ああ、研究者に良くある味覚に興味の無いタイプの人間か・・)


・・・ロボと呼ばれた機械が周囲で刈り取った魔物を適当に煮込んでスープにしているのか、

(道理で不味いわけだ)


・・頭が・・胃袋が・・うぇぇぇ・・ウッ・・吐き気が・・


トイレを借り、倒れるようにベットを借りる事にする。


(目が・・回る・・毒でも入ってたんじゃないか?・・うう気分が悪い・・)


 何かガタガタと金属がぶつかる音が聞こえる、何かが落ちて・・・


 次の目が覚めた時にはシーツは埃が溜まり、ベットの板が割れギリギリ形を保っているような状態になっていた。


(なにが・・・どうなっているんだ?)


 ギィ・・ギィ・・割れた木の板の扉のノブを回す。

ガリッと金属がこすれる音、天井を見上げると灰色の空が見えた。


「博士?」

 声を上げてリビングルームらしい場所に行くと、椅子も棚も朽ち果て床にも穴が開いて何年も使われていない廃墟のようになっていた。


 ギコッ・ギコッ・ギコッ・・「ハカセ・・ハカセ・・ハカセ・・」


(機械・・ロボか、アレが動いているなら博士のヤツもそこにいるのか?)


・・・ボロボロだが洗濯したようなシーツ、穴は開いているが掃除をしているような床。

天井は穴が開いているのに放置してあるベット。


 違和感、部屋の扉を開けた瞬間に受けたのはチグハグに整えた家事をした様子。


・・そしてベットの上にある白骨。

なぜか毛布を掛けられて、汚れがその場所に溜まって虫が湧いている。


 ギィ・・扉を開け、ロボがスープを運んで来た。


「ハカセ・ゲンキ・ナイ・・スープ・・スープ・・ゲンキ・ナル・・ハカセ・ハカセ」 


スープはハカセと呼ばれた白骨の口にそそがれ、ベットのシーツを汚していく。


「ハカセ・ハカセ・ベット・ヨゴレタ・・ベット・ヨゴレタ・・」


 ロボはオレには気が付かないのかシーツと毛布を取り替え、白骨を戻して去って行く。


(・・・死体だよな?)ソンビとかミイラとかじゃ無いよな。。


 空洞の眼窩は何も写さず、開いた口に残った歯はスープで汚れている。頭の髪も抜け落ち体も骨がこびりついた肉でギリギリ繋がっているだけ。


・・死体だ。


 訳がわからない、何がどうなったんだ?


(・・・これは・・)

 白骨の横にある小さな机、その中にしまわれた本・・日記か、

 直接雨にぬれなかったお陰でぎりぎり読める・・のたくったような文字。


(まずは、文字の解読からだな・・)


・・・魔王が現れ世界は変った。

 男達は魔物と戦い、傷付き倒れ、畑は荒れ森も川も海も奪われ、大人も子供も苦しんでいる。


 ワタシは人間の代わりに畑を耕し、漁をし、魔物と戦う機械を作る事を思い付き・考え・訴えた。

 だが世界の学者は今までの技術や知識のみに固執し、私の論文・意見を無視し笑うのだ。

 愚かしい話だ、世界は変ったのだ。

 新しい技術・新しい科学に何故背を向ける?



 金が足らない、時間が足らない、知識が足らない、技術が足らない。

だれも私の言葉を理解しようとせず、援助を惜しむ。

 ならお前達で作れるのか?この荒れて行く世界にお前たちは何ができるというのだ。

 私の中には有る、その形が・そのシステムが。

それを取り出してくれるなら、この頭を開きヤツらに見せてやる。

そしてヤツらに作らせるのだ。


 人間の姿は止めて虫の姿を参考にする、その方が丈夫であり安定する事が解った。

だが、人間の姿も残したい。人間のそばで役にたてるためだ。


 金属の腕・金属の体・金属の足、駆動機関を改良し想像した形が明確になってくる。

だが明確になればなるほど、足らない物の事実が浮き上がる。

動力が・動力がどうしても乗せられないのだ。




 石炭・油・ロウ・蒸気機関では駄目だ、電気・魔力が必要だ。

 純度が足らないのだ、動力となる機構を動かすべきエネルギー。


ロボを動かすエネルギーの出力が足らないのだ。

 その為にはもっと純度の高い魔石が、魔力の内包量が大きくロボに入るほどの純度ある魔石が必要なのだ。


 

今日も少ないエネルギーでロボが動かせるように、機構の改良をする。

まだ足りない、まだまだ使用エネルギを減らせるはずだ。


 今日も機構の改良を繰り返す日々だ。

 純度の低い魔石でもロボが動かせるように、足周り・腕周りの関節を改良。

まだ足りないのか。


 低い純度の魔石を圧縮して機構に搭載する、失敗だ。

 圧縮した魔石では出力が安定しない。


クソ、なぜ金貸しは投資しない。世界を変える発明が目の前にあるというのに。


 この家の来るヤツは私を馬鹿にする学者か、奇人と笑う新聞記者か・私の発明を盗もうとする盗人だ。この世界にはそんな人間しかいないのか。


 私のロボを理解してくれる人間はいないのか・・・


・・・・

 男がやってきた、そいつは私の襟首を掴み拳で脅す。

理由はわからないが、私の孫か?

私には家族はいないはず、親戚筋かもしれない。


 まあいい、とにかくその男の持っていた物だ。

 私が求めていた物を男は持っていた。


私は頭を下げ、丁寧に説明するとそれをくれると言う。


 これで私のロボが動く、男が何者であってもいい。

 私は世界に自分の正しさを証明出来るのだから。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ズキッ!

 頭が痛む、頭の中を直接刺されたような痛み。

 目が霞む、痛みに手を額に当て頭痛を振り払うように頭を振った。


「大丈夫ですか勇さん!」


どこだ?なに?なにが起こった?


「勇さん!オレも戦います、指示して下さい!」


?ハァ?なんだ?敵?前?ロボ?


 体当たりされて頭を打ったのか?それともヤツの魔法で幻覚を見たのか?


「勇さん!」


「スマン、混乱させられた。手を貸せ、ヤツの・・足を潰す。」


「勇・・さん?」


「お前にも手伝ってもらう、オレがヤツの右後足を潰す。

左はまかせた、攪乱してくれ」


「ハイ!」「ピギャァァァ!!」


 ピョートルの気合いの入った返事と、スライムの体を逆立てるように波立つ返事。


「いくぞ!」


 二人が分かれて左右から挟み撃ちだ、右に走ったオレはすかさず[火炎]を放った。立ち上る陽炎の揺らぎと炎の熱で、ヤツのガラスの目を眩ませる。


 鎖鎌の鎖を掴んで鎌を振りまわし、右後足を狙って投げつける。


 伸ばした鋼鉄の腕は盾で防いで、捻り絡ませるように手を放す。


 ジャリッ!回転したL字の鎌は牙を立てる蛇のように足に噛み付き、その関節に刃を立てた。


 足を捕らえられ、ロボがその腕で鎖鎌を外そうとペンチの手を伸ばし鎖を摘まむ、その瞬間。


「そうはさせません!」体当たり!


 ピョートルが全身で突っ込み、ヤツの金属の体にぶつかった。


 [氷結]とっさにオレはヤツの腕を凍らせて動きを止めた。

 足の一つを封じたからと言って倒れた訳ではない。

 左腕が固まり、体当たりの反動で下がったピュートルの体を薙ぎ払うように打ち飛ばす。


「[回復]!大丈夫か!」オレの使う回復がピョートルの打撲を治していく。


「すみません・・・」


「気にすんな、まだ動けるだろ。ならやるぞ、突っ込みすぎるなよ?」


(幸いまだ鎖は絡んでいるみたいだし、突っ込むだけだ!)


 しくじってもフォローし合うのがチームだ、いちいち謝っていたらキリが無い。


 ピョートルの兜がうなずき、オレが走り出すと同時に走り出す。


[火炎][火炎]二つの炎がヤツの目を狙う。

(これで呪文、5つまだまだいける)


 同時にピョートルの体当たりがヤツの左腕を弾く、

(あれなら反動も少ないし、よく考えたな・・?)


ピョートルの攻撃を嫌がり、左手を振り回し右手だけで鎖を外そうとする。


その背後に回り[氷結]!狙うのは熱く熱[ねっ]したしたその顔面!


『ジュッ!』

 空気中の水分が集まって氷りを作り、機械の顔で蒸発した。

 ガラスの目が曇り、ロボの動きの精度が落ちる。


(あと一息だな)


「ピョートル、左腕の動きを邪魔してくれ」


 おれの指示に頷きが帰ってくる。

 そしてワザとロボに姿が見えるように飛び出して左腕を叩く、左腕への攻撃を払うようにロボが腕を振った。


「隙だらけだ、死ね!」


 オレは鎖鎌の刃が刺さった場所に、跳び蹴りを放つ!


 ガキッ・・ン!

 刃が完全に球体関節の隙間に入り込んで鎌はその足を切断した。


バチッ!銅線が電気を放ち火花が飛ぶ。


「離れるぞ!」一人と二体が飛び退いて距離を取る。

 機械をよく見れば右前足に鎖が絡み、ジャラジャラと動きを邪魔していた。


「よし、終わったな。」


「?なぜです?まだヤツは・・」


 オレが石を掴み、ロボに向かって投擲。

カッキィィィン、石が金属に跳ね音を立てる。


「お前も石を拾って投げろ、泥でもいいぞ」


 敵の攻撃が届かない位置からの攻撃は、戦いの基本。


「・・その、勇さん。いいのですか?・・あまりにも・・」


「勝ちゃぁいいんだよ、相手は機械だ。心とかは無いんだから」


ただ壊す、道具のように。


 ぴぎ!・・スライムもあきれたような声を出すが。


「ご主人が怪我するよりいいだろ?」と言うと「ピィ」と肯定っぽい返事が。


 投擲・カンッ、投擲・・カンッ・・


  拾っては投げ、拾っては投げる。どれくらい投げたか良い感じに壊れている。

 投石でロボの体中はへこみ、泥で赤い目は塞がっている。


 ジジッ・・ジジッ・・オカエリクダ・・サイ・・ハカセ・・ハカセ・・


「勇さん・・」


「ああ解ってるよ」


「介錯してやる」柄を両手で掴み渾身の力で振り落とす。


ゴトン・・ガラスの目の光りが点滅し、やがて力尽きるように


ハカセ・・ジジッ・・ハカセ・・ハカセ・・ジジジ・・ハ・・カ・・セ・・・


「・・最悪な気分だ・・」


機械の背中をこじ開け、まだ熱のある鉱石を引き抜いた。


そしてオレが鉱石に触れた時、目の前が深い霧に包まれ、周囲の音が消えた。

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