似合い似合いの釜の蓋

「Aランチ2!! Bランチ3!! あっちのテーブルのAランチはまだか?」

「できてるわよ! ゼオン、さっさと運んで!! ロイド! テーブルは綺麗に拭きなさいよ!」


「待たせたな! 冷めないうちにさっさと食えよ!」

「ゼオン!! 今の口のきき方は何? 良いかしら。店員の態度も採点対象になのよ! 足を引っ張るなら消し炭にするわよ!!」


「わ、分かった……」

「良い? この王都料理祭にモルベガから参加しているのよ! このお店が流行るかは、今回の結果次第。分かるかしら? 人気が出れば観光客が増えて、モルベガの財政は潤うのよ! 必然的に私のお小遣いも増えるわけ!」


「ノア? いくら国王とはいえ、公私混同しすぎではないか?」

「今は国王代理に任せているから! 私には関係ないわっ! それに、ゼオンにもたくさんご馳走できるわよ!」 


「そうなのか?」

「そうなのよ!」


「駄目だ……この人たち……」



◇◇◇◇◇◇◇



「しかし、大盛況だな。ようやく、休憩か……。しかもまだ、三日目か……」

「あと半分よ。賄い料理を付けたんだから、二人共しっかり働きなさいよ!」


「ノア、人気の秘密は何だ?」

「ふふふっ、知りたい?」


「ノアさん、僕も知りたいです!」


「ノア、勿体ぶるな!」

「分かったわ。それじゃ特別よ! まずわ、生魚のカルパッチョね。脂が濃厚なアブラボーズという魚よ! 人の体内では溶けない脂で、その風味は中毒性をもつの!」


「おい……」

「メインの肉料理と魚料理にはこの調味料よ! マンドレイクの粉末とガオケレナの粉末、ちょっとした刺激物をブレンド! 意識が飛ばない程度に調合してるわ! もうやみつきよ!」


「賄い料理には……」

「勿論! 毎日でも食べたくなるでしょ?」


「謀りましたね……」



◇◇◇◇◇◇◇



「すみません! こちらの責任者のゼオンさんはいらっしゃいますか? 衛生局の者ですが、お時間よろしいですか?」


「なんだ? いつから責任者になったんだ? おい! ノア! 何処に行く!!」

「ちょっと、急用を思い出したわ! じゃあゼオン! 後始末はお願いね!」


「ノアっ!! 後始末とはなんだっっ!!」


「ゼオンさん……ご愁傷様です……」


「ゼオンさん。それでは当局まで、お越しください。禁止食材、違法薬物、そのあたりについてお話を聞かせてください!」

「俺は、無実だぁっっっっっっ!!」



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