女心と秋の空

「いいわ! ゼオン! もっと、もっと奥よ!」

「どうだ! ノア! ここか!?」


「ゼオン! そのまま、いって!!」

「わかった、いくぞ!!」


「だめっ! ゼオン! そんなに強いと壊れちゃうわ!」

「ああ! まどろっこしい! もう一発いくぞ!」


「そう! そこよ! 思い切りいって!!」

「ヌオぉっっ!!」






「ぎゃあああっっ!!! 痛いっ! 痛いですってば!」


「残念!!」

「ロイドの頭か……。ん? スイカみたいに真っ赤だな! ははは」


「殺す気ですか!! 危うくスイカみたいに、『パッかぁーん』ってなるところでしたよ! ……って、なんじゃこりゃっっ!!」   


「んん! 甘いっ! やっぱり夏といえば海! 海といえばスイカ割りよね!」

「んまっ! ロイド! 血なんか早く止めて、お前も早く食え!! うまいぞ!」


「もう驚かなくなった自分が怖い……。止血完了! いただきますっ!」


「けど……スイカの種って邪魔よね」

「確かに。でも、こうすると武器になる!」


「種を飛ばしても武器になんて……」


「武器になるのよ……」

「プッ! プッ! プププププッッッッッ!!」


「岩が……蜂の巣……」


「流石だわゼオン! 威力が増したわね!」

「粉々にするつもりだったが、狙いが定まらん! まだまだだな」


「いや……十分だと思いますよ……」


「それより、砂風呂でもどう?」

「砂風呂?」


「何ですか?」


「前に火山地帯の観光案内で見たんだけど。砂に入って汗をかくの! 疲れが取れて体力が回復するみたい。魔術が使えない状況での応急処置って感じかしら。良くわからないけど、試してみてよ!」

「良くわからんものを勧めるな!」


「実験体じゃないですか!!」


「そこのお店でもの……色々食べたわよね?」

「ロイド……俺はたまたま、砂に埋まりたいなと思っていたんだ。……お前もどうだ?」


「奇遇ですね! 砂を見たら埋まらずにはいられないんですよ!」


「でしょ! 観光案内に書いてあるんだから、きっと有難いわよ! ――それよりどう? 疲れは取れたかしら?」

「いや……良くわからんな。少し熱い感じだが」


「確かに、汗が出るほど熱くはないですね……」


「やっぱり火山地帯じゃないとだめかしら? なら、こうすればいいわね! 冥府の劫火ヘルフレイム! 紅蓮火炎弾クリムゾンフレイム!」

「あ゛っ!!! あぢぃっっっっっっっ!」


「∀∨▲◇☆∞っ∥∅∨!!!」


「あっ! 熱過ぎかしら? 冷やさないとね! 氷原の風ホワイトアウト! あれ? 凍ったわね……。冥府の劫火ヘルフレイム! あ、燃えた……氷原の風ホワイトアウト! あ……冥府の劫火ヘルフレイム! ま、まずいわね……。もう、とりあえず休憩ね……」

「――――と……ととのうぅぅ……」



◇◇◇◇◇◇◇



「ゼオンさん。今……なん時……ですか?」

「わからん。……とりあえず夕方だな……」


「夕日が眩しいですね……」

「そうだな……」


「出ていいんですかね?」

「わからん。勝手に出て、消炭にされては敵わん……。待つか……」


「女心と秋の空……ですね」

「夏なのにな……」



◇◇◇◇◇◇◇



「あれ? 何かしら。大事なことを忘れているような……」

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