似た者夫婦

「なあ、ノア?」

「何よ? ゼオン!」


「不思議でならないんだが」

「うんうん! 何か謎でも?」


「何でここにいるんだ?」

「え?」


「確か、王立図書館に行くと言っていなかったか?」

「そうよ! で、今からランチ! ゼオンもここで食べるの?」


「ああ。この店にリベンジに来た!」

「私もよ! 以心伝心、似た者夫婦ね!」


「ノア? 俺の魔力を感知しただけじゃないか?」

「…………。いい天気ね! 並んでも苦にならないわ!」


「何だ、今の間は? まぁいいが……。この店の看板料理『紅の挑戦状いわゆる激辛料理!子供や辛いものが苦手な人は食べるな!』。こいつへのリベンジだ!」

「激辛女王と呼ばれたこな私も、あと一歩一口及ばなかったわ……。二人で挑みましょう夫婦タッグマッチよ!


「あれ! ゼオンさんにノアさんじゃないですか!」


「お、ロイド! お前もここで昼飯か?」

「珍しいわね!」


王立魔術研究府 アカデミア獅子のたてがみの食堂が休みだったんで、仕方ないからフラッと来ました!」


「そうか。時にロイド? 激辛料理は苦手じゃなかったのか?」

「私の特訓の成果かしら!」


「はい、ノア姐さん! 魔術と基礎体力の特訓! 合間の食事は、地獄の辛味調味料デスヘブンを使った激辛料理……。もう、激辛料理無しでは生きていけない身体になりました!」


「笑顔で危ない台詞を言うな……」

「これもゼオンのためよ! いずれ貴方の前に立ちはだかる強敵は、私が鍛え上げたロイド!戦闘マシン 友との決闘、引き裂かれる友情! そこで私が叫ぶの! 『私をめぐって争うのは止めて! 私の美しさが悪いの……許して……』と。ね! もうロマンでしょ?」


「それは、壮大な計画だな……」

「そうよ! 死にゆくロイド……。またまた、私の出番ね! 煌めく可憐な魔法少女! 蘇れロイド! ゼオンと私に忠誠を誓うのよ! ゼオン騎士団隊長の誕生の瞬間! 迫りくる魔の手から、ゼオンと私を守る盾となるの! ね! もう激熱でしょ!」


「二人の方が強いですけど……」


「確かに……」

「そう言われるとそうね……。むしろ足手まとい」


「…………。そんなことより、案内されてますよ!」


「よし! 行くか!」

「そうね!」


!!」


「入ったな、ロイドゾーン……」

「入っわね……」


!!」



◇◇◇◇◇◇◇


「『紅の挑戦状』を一つ!」

「私も!」


「僕はをつけてください!」


「また、何か企んでいるのか?」

「何かしら?」


「お楽しみは後程……」


◇◇◇◇◇◇◇


「見た目は普通のピッツァなんだがな」

「そうなのよね……。付け合せのソーセージとチキンも普通に美味しそうなんだけど。私の愛用する地獄の辛味調味料デスヘブンの十倍の辛さよ、この紅蓮の破壊神レッドホットチリペッパーは……」


「油断は……禁物です!」


「よし……。いただきますっ!!」

「いただきまぁす!」


「頂きます! 食闘技食前のミルクストマックバリア!」


「辛いっ! 辛いっっ! でも、旨いっ!」

「辛いだけでなくて、美味しいわね! それよりロイド? 何でミルクなのよ?」


「ふふふ! 良くぞ聞いてくれました! ミルクによって、胃の粘膜を守るんです! 激辛の闘いは食事の後にも体内で続くんです!」


「グヌハッッッッッッッ!!」

「ゼオン? 食べきりなさいよ!! 残したら負けよ!」


「し……痺れるぅぅぅっっ! さ、ずわぃごぉ最高です!!」



◇◇◇◇◇◇◇


「ハァハァ……何とか……食べ切れたな」

「暑い……わね」


「飛びましたね!!」


「会計するか。ん? あれ? 金がない……。しまった!! 忘れてきたぞ! ノア! ちょっと貸してくれ!」

「仕方ないわね、ゼオン。貸して……あれ? 財布がないわ……」


「……似た者夫婦ですね」

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