A.コーヒーとアップルパイを二つずつ

A.コーヒーとアップルパイを二つずつ

作者 @nero1224

https://kakuyomu.jp/works/16817139558693125624


 大人になりたいと強く思っている男子高校生の朝日は毎週水曜日、喫茶店に立ち寄る。いつもとちがう席のシュガーポットにみつけた『Q.貴方が考えるI love you の訳とは?』に、『A.コーヒーとアップルパイを二つずつ。』と書き込んだ話。


 体験談を書いているような感じ。

 さらりと書かれていてわかりやすく読みやすい。


 三人称、男子高校生の朝日視点で書かれた文体。朝日の自分語りで独白、実況中継。三人称なため、自分を俯瞰している感じに見受けられる。


 女性神話の中心軌道に沿って書かれている。

 大人になりたいと強く思っている男子高校生の朝日は、毎週水曜日の学校帰りに喫茶店に行くのを楽しみにしていた。軽口を叩けるくらい仲のいい従業員と話をすると、少し大人担った気がする。

 いつもは一番隅の二人用の席に座るのだが、この日は混雑してい窓際の箸の席に案内された。

 お冷をもってきた従業員に「朝日君、いつものでいい?」といわれて「お願いします」と敬語で答える。

 数学のワークを十ページやろうとはじめるも、苦手科目なために集中できない。そこに「コーヒーとアップルパイです」と運ばれる。

 最近コーヒーの美味しさに気付いてきてはいるものの、苦いのはあまり好きじゃない為に、コーヒーにはミルクも砂糖も入れる。コーヒーを飲む前にアップルパイを一口食べて、飲む直前になったら砂糖を入れる。そのタイミングで完全に全て混ぜてしまう。いつものルーティーンんで飲むことにしている。

 一口食べて角砂糖が入っている瓶を手に取ると、シュガーポットの下に悪戯書きのようなものがいくつも書かれている。

『Q.貴方が考えるI love you の訳とは?』

 その下には色んな人が書いた答えが書かれている。宿題そっちのけで見ながら、恋なんてわからないけれども愛を伝えるならこれがいいと、『A.コーヒーとアップルパイを二つずつ。』と書き込むのだった。


 週に一度、喫茶店に立ち寄るのが主人公の楽しみなのだろう。

 女子高生が学校帰りにファミレスやマクドなどに立ち寄ってしゃべる感覚とは、少しちがう。

 主人公の朝日は、喫茶店に入るのは大人だし、喫茶店のコーヒーを飲むのも大人がすることで、常連客のように従業員に顔を覚えてもらうこともまた、大人になる事だと思っている。

 そんな彼自身が思い描いている理想の大人像に近づくため、喫茶店に毎週水曜日に通い、体現するのが儀式なのだと推測する。

 

「クーラーの涼しさが一気にきて思わず思わず息が漏れる」

 夏の暑いときに来店しているのがわかる。

 夏でなくとも、初夏かもしれない。


「店内は全て木のブラウンのテーブルで纏められていて、椅子は木の椅子、それから落ち着いた緑色のソファで統一されている。少しだけ薄暗くLEDではなくオレンジ色の白熱球。誰もが思い描く喫茶店、という感じだ」

 いわゆる、昔ながらの純喫茶。

 スターバックスなどのチェーン店ではないのだろう。

 

 触覚や視覚で描かれている。

 喫茶店を来店した人ならわかると思うけれども、入店前から鼻孔をくすぐるコーヒーやザラメ等の甘ったるい匂いが先に鼻につく。

 焙煎された豆を挽いて点てているからだ。

 豆を挽いたものは粒子が細かく、匂いがついて取れにくい。なので、長く経営されている喫茶店の店内、入口前からコーヒーの独特な香りがする。

 運ばれた際も、コーヒーの苦味は書かれているものの、特徴的な匂いが書かれていない。

 アップルパイには「バターの風味が強く」「シナモンが丁度よく風味付けがしてあって最高」と表現がされている。

 主人公は、コーヒーよりもアップルパイに関心がむいているのだろう。

 このあたりが、甘い物好きな子供の口だから、まだコーヒーが苦手で、アップルパイに目が向いてしまうことを表現しているのかもしれない。


 シュガーポットに書かれていた「Q.貴方が考えるI love you の訳とは?」を主人公が見つけるのは、大人になりたいと強く思っている主人公だから見つけられたのだろう。

 人間とは、自分が意識しているものが目に飛び込んでくることがあるもの。

 主人公は『A.コーヒーとアップルパイを二つずつ。』と書く。

 自分が好きなものを、好きな人といっしょに味わって、美味しさを共有したいのだろう。

 わかる。

 わかるんだけど、野暮なのもわかっているのだけれども、最後はきちんとわかり易い言葉で、「好きだ」「愛してる」といってもらわないと伝わらない。

 そういったもろもろも含めて、一つずつ体験していくことで大人になっていく。主人公にとって、喫茶店はまさに大人への入り口なのだ。


 ただ、「四五〇円のコーヒーと四八〇円のアップルパイ」は高い。 たしかにコロナ禍で物流が滞り、その間に経営していたところが倒産したり閉店したりして、規模が縮小しているところに燃料費高騰でコーヒーの値段も上がっている。

 産地の天候不順や労働賃金の高騰、日本が失われた二十年か三十年の間にアジア圏は経済発展してコーヒーを飲む人口が世界的に増えたため需要が増えて供給が減ったなどなど、コーヒーが値上がりする理由はわかる。

 わかるんだけれども、毎週通っているのなら、コーヒーチケットを購入した方がいい。

 本作がどの地域の話かわからないけれども、客の囲い込みの一環として行っていると思う。

 チケットを購入すると、一回分は無料で飲めるから、主人公には活用して欲しい。

 あとはケーキセットはないのかしらん。

 夕方に来てるのでだめですが、東海地方なら、モーニングセットがあって、ドリンクの値段で店独自に用意された食べ物、サンドイッチとか茶碗蒸しとかおにぎりとか、店によって出てくるものはちがうのですけれども、いろいろついてくることもある。

 そういった経験も、主人公にはしていってもらいたい。


 店内はクーラーがきいていたので、季節は夏っぽい。

 どうしてアイスを頼まなかったのかしらん。コーヒーの味を楽しみたいなら、ホットでもいい。いいのだけれども、その割には香りを楽しむ描写がない。

 きっと、喫茶店に通いはじめて、まだ数回なのかもしれない。

 本作の話が五月か六月と仮定し、高校入学してしばらくしてからみつけた喫茶店に来店するようになったのなら、まだ十回も来ていないはず。

 これからもっと、いろんな経験をしていくのかもしれない。


 アドバイスとしては、コーヒーをティースプンで混ぜるときは、底をこするように前後に動かすとよく混ざる。

 喫茶店経営されていたおじさんが教えてくれました。

 

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