中間選考作品

僕と彼女は何度でも、心の記憶を思い出す

僕と彼女は何度でも、心の記憶を思い出す

作者 ハンくん

https://kakuyomu.jp/works/16817139558164766953


 河川敷で声をかけて出会った夏宮陽光と出会った半アンドロイドの冬野陽希は、同じく半アンドロイドの彼女に守られ、再びめぐり逢い、今度は彼女を助け、数年後に再会を果たす物語。


 意表を突かれるSF。

 仮面ライダーなどの特撮を想起させられる。


 主人公は冬野陽希、一人称僕で書かれた文体。自分語りで実況中継で綴られている。


 女性神話の中心軌道に沿って書かれている。

 国の極秘機関、"ジーン"が作った半アンドロイドである冬野陽希は、脳に埋め込まれているチップがある限り操られてしまうと知った夏宮陽光とともにチップを取り除こうと行動するも失敗し、夏宮陽光に守ってもらった記憶を残して最愛の彼女をなくし、彼女の存在すらも忘れて腑抜けた日々を二年も過ごしていた。

 ある河川敷にたどり着き懐かしい気持ちになったとき、白いワンピースの少女に出会う。

 夏宮陽光とはじめで出会い、声をかけたときのことを思い出した主人公は、亡くなった彼女だと気づく。

 だが彼女は 主人公の呼びかけに初対面のような返答を帰してくる。名前を教え合い、自分たちは半アンドロイドで、チップを入れ替えられた夏宮陽光だと答えてきた。

 国の秘密機関は、主人公の記憶を消そうとしていたという。以前の彼女は主人公を助けようとし、衝撃で忘れてしまった。しかも正常に機能しなくなり、秘密機関からは居場所を特定できなくなっているという。

 居場所を特定される前に、チップを取り替えてくれた信頼できる人の所に行こうと声をかけられ、行こうとしたとき、以前と同様、黒尽くめの男二人が捕まえに現れる。

 主人公は彼女を救うために、「今度は僕が君を守る番だ」といって彼女を逃がす。「絶対、また会うぞ!」と約束しあい、彼女を逃した。

 二人が河川敷で再会したのは、数年後である。


 国の極秘機関、"ジーン"はなぜ、少年少女を半アンドロイドにしたのかしらん。

 埋め込まれたチップによって、操ることができるらしい。記憶の改変もできるから、子供をつかった極秘ミッションに利用していたと想像する。


 記憶の改竄もできるのなら、遠隔操作で都合の悪い記憶を消去すれば良い。黒尽くめの男たちが主人公を捕まえに来たことから、遠隔操作では記憶の改竄はできない仕様になっているのだ。

 おそらくチップの交換が必須なのだろう。

 

 彼女はどうして、自分たちがチップが埋め込まれた半アンドロイドだだと知ったのかしらん。

「今すぐにチップを取り除きに行きましょう。心配はいらないわ、私のチップも取り替えてくれた信頼出来る人がいるから」

 とあるように、

 国の極秘機関、"ジーン"の中には現在のやり方に反対するグループが存在し、そこが彼女と接触、事情を説明して現在組織を牛耳っている人たちを失脚させようと動いていると想像する。

 主人公は、組織にとってかなり重要なミッションをこなしてきた人物なのではと邪推する。

 だとすると、彼らは主人公をぜひとも手に入れたいはず。

 主人公のチップを手に入れたいのは当然。

 しかも、チップの交換による記憶の改竄はされて忘れても、体や心には記憶の残滓と呼べるものが、なにかしら残っている可能性もある。

 主人公と仲が良くなった夏宮陽光を引き入れた反対勢力は、彼女に半アンドロイドだと伝え、主人公を手に入れようと彼女を利用しようとしているのだと、勝手に想像する。

 彼女は、利用されているとは思っていない。

 チップを交換されているので、以前の記憶もなく、言われるままに行動しているのだろう。


 主人公は、いろいろ思い出している。

 ということは、国の極秘機関、"ジーン"にチップの交換をされていないのだろう。

 彼女に守られた際、頭を強く打ってしまい、記憶喪失の状態に陥った。組織はそれを見て、しばらく様子を見ることにしたのだろう。

 その際、居場所が特定できないようになっている。

 なぜ直さなかったのかしらん。

 チップ交換だけでは、簡単に直せない部分なのだろう。

 なので、機械的に居場所の特定はできなくとも、黒尽くめの男たちに尾行させていたのだ。

 だから彼女が接触をしてきたとき、すぐに現れることができたのだろう。


 国の極秘機関、"ジーン"としては、主人公を囮に、彼女を捕まえることが目的だったのだろう。反対勢力のグループ秘密機関から脱退して行方をくらませていて、消息がわからないのだ。

 でも、彼女の居場所はわかるみたい。

 だったらもっと手軽に捕獲できそうな気もする。

 居場所が特定されないようジャミングをかける装置を身に着けているのかもしれない。

 

 仮面ライダーのような、特撮っぽい設定が面白い。

 恋愛ものかと思ったら、彼女がなくなって悲恋になり、再び彼女と巡り会えたと思ったらSFになるところが、意表を突かれた。

 最後は、再会ができたと締めくくられている。

 その間、主人公は秘密機関の壊滅のために孤独な戦いをしてきたのかしらん。その辺りの話も読んでみたい。

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