Moody Color

Moody Color

作者 宵町いつか

https://kakuyomu.jp/works/16816700426705860109


 自分には才能がないと思いながら、相手を意識しつつ絵を描いている木城と彩の話。


 努力の質は性格に左右され、努力ができる性格に育っているのが才能であり、受験レベルなら努力で補えるけれども、世界のトップになるには遺伝という才能が重要になってくる。

 人の能力は、遺伝と環境の二つに影響される。

 知能の場合、遺伝が六割、性格は三〜四割といわれる。

 芸術センスの才能は遺伝が五割。

 ただし、科学的客観的に測定することが難しいためエビデンスが乏しい。

 測定が可能であるリズム感や絶対音感などの音楽の要素なら、遺伝の影響は五割程度となっている。

 つまり、残り半分は努力次第ということだ。


 主人公は二人、木城と彩、一人称私で書かれた文体。各話ごとで主人公がかわる。自分語りで実況中継、自分の思いを吐露している。描写より説明的。


 女性神話の中心軌道っぽい書き方をしている。

 互いに相手を意識して絵を書いている。

 彩は睡眠時間を削り、テスト勉強の時間を削って絵を書くも、相手よりフォロワー数は少なくろくにコメントもつかない。

 深夜二時にネットに投稿される木城の絵。そして彼女からのラインで「どう?」ときいてくる。意識しているからこそ、素直になれず、「みんなからの反応もいいね。流石だよ」とそっけない返事を返す。

 一生懸命絵を描く彩のおかげで、絵を好きになった木城は、深夜二時に絵を投稿した。閲覧数が増え、コメントがついていくのは嬉しくも恐い瞬間。彩にラインを送り、返事をもらう。

 互いに「私には才能がないから」相手に近づくために絵を描かねばならないと思いながら、眠りにつき、絵を描いていくのだった。


 ひょっとしたら今日も どこかで、Pixiv界隈などで繰り広げられているお話かもしれない。

 絵には流行りがあり、人によって好みが分かれる。

 きれいな絵、エモい絵、ちょっとエロい絵、本当に絵なのかと疑うような写実的なものが注目を浴びる。

 あとはマスコミに取り上げられるなど、さらに注目されれば、より多くの人に見られやすくなる。

 とはいえ、絵はその人の好みなので、明確な基準のない他人の評価で閲覧数をあげてコメントを貰うのは、絵以外の別な要因も必要となってくると考えられる。

 純粋に「この人の絵が好き」と思っている人は一握り。友達の勧めや流行り、レスポンスが早い、コメントが面白い、別のSNSで顔出ししてるなども影響するかもしれない。

 また、見ている人は描いている人が圧倒的に多いはず。こんなふうに描けないからすごいなぁ、と思う人もいるだろう。あるいは、ここの表現はどうやって描いたらいいのだろうと勉強している人もいるかもしれない。


 カクヨムでも、書籍を出している作家さんのフォロワーより、異世界転生ものを今現在書いて投稿している人のほうが圧倒的に多い現象もおきているので、一概に上手いからフォロワーや閲覧数が多いのかどうかわからないところがある。

 そんな中、自分には才能がないからといいながら、ライバル視する相手よりも少しでもうまくなろうと懸命に努力する。


 一話の彩は、自分の絵を描いていると思う。

 木城は、彩の絵に影響を受けた絵を描いていると想像する。彼女の出来は彩より上手くいから、彩は木城には負けたくないってなるし、木城は彩は凄いなと思いながら負けないように頑張っている。

 もし彩が絵を描くのをやめたら、木城も止めるかもしれない。

 そのとき、木城が賞をとって絵で稼げるまでになっていたら、やめないかもしれない。ただ、自分が描きたい絵を描こうと思ったとき、木城の方が悩んで描けなくなるのではと邪推する。


 フォロワーや閲覧数を増やしたいなら、ネットの営業活動や大多数が飛びつく題材を選んで描く方法もある。

 エロい絵だと飛びついてくれるでしょう。

 次に、きれいな絵、可愛い絵、ファンシーなもの、と続く。

 そういった作品はクオリティーを上げる必要がある。


 ただ、作家には、描ける絵と描きたくない絵、描きたい絵がある。

 描きたくないものより描きたいもののほうが筆のノリも違うから、彩は描きたい絵のクオリティーをあげることを意識したほうがいいかもしれない。

 あるいは、木城のいない場所で公開する。

 日頃絵を描かない人や、絵の投稿サイトを利用していない年代の人に見てもらうと、褒めてもらえるかもしれないし、辛辣な意見もくるかもしれない。絵の教室に通うのも一つの手だろう。

 できるなら、褒めてもらって自信をつけると成長できるかもしれない。


 生きているだけで才能は誰もが持っている。

 ジブリの鈴木プロデューサーも言っているではないか、「がんばらなくていい、才能を出してくれたなら」と。

 問題は、自分には何の才能を持っているのかわからないから惑うのだ。絵の才能はないかもしれない。でも違う分野では才能を発揮できるかもしれない。

 才能がない、と自分を追い込みすぎないほうがいい。

 くらべていいのは、過去の自分と今の自分。もしくは、今の自分と未来の自分だけ。他人とくらべてはいけない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る