店を立て直してくれ!ってまだ一番弟子でしかない僕に何ができるんですか⁉︎

店を立て直してくれ!ってまだ一番弟子でしかない僕に何ができるんですか⁉︎

作者 ゴローさん

https://kakuyomu.jp/works/16816927861478741090


 大阪にある小さな中華料理店『華神楽道』の大将は閉店の危機を回避すべく新メニュー開発に明け暮れていたが倒れてしまい、三年前から働く一番弟子の有田和彦に託され、苦心の末に完成させた中華風たこ焼きの売上高から、大将に店を任されるようになる物語。


 文章の書き方は気にしない。

 誤字脱字も目をつむる。

 でも、声に出して音読し、気になるところを推敲されたほうがいい。


 サブタイトルに「すまない! お前だけが頼りなんだ! あとは任せた!」とある。悲痛に似た叫びのようだ。

 美味しいたこ焼きを食べたくなる作品。いいよね。


 主人公は大阪にある小さな中華料理店『華神楽道』で働きながら修行している専門学校卒の有田和彦(推定年齢二十三歳)、一人称僕で書かれた文体。自分語りで実況中継をしつつ、描写は少なくやや説明的に書かれている。作品イメージは児童文庫(角川つばさ文庫など)を彷彿させるような、平易な表現で書かれた印象がある。

 ラスト部分は三人称の和彦視点で書かれた印象がある。


 本作は男性神話と女性神話、両方の中心軌道で書かれている気がする。

 主人公は、将来自分の店を持つことを考えながら就職活動するも難しく、自暴自棄になっていたときたまたま通りかかった大阪にある小さな中華料理店『華神楽道』が人手不足だったのでお願いすると即採用となり、いまに至る。

 商店街から外れているため、常連しか来ない華神楽道は閉店の危機に貧していた。大将が新メニュー開発に取り組みも倒れてしまう。

 大将のかわりに新メニュー開発を託される、悪戦苦闘するも専門学校を卒業して三年の主人公はまだ未熟。

 上手く行かず行き詰まってしまう。

 大将に上手く行かないと告げに病室にうかがったとき、大将が注文していたたこ焼きが病室に届く。食べながら思いついた主人公は、海鮮をつかった中華風たこ焼きを作り、店頭販売を敢行。販売初日で百五十個も売り上げる。

 今回のことで自信を得た主人公は、大将から店を任され、引き受けるのだった。


 大将の性格が書かれている。

「大将は職人気質で、何か作り始めると、集中して周りの音が聞こえなくなるのか、話しかけても言葉が返ってこない。自分からも話しかけてくることはないので、基本的に無口だが、スタッフのことを大事に扱ってくれるいい人だ」

 べらべらしゃべりながら作らない。

 必要なものに金をかける商いの町、大阪ならではな気がする。 

 大阪の町中華には、こういう大将が実在していたのを思い出す。

 なので 作品に現実味をおぼえる。

 また、こういう店の中華がおいしいのだ。

 

 大将は「自律神経失調症」で倒れたとある。

 医者から説明を受けたのに「過度のストレスが原因らしい」という表現はどうしてなのだろう。

 らしいというのは、第三者から伝え聞いた感じがする。

 ひょっとすると、大将の家族から、医者からきいた病状を教えてもらった可能性が考えられる。

 本作には大将の家族がでてこない。

「二代前から続いている」とあるので、大将で三代目かしらん。

 最終的には主人公が次を引き継ぐので、家族経営の店ではないのかもしれない。

 おそらく二代目までは家族経営だったけど、三代目の大将は、二代目の下で働いていた従業員だった。

 そういう大将だから、血縁関係のない主人公に次の代を任せることができるのだろう。


 医者の話によれば大将は「一日あたり二時間くらいしか寝ていない」もしくは「寝ていなかったんじゃないか」と語っている。

 つまり、新メニュー開発によるストレスもあるけれど、睡眠不足が倒れた原因としては大きい気がする。

 若い頃は徹夜も問題ないけれど、三十過ぎると徹夜がきつくなる。

 徹夜でなくとも、睡眠時間が短かったり、質の悪い眠りだと、疲れが取れない。それで体を壊すので、若いうちから無理な徹夜はせずに質の高い睡眠を心がけてもらいたい。

 しかも、大将は剥げてる気がする。

 たとえば、夏の暑さで眠れない日々が数日続いただけで、髪の毛は抜けます。睡眠不足もそうだけど、暑すぎると抜けるので気をつけて下さい。



 主人公が「自律神経失調症の基本的な症状の一つです」というように、自律神経失調症の症状は多岐にわたる。

 心臓    動悸、胸痛、胸部圧迫感

 肺    息苦しい、息がつまる

 胃腸    吐き気、下痢、便秘、腹痛、

       胃の不快感、お腹の張り、ガスがたまる

 頭    頭痛、頭重感、脱毛

 目    目の疲れ、目の渇き、

       目の違和感、まぶしい

 耳    耳鳴り、耳の違和感、めまい

 口    口に渇き、口の痛み、味覚障害

 のど    ヒステリー球(のどの異物感)

       飲み込みづらい、話しづらい

 手足    痛み、しびれ、ふるえ、冷え

 皮膚    多汗、痒み、痛み

 筋肉・関節 肩こり、脱力感、筋肉痛、関節痛

 血管    立ちくらみ、高血圧、冷え

 膀胱    頻尿、排尿障害、残尿感

 生殖器  勃起障害、射精障害、生理不順

 全身    微熱、倦怠感、疲労感、

       食欲不振、ほてり、めまい

 精神    落ち込み、不安、不眠、イライラ、

       気力低下、集中力低下、情緒不安定


 口の中が酸っぱくなったりするらしいので、新メニュー開発は大将には難しい状態にあるといえる。


 集客に宣伝は欠かせない。

 ホットペッパーや無料配布の地方誌の宣伝をしても、広告料に見合った利益が出るかといえば、必ずとはいえない。

 なので、広告費の出費も抑えたい。

 そこで、スマホ利用者のことを考えると、SNSを活用した店から情報発信は捨てがたい。テレビで放送してくれたら、一時的に集客が増えるのだけど。

 そういうことも望めないと、店頭のチラシ配りか、常連さんによる口コミに頼るしかない。商店街からはずれているので、人通りがまばらなのだろう。

 店の経営は立地も大事。

 立地のいいところは家賃が高い。

 家賃の安いところは、安いなりの理由があるのだ。

 とにかく飲食店で大事なのは味。

 なので、大将は新メニュー開発に心血を注いだのだ。

 

「エビチリを甘い味付けで炒めるならぬ、『エビスイート』たるものを作った」とある。

 なぜそれを作ろうと思ったのだろう。

 エビのスイートチリ炒めを作ろうとしたのかもしれない。

 どんな客層をターゲットにするのか、コンセプトは大事だと思われる。闇雲につくっても、食材が無駄になる。自分で食べるにしても、材料費はかかるので、方向性を着けるのは大切だと思う。

 いずれ店を持とうと考えていた主人公なら、『華神楽道』の『メニューや、これまで食べてきておいしいと思ったものなどを、ノートに書いていると思う。

 そこから、アイデアを出してもいいのだけれど、日々の注文を受けて作って提供する延長上で新メニューを考えている感じがする。

 つまり、頭で考えるのではなく、動きながら考えているのだ。

 こういうアイデア出しも良いよね。


 たこ焼きを食べて新メニューを思いつくのは、謎解きを考えていた時に、何気ないやり取りをヒントにして思いつくみたいで、ミステリーっぽくて面白いと思った。


「イカ、ホタテ、あんかけ、焼売の皮。これだけで、今、俺は中華風たこ焼きを作ろうとしている」

 タコが入ってないのにたこ焼きなのだ。

 たしかに、かねます食品の「イカでたこ焼」という、タコのかわりにイカが入っているたこ焼きはあるけれども、飲食店ではどうなんだろう。

 ネーミングからクレームが来そう。

 ちょこっとタコも入れたほうがいいのでは……。

 メロンの入ってないメロンパンもあるから、いいのかしらん。


 焼売の皮をつかってシュウマイ状のたこ焼きを作るのは、ひっくり返すなどの整形の手間が省ける利点がある。

 家でたこ焼きを作るなどのでも、この手法が用いられることがあるので、手軽にできると思われる。

 また、九州に「いかしゅうまい」があり、それに近いのでは、と推測する。

 しかも、さらに素揚げして表面をカリッとさせている。

 学校給食で揚げシュウマイがあったのを思い出す。

 カリッとする食感の美味しさはたまらない。


 横浜中華街『保昌』には中華風海鮮たこ焼きがある。

 ゴルフボールより少し大きめのサイズで、ふんわり軟らかい生地にエビのすり身を使い、タコとホタテがぎっしり詰まっている。

 ソースはXO醤、かき油、豆板醤などを合わせ濃厚な味わいに仕上げられ、青ノリが振りかけられている。


 こういった新メニューは、その店に行かなければ味わえない材料なり、独自性が必要になってくる。

 おそらく、今回のアイデアを元に、さらなるブラッシュアップをしていくに違いない。

 なぜならば、大阪は流行るとまわりもみんなやりだすから。

 でも、大阪のたこ焼きはすでにいろいろな種類が存在するので、たくさんあるたこ焼きの一つとして認知してくれるかもしれない。

 いずれ、たこ焼きの食べ比べをしたいと思うマニアが全国から買いに来るようになるかもしれない。

 まさにたこ焼きの見てくれのように、丸く収まったような、そんな素敵なお話である。


 海鮮焼(うみやき)のネーミングは良いと思う。



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