27日目 モノは持ち主に似る

 日記ものすごく空いてしまった。

 俺自身が日記だというのに。

『もちぬし』の気持ちがよーくわかった。毎日何かを続けることができるというのはそれだけで素晴らしい。


『もちぬし』は熱と喉の痛みで魘されていた。人となるべく接触しないようにし、毎日SMSに届く通知に、今日の体温と体調を記録していく。日記は書かないのに、体調は保健所に毎日報告していることにちょっとしたおかしみを感じなくもない。

「もう菌はないはずですよ」

 と保健所の人に電話で言われても、まだ咳が止まらないのだけど、と言い返してしまい。同時に、そういうもんなのかなとも思う。後遺症と聞くとなんだか大げさなもののように聞こえるけど、治ってるはずなのに出る症状というだけだから、この言葉も思っている以上に身近なものだなと思う。

 ていうか、世の中の『遠い』と感じている言葉は、ほとんどがそう感じるだけで自分のすぐ近くにあるのかもしれない。

 気づきたくなかったなあ。

 気づかずいられるならその方がいい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る