22日目 夢のような日々

『もちぬし』がペンを置いた。

 俺は持ち主が書き込んだ日記を読む。

「今日は暑かった。仕事が終わらない。よかったことを三つ探したい。部下のあの子と会話ができた。昼ふらっと入ったラーメン屋がおいしかった。暑かったが天気は良かった。悪い気分じゃない」

 大した内容じゃないが、日記なんて気合を入れて書くものでもない。一行だっていい。ちゃんとしたものを書こうとするからしんどくなるのだ。

 俺は嬉しかった。

『もちぬし』が日記を始めてもう1週間になる。

 きっかけは些細なことだった。『もちぬし』が自己啓発本に触発されたのだ。曰く、日記を書くことは精神にいいらしい。日々あった良かったこと、嬉しかったことをアウトプットすると、心はポジティブになっていくそうだ。

 なるほど。

『もちぬし』は俺に心があることには気が付いていないが、気が付いていて、書き足してもいいって言われたら喜んで書き足したいことがある。

 何を書き足すかって?

 もちろん、「『もちぬし』が今日も日記を書いてくれて嬉しい」ってことをだ。

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