18日目 心の中で起きていることは現実でも起きる
心の中って言われても、まあ困るだろうけれど。
俺も、お前に心はあるのかっていわれたら困る。
え、どういう意味で? サイコパスって言いたい? それとも日記帳に心があるのかみたいな哲学的な話してる? ってな。
とりあえず、ここでは日記帳にも心はあるし、世の中のモノたちにも心はあるっていう、まあ、そういうルールで行こう。
頼むよ。
それと、多分俺はサイコパスではない。
さて、今日のことだ。日記だからな。
棚に並んでる心理学の本のやつに、「『もちぬし』の代わりにウソの日記を書いている」って言ったら、心理学の本が「それはいいね」と表紙を揺らした。
「何がいいんだ?」
「……日記を書くと明るくなったりストレスが発散出来たり、心にいい影響が出るらしいよ。僕に書いてある」
「へぇ。俺も存外『もちぬし』の役に立ってるんだな」
「……『もちぬし』が書かないと意味がない気がするけど」
「なんか、俺が明るくなってストレスがなくなったりしてる気がしてきたな」
「単純。それ、『もちぬし』が日記を書かなくても気にしなくなったからじゃない?」
「それ、いいことなのか?」
他愛もない雑談だったが、心理学のやつから俺が『もちぬし』の役に立つ具体的な話を聞けるのは楽しかった。
「ウソでもいいのかな」
俺の何気ない質問に、心理学は答えた。
「さあ、僕には書いてないね。でもキーにはいいと思うよ」
キーとはN・I・キー、つまり俺のことだ。
「どうして?」
「目も耳も体の感覚も総動員して行ったイメージトレーニングは、実際のトレーニングと同じくらい効果があるんだって」
「俺は別にトレーニングはしてない」
「日記を書くって似たようなものじゃん?」
「そうか?」
「キーはきっと『もちぬし』に似ていくんだよ」
その会話は、それで終わりだった。
俺は心理学のやつの言葉にどんな感情をもてばいいのかわからなかった。
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