13日目 意志を持った物は夢だって見る

 まず自分が寝ていたことに驚いた。

 俺みたいな存在でも寝ているんだなと意識したのは初めてだったからだ。普通、物は寝ない。ただ在るだけだ。けど、意志を持つようになると、自分を自覚するとどんどん人間に近づいてくるらしい。時間が連続するものだと理解すると同時に、時間が不規則に飛んでいることに気づいた。そして今、ああ、寝ていたのかとふと湧いて出るように実感した。

 寝ていたことに気づいたのは、夢を見ていたからだった。

 まあ、これが支離滅裂な夢で、俺は人間になってシーソーみたいな遊具で遊んでいるようだった。

 説明が難しいな。遊園地にあるような、そうだな、円周を上下に移動しながら動くアトラクション、ちょうど、シーソーが支柱を中心に回転するようなアトラクションだと思ってもらえばいい。くるくる空中ブランコのシーソー版とでもいうか。

 俺はまだ人間の体に慣れていなくて、『もちぬし』たちと並んで立っているだけで浮ついていた。係員の人が何かを説明しているのを一生懸命聞いているんだが、全然頭に入ってこなくて、いざ俺の番が来てシーソーに座っても何をしたらいいかわからなくて。

 なんかそれは不思議なアトラクションでな?

 上下に動く椅子に座って回っている間も、係員から指示が飛んでくるんだよ。

 片足を上げろとか、安全バーを上げろ、とか。

 俺はもたもたしながらその指示に従って……従えてたのかな、あれは。

 なんか気持ちはふわふわして、全然指示通りにできてた気がしなかった。

 それで、アトラクションが終わって、椅子から降りようとしたとき、係員が駆け寄ってきて、俺に一枚の紙を渡したんだ。

 その紙には「モグストー」って書いてあった。

 マジで意味がわからなかったな。あれは。

 近くにいた『もちぬし』がそれを見て笑ったんだよ。

「モグストー」は一番下手だったやつに渡されるんだ。だってさ。

 なんでそんなことするんだって思ったし、『もちぬし』の手前、やっぱり恥ずかしかったし、逃げ出してしまいたくなって。

 で、起きたってわけだ。

 まず、自分が寝ていたんだってことに気づいて、驚いたよ。

 変な、おそらく何の意味もない夢だけど、モノにすぎない俺だけど、こうして日記を書いて『もちぬし』の真似をしていたら、夢だって見るんだなって、そう思ったんだよな。

 今日の日記は、ま、それだけの話なんだ。

 

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