第6話 ガソリン臭は興奮する?
「水がたっぷり補給できたのは良かったな」
「うん。あたしの下着もあったし」
「あったな。何で道の駅の売店にGカップのブラがあるのか謎だけどな」
「ブラもだけど、ショーツもね。可愛いのがたくさんあったよ」
「見せるな」
「いいじゃん。これ、日本製だよ。ワコールだよ。あたし、こんな高級品身に着けた事ないよ。これは自分じゃ買えない憧れの一品です」
「近所に下着メーカーの工場があったみたいだな。店頭の在庫がそのままになってたのはラッキーだった」
「少し気が引けるけど」
「気にするなよ。支払おうにもレジの電源は入ってないし、店員さんもいないしな」
「だよねえ。でも下着破くのは嫌だから、次に
「あ……そうだね。その時は俺、後ろ向いてるから」
「見てもイイのに。さっきはガン見してたでしょ?」
「ごめん。咄嗟の事で視線を逸らせなかった」
「気にしなくていいよ。さあ、出発だ!」
「ああ。ガソリンも補給しときたいからスタンド探すよ」
「うん。あ、そこ、右にあるよ、そこそこ」
「見えた。行ってみような」
「近くで良かったね。埃だらけだけど、機械は壊れてないね」
「そうだな。ここを開いてハンドルをつけてっと」
「あー。手動で給油できるんだ」
「まあな。腕力さえあれば、停電しても怖くない」
「へえ。じゃあさ、ハンドル回すのは私がやる。アンタはノズルを穴に突っこみなよ」
「エリちゃん、その言い方、ちょっと卑猥じゃないの? 穴に突っ込むとか」
「そういうのは気にしたら負け。貴重なガソリンだから無駄にできないよ」
「そりゃそうだが。レギュラーガソリンの単価が258円だと。やっぱ高いな」
「EV(電気自動車)化が進んだからなのかな?」
「うん。ガソリンの小売価格をあえて高くして、EV化を促進したんだけどね。でも、全部がEVになったら電力不足になるから、何やかんやでハイブリッド車とガソリン車は生産を継続させたらしいよ」
「そうなんだ」
「だからガソリンも普通に売ってる。単価は高いけどね」
「なるほどなるほど……でも、この揮発油の香りが……イイね。凄くそそる。興奮するよ」
「吸い過ぎるなよ。酔っぱらって中毒症状を起こすからな」
「うん、知ってる。でも興奮する」
「うわあ! 携行缶ひっくり返しちゃった」
「ああ。もったいないなあ。これ全部舐めちゃいたい」
「やめとけって……ヤバイ。風下から熱源が二体、接近中」
「何も匂わないけど……あ、風下か」
「ガソリン臭で鼻が馬鹿になってないか?」
「そうかも……あれれ。あれは熊だね。熊獣人だ」
「だな……って、下半身のアレ、デカすぎないか?」
「やだあ。もうガチガチに勃ってるじゃん」
「まさか、エリちゃんに欲情してる?」
「いや、ガソリン臭でしょ。熊は大好きみたいだし。この下品な熊野郎はあたしがぶっ飛ばしてやる」
「ちょっと待って。こいつらは俺がやる」
「アンタ大丈夫なの? 肌は金属製だけど、体形は華奢で情報用って感じだよね」
「ふふふ。金属製って事は戦闘を考慮してるって事さ」
「ええーっと。ガンバレー」
「うわあ。走ってきた。速すぎだ」
「獣人はそんなもんだって。あたしが代わろうか」
「まかせろ」
「うわ! 飛んだ! 脚にバーニアが付いてたんだ。って熊公、あたしに突進して来たんですけど」
「心配ない。おりゃ!」
「すご。レーザービームだよ。あらら、二体とも頭に大穴が空いちゃった」
「見たか? 俺には古のサイボーグコミック的なギミックが仕込んであるんだ」
「カッコいいね。じゃあ、加速装置は付いてるの?」
「無い。あんなものが開発できるわけないだろ? 時間操作するんだぞ」
「そっか。無いのか」
「残念そうな顔するなよ」
「うん。じゃあ出発しようよ」
「わかった」
二人の乗ったサイドカーは北へ向かって走り始めた。
現在位置は熊本県。彼らは佐賀県と福岡県を通過して関門大橋を渡り、山口県へ向かう予定である。
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