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「しぃちゃん、おはよ」


「おはよう、リアン」


 向日葵ひまわりは、怪訝な表情を浮かべるときの視線を気にも止めず緋葉あかばに笑顔で挨拶をする。

 緋葉あかば向日葵ひまわりに微笑むと挨拶を返した。


「取り敢えず、向日葵ひまわり冬樹ふゆきと庭で先に食べててくれ」


「むー、例の屋上ってところで食べればいいじゃん!」


 ときの言葉に、向日葵ひまわりは眉を寄せると頬を可愛らしいハムスターのように膨らませる。どうやら自分も話に加わりたいらしい。こうなった向日葵ひまわりはなかなか言うことを聞かないので、どうしたものかと考えていると、緋葉あかば向日葵ひまわりの頭を撫でた。


「それじゃあ、リアンも私の相談聞いてくれるかしら?」


「は?」


「え?いいの?」


「えぇ、リアンさえ良ければお願いできるかしら?」


「うん!ありがとう、しぃちゃん!」


 緋葉あかばの言葉に、向日葵ひまわりは満面の笑みを浮かべると嬉しそうに体をソワソワさせる。

 そんな向日葵ひまわりの様子に、緋葉あかばは微笑を浮かべると視線をときへと移した。


「じゃあ二人とも、お昼休み屋上によろしくね」


 緋葉あかばは手を軽く振ると、踵を返して教室を出た。

 緋葉あかばの背中を見送り、姿が見えなくなると深いため息をつきジト目で向日葵ひまわりを見つめる。


「何で向日葵ひまわりまで来る事になるんだ……」


「だって、ときとしぃちゃんが二人きりとか嫌だもん……」


「何で嫌なんだよ?」


質問に対し、向日葵ひまわりは頬を赤らめて視線を反らす。ちらちらと視線を送る向日葵ひまわりに疑問符を浮かべていると肩を軽く叩かれる。

 振り返ると、冬樹ふゆきがキョトンとした表情で立っており小首を傾げていた。


「二人して何の話してるの?」


「あ、ふゆちゃん、お昼ごはん屋上に集合ね」


「屋上って……何処の?」


「あれ?そういえば何処のだろ?」


 向日葵ひまわりが、助け船にすがるようにときを見つめる。どうやら何も分からずに付いていこうとしていたようだ。

 ときは、更に深いため息をつく。


「ほら、緋葉あかばと初めて会った屋上」


「初めて……あぁ、あの屋上ね」


 冬樹ふゆきは記憶を思い出すと納得したように頷き、自身の席に座ると二人へと体を向けた。

 その直後、背筋に身に覚えのある寒気が走る。

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