5

「ところで……札と同じってどういう意味だ?」


 ときは、疑問に思っていたことをオムライスを食べながら聞いてみた。

 質問に対し、白羽しろはは考える素振りを見せると、拳を手の平にポンッと軽く当て説明する。


「分かりやすく言うと……玉がお札の効力を持ってる……それを当てて解放させる……」


「お札で解放って、幽霊みたいなのを成仏させるのか?」


 質問に対し、白羽しろはの表情が一瞬曇ったが直ぐに無表情になった。

 そんな白羽しろはの変化にときは疑問符を浮かべる。


「幽霊と言えば幽霊ですね」


 ライトが白羽しろはの代わりに答える。


「ふぅん……」


 ときは、昨夜の事を思い出した。

 白羽しろはの向かいにいた血だらけの女性は幽霊だったのだろうか?

 その割りには途轍もなくリアルで気味が悪く、血の匂いまでも感じた。それ以前に自身に霊感があるとは思えないため、どこか腑に落ちない。


「それよりも学校、大丈夫なんですか?」


 ライトは時計を指差して小首を傾げる。

 時計は8時をとうに過ぎており、20分になろうとしていた。


「やばっ!普通に遅刻する!」


 慌てて立ち上がると食べかけの皿をシンクまで持っていき、何処から取り出したのか眼鏡をかける。

 ライトは食事を中断すると、立て掛けていたときの鞄を手に取り、ときへと差し出すと玄関まで歩いていく。

 そんなライトの後を、同じく食事を中断した白羽しろはが追いかけ付いていく。

 ときは、2人を尻目に玄関まで走っていくと靴を急いで履いた。


「取り敢えず、また食器頼む。後、洗濯も出来れば頼むな。それと白羽しろははどうするんだ?」


「私もここ……いる……」


「学校は?」


「私……学校行かない……」


 白羽しろはは、ライトの服の袖を掴むと怖がる猫のように後ろに少し隠れる。どうやら学校に行きたくないようで、気の優しいライトに隠れる事で抵抗の意思を示しているようだ。

 学校に行かないことに疑問を感じたが、今は時間がないため深くは追求せず小さく溜め息を付いた。


「じゃあ、二階の花柄の札がかかった部屋使って良いから」


「ん……ありがと……」


 白羽しろはは、少し嬉しそうに頷く。表情は無表情だが、雰囲気で何となく分かるのでまるで動物と接している感覚になる。

 次にライトへと視線を向けると呆れ気味に言葉を続けた。


「おまえも、隣の部屋使って良いからちゃんとベッドで寝た方がいいぞ」


「私は別にソファーでも、」


「ちゃんとベッドで寝ろ」


「……分かりました」


 ときの念押しに、ライトは素直に頷く。

 二人から理解を得ると、交互に見つめた後に玄関のドアを開け、急いで学校に向かった。





残り約135時間

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