3

 出来上がった料理を、ライトが並べてくれた皿に盛り付けていく。

 ビフレストの魚ごはんをテーブルの横に置くと、ビフレストはすぐさま駆け寄ってきてガツガツと食べ始めた。

 全員が席に着くと、手を合わせて食事を始める。


「で、さっきの話だけど」


 ときは、スプーンを持つと同時に話を切り出した。

 一方ライトは、スプーンを持ったものの口には運ばずオムライスを見つめている。

 2人が沈黙する中、少女だけがオムライスを美味しそうに食べていた。


「話したくない事もあるのは分かるが、俺も関係がある以上話してほしいんだが」


「……そうですね」


 ライトは、口を開くと一口オムライスを食べた。


「成就の話と、私と貴方との関係性を知りたいんでしたよね?」


 ときが頷くと、目を伏せたままゆっくりと話し始めた。


「貴方は、願いが叶う本があると言ったら信じますか?」


 ライトが質問した直後、少女の手が止まる。

 ときは少女を一瞥した後、首を横に振った。


「正直、そんなのがあるんだったら皆幸せになってるだろ」


 ライトは、またオムライスを食べると何処か寂しげな雰囲気になった。

 そんなライトを見て、ときは何とも言えない感情が芽生えたため誤魔化すようにオムライスを口に運ぶ。

 少女は、自分を諭すように胸に手を当てて呟いた。


「ある……願いを叶える本……でも…叶うから幸せとは限らない……」


 初めは信じなかったが、二人の冷たい空気を纏う様子から本当なのだと悟った。


「その本が関係あるのか?」


 ライトは、スプーンを置くとときを見つめた。その視線は何処か力強く、そして冷たいものだった。


「その本は強い願いがある時、その者の前に現れます。そして願いを叶えてくれるんです」


「ふぅん……でも、それってそれだけじゃ終わらなそうだな」


 興味なさげに返事をすると、再度オムライスを頬張った。叶えてくれる事は良い事なのかもしれないが、魔法のように叶えてくれるのなら少女の言った『幸せとは限らない』という言葉は出てこないだろう。

 ライトは、表情を変えず話を続けた。


ときさんの言うように願いを叶えて終わりではないです。確かにどんな願いも叶いますが、願いを叶える代わりに対価を支払わなければなりません」


 ライトが言うにはこう言う事らしい。

 その本は、強い願いがあればその者の前に現れて願いを叶えてくれるが、願いを叶えると同時に対価を支払わなければならない。その対価はさまざまらしいが、どれもその者にとっては大切なものだという。

 大切なものと引き換えに願いを叶えるとは、何とも皮肉な話だ。

https://kakuyomu.jp/users/CielA4/news/16817330663674624504

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