Book of Time

2

「知り合い以前に、何で居るんだって話なんだが？」

「何で私を見るんですか？」

「主犯はお前しかいないだろ」

　ジトッと見つめると、不思議そうに見つめる少女に視線を移した。

　少女は、何が駄目なのか分からないといった様子だ。

「で？何で居るんだ？」

　少女は、ライトに視線を一瞬移したあと姿勢を正した。

「ワインレッドの瞳の情報……聞きに来た……」

　発言と共に少女の瞳が何かを射ぬくように鋭くなる。

　鋭い視線に、時（とき）は自然と体が強ばるのを感じた。だが、悟られぬように冷蔵庫に向き直り卵などを取り出していく。

「悪いがまだ見つかってない。てか俺の家を知ってる方がよっぽど不思議に感じるんだが」

「それは私に原因があるからですよ」

　少女と時（とき）との間にライトが話を挟む。

　時（とき）は、振り返ると交互に二人を見つめた。

「どういう意味だ？」

「前にも言いましたが、私は貴方自身です。即ち一人の魂が二つあることになります」

　少女は、こくこくと頷く。

　ライトは、更に説明を続けた。

「本来、個々の魂とは一つしか存在できません。しかし、私達は願いの成就によって二つの魂が存在してしまったのです」

「言ってる意味が分からないんだが？何が言いたいんだ？」

　時（とき）は、意味が分からないといった様子で眉間にシワを寄せる。

　魂が二つ存在してしまったことは分かるのだが、その根本的な原因の願いが成就したからだとういう部分がまったく理解できない。

「そもそも成就した事と、家が分かった事とは何の関係があるんだ？」

「この少女は願いの成就に関わっているから、同じ関わりをもつ者の個々の波動を感知できるんです。同じ波動を持つ二つの魂があれば不信がるのも無理はないですよ」

　少女は、更にこくこくと頷く。

「しかし、時（とき）さんの魂は消えかかっています。だから、同じ波動を持つ私を頼りに此処へやって来たんですよ」

「キミの魂を頼りに来るの……大変……」

　時（とき）は暫く考えると、ため息をついて少女を見据えた。

「つまり、ワインレッドの事は次いでで、本命は何故一つしかない魂が二つあるのか確認しに来たんだな？」

　指摘した直後、少女はそわそわしたと思ったらソファーに隠れそっと頭を出しこくりと頷いた。

　少女の動きに一瞬疑問符を浮かべるが、直ぐに理解した。どうやら図星の動きだったらしい。

「とりあえずその成就とやらの話と、俺自身だと言うおまえの話、飯食いながら話してくれよ」

「…………」

　ライトは、目を伏せたまま答えなかった。

　そんなライトを尻目に、時（とき）は料理を作り始めた。