11

「みゃあ~」


 ご飯を食べ終わったビフレストは、ときの膝を土台に机の上にジャンプすると、傍にあったカレーをペロリと舐めた。


「こら!死ぬ気か!」


 ときは、慌てて抱き上げようとするがビフレストはスルリとかわし、机から降りるとなにくわぬ顔で毛繕いを始める。

 ときは、コップの水を皿に移すとビフレストに差し出した。


「とりあえず水飲んどけ……」


 ビフレストは尻尾をユラユラ揺らしながら近寄ってくると、舌を出しペロペロと飲みだした。

 そんな光景を、向日葵ひまわりが意味深にジッと見つめているのに気づき、不思議そうに見つめ返した。


「向日葵も欲しいのか?」


「私、猫じゃないよー!もう!」


 向日葵ひまわりは頬を膨らまし不機嫌そうな顔になったが、すぐに眉を下げた。


「……ただ……ただ、ときは誰にでも優しいんだなって……」


 ときは、ビフレストを見たあと向日葵ひまわりを見つめた。意味が分からないといった感じだ。


「時ちゃ~ん、アイスクリーム買い忘れてたから杏仁豆腐でいいかな~?」


 不意にはなさんが台所から申し訳なさそうに杏仁豆腐を乗せたお盆を持って現れたので、二人の意識がそちらに向く。


「いえいえ、ありがとうございます。」


 ときは、席を立ち上がるとはなさんからお盆を預かる。1つだけ大きなお皿があり、ででんと杏仁豆腐が乗っているためかかなりの重さだった。大きい皿はときの分だ。

 向日葵ひまわりは、杏仁豆腐を見ると驚いた表情を浮かべた。


「これ、ときが気にしてた数量限定のフルーティ味だよ!」


「いいんですか?」


 はなさんは、頬に手を添えながらにこやかに微笑んだ。


「勿論よ~ささ~席についてついて~」


 一同は、席に着くと杏仁豆腐を食べ始める。何気ない食事も誰かと食べるとやはり楽しいものだ。

 あれやこれやと話をしながら時間が過ぎていき、食べ終わる頃には22時を回っていた。


「初めて食べたけど美味しかった~」


「そうだな」


 ときは、お盆に皿を乗せて片付けていると背後でガチャンとなにかが倒れる音がした。

 振り返ると、ビフレストが棚に置いていた何かを落としたようで下には少し分厚い木の板のようなものが落ちていた。


「ビフレスト!」


 ときは、慌てて駆け寄り落ちていたものを拾い上げた。

 ビフレストは、ビックリしたように更に高い棚の上にジャンプして逃げた。

 木の板のようなものを見てみると、アンティーク調の置時計でキラキラと硝子細工が煌めいている。


「す、すみません……壊れたかな……」


 はなさんは、時計を見下ろすとふわりと笑みを浮かべた。

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