7

 食堂前につき、ドアを開けようとすると鈍い音をたてるだけで開かなかった。

 いつの間にか鍵をかけられていたようだ。恐らくは宿直の先生か誰かが開けっぱなしになっていたのを、閉め忘れと勘違いして鍵をかけてしまったのかもしれない。こんな時間なので仕方ないといえば仕方ないのだが。

 他に開いてる所は無いか探してみると、上の小さなドアが開けっぱなしになっていた。


「不用心だが今は有り難いな」


ときはドアから少し離れると助走をつけジャンプし、よじ登って何とか入る。

鞄はそのままの状態だったので、すぐに見つける事が出来た。

走って近づくと、椅子にあの白猫がこちらを見つめたまま座っていた。


「あれ?そういやいつの間にか居なくなってた……」


「みゃー」


 白猫は、鞄をくわえると走り出して先程のドアから出ていってしまった。


「あ、こら!」


 ときも慌てて追いかけて行く。

 あんな小さな体で鞄をくわえながら走るってどうやってんだ?

 走りながら考えてみるが、全く分かりそうもない。

 そうこうしていると、白猫は塀を登り屋根に飛び乗ると振り返った。


「んゎう」


「………ついてこいってって言ってるのか?」


 ときの言葉に、白猫はまた走り出した。

 ときも、その後を必死に追いかけて行く。何とか追いかけていくも、白猫に追い付くことはなく、白猫はサクサクと先へと進んでいく。、


「……はぁ……はぁ……せ、せめてもう少し……はぁ……柔らかい道だと有り……がたいん……だ……がな…」


 先程から屋根伝いや崖のような塀、川の石にと人ならざる者が通るような道ばかりでときの体力も限界に来ていた。足に力が入らなくなり、白猫との距離が少しずつあいていく。


「も……もう……無理だ!」


 そう叫んだとき、白猫が急に止まりこちらを振り返った。


「ちょっ……っうわぁ!」


 行動が追い付かず、体を捻り何とか白猫を交わすが、バランスは崩れ足元の植木鉢につまずくと、そのまま塀の向こう側へ倒れ込んでしまった。

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