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 少女は、チラリと自身の太股に視線を移すとときを見据えた。


「教えない……秘め事……内緒……arcanum《アルカヌム》……」


「アルカ?……てか何で何回も言うんだ……」


 ときの呆れたような言葉に、少女は名探偵が良くするようなポージングをすると暫し考え、言葉を紡ぎだした。


「arcanum《アルカヌム》は秘密って意味……何回も言うくらい秘密……」


「…………」


 なんとも簡潔だった。

 言葉数といい、少女との会話はあまり望めないと判断したときは、ふと向日葵ひまわりとの約束を思い出し、慌てて時間を確認すると、いつの間にか19時をとうに回っていた。


「やばっ!」


 走っても間に合うか厳しい時間だ。このままでは向日葵ひまわりが心配して家に来てしまう。近場とはいえ、こんな時間に向日葵ひまわりを外で待たせるわけにはいかない。


「……?。どうかした……?」


 少女は、理由が分からずボ~と首をかしげている。


「悪いがこれから用なんだ。何かあったらまたここに来るから、今日はもう解散な」


 ときは、白猫を引っ掴んで慌てて食堂に走り出した。さっきの騒動で鞄を食堂に起きっぱなしになっていたからだ。

 少女は、まだ何か言いたげだったが慌てていたときは気づかなかった。

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