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 草木や花が風に揺れ微かな匂いが鼻をつく。いや、他にも匂ったことない香りが混ざっていた。鼻を突く嫌な匂いで、本能的に嗅いではいけない匂いのように感じた

 更に奥を見つめてみると薄暗くてよく見えないが金色の瞳がこちらを静かに見つめていた。


「っ!!」


 目が合うと心臓がこれでもかというほど高鳴ったが、金眼の主が姿を表すと力なくへたりこんだ。


「みゃあ~みゃあ~」


 黒猫だ。どこから入ってきたのか分からないが、野良猫が迷い込んでしまったようだ。しかもかなり小さく、まだ半年といったところだろうか?

 黒猫の体は、何処から見ても母猫とはぐれてしまったような子猫だった。


「はぁ……」


 ときは、胸を撫で下ろすと額の汗を拭った。

 黒猫は毛繕いをすると、可愛らしく体を伸ばしときの手を舐めてくる。どうやら人馴れしているようだ。


「はぁ……たく、人騒がせだな」


 ときが黒猫の頭を優しくなでると、くすぐったかったのか離れてしまった。


「みゃあ~」


「とにかく見つかるとヤバいし、俺ん家に今日は泊まってくか?」


 返事は期待せず何気なく聞いてみる。


「みゃおん」


 黒猫は、暫くすると変わった鳴き声をあげた。

 ときは一瞬驚くが、直ぐに微かな笑顔を浮かべ黒猫に近づき抱き上げる。

 黒猫は大人しく抱かれ、ゴロゴロと喉を鳴らしている。


「どっちにしろ暗いし、明日母親探して、」


 鞄を取りに行こうと踵を返すが、何かが視界の中に写り横に流れていく。


「…………」


 今は、横を向いているため『何か』は横に居る。恐る恐る横を見てみる。

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