4

 月夜に照らされた『何か』は、静かに此方を振り返る。

 サラサラとした長いクリーム色の髪は、月の光で微かに光を帯び、風に身を任せ綺麗になびいている。白と黒のゴスロリ服のような服を着ており、襟はセーラーを思わせる形になっていて胸当てには金色の十字架の刺繍が施されている。袖は下に行くにつれて広がっており、ふくらはぎの半分ほどまでの長さの白のスカートは左右後ろに黒の長い布と、その上に重なるように短い布が白のスカートを包むようになっており風に身を任せるように広がっている。長い黒の布は、途中で後ろに垂れている黒い布と繋がるように結びつけられている。

 此方を向く瞳は、左は白い眼帯をつけており、右目は今抱いている黒猫の様に金色に光り、静かにときの姿を写し出していた。


「…………」


「…………」


 二人の間には沈黙が流れ、黒猫の鳴き声だけが異様に大きく聴こえてくる。


「…………」


 少女がゆっくりと此方を振り向くと、隠れていた向こう側が見えた。


「っ?!!」


 少女の向こう側には、幹にもたれ掛かった血塗れの女性とおもしき人が今も血を流しながら死んでいた。

 少女の方は手ぶらで服は血にまみれて、白色の布との色彩に異様さが際立っている。

 ときは身の危機を感じ、足音を消しながら後退していく。


「…………」


 少女は動じることなく、無感情な表情でときを見つめている。


「みゃ~んみゃ~ん」


 何故か、黒猫は少女に向かい鳴き続ける。

 少女は、黒猫に視線を移すと微かに目を見開き、足をゆっくり前に出した。

 ときは、黒猫を庇うように深く抱き締める。


「……ラグ……」


 少女は、手を滑らかに前に出すと黒猫に呼び掛けた。

 すると、黒猫はときの腕をすり抜け少女の足に歩いていき頭をなすり付ける。

 少女は、そんな黒猫を抱き上げるとときに視線を戻して近づいてくる。

 ときは、反射的に後退し構えてしまった。

 そんな行動に少女は、一瞬体を微かにそらすが直ぐに戻した。


「何もしない……」


 少女は、黒猫の頭を撫でながら言葉を発した。

 だが、ときは力を抜かず構えを解くだけに止まる。何故なら、少女は黒猫以外手ぶらなものの、服には確かに血が飛び散り、後ろには死体があるからだ。


「キミにはこの死体が見える?」


 少女は、死体を指差すと微かに首をかしげる。


「…………」


 ときは、どう答えようか戸惑う。何故自分にそんなことを聞くのか、少女の考えが全く分からない。そもそも、見えるとはどういう意味なのか?


「あんたは、何者だ」


https://kakuyomu.jp/users/CielA4/news/16817330662219220675

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