ChaT-猫-

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 放課後になると一日の疲れが押し寄せ、ときは誰もいない広く薄暗い食堂の椅子にもたれ掛かりながら天井を見上げていた。

 この学園の食堂は近代的な建物とは裏腹に、ほんのりとアンティーク調があしらわれており、海外の雰囲気を彷彿とさせる作りだ。しかし、外観自体はデザインセンスの賜物なのか雰囲気が合っている。椅子やテーブルなどもアンティーク調を少し意識しており、椅子にはレザーのクッションまで備え付けられ、それらを学生の半分は収容できるであろう広間にお洒落に配置されている。キッチンなどのシステムも最新鋭を搭載しており、学食メニュー等も豊富に取り揃えられるようになっている。

 そんなデザイン的な空間で遠くから人の話し声が聞こえるが、心地いい眠りは来そうにないようだ。


「はぁ……」


 体を起こすと、鞄から一枚の手紙を取り出し中身を確認する。白い封筒には可愛らしい黒猫のシールが封をしており、中の便箋は薄ピンク色をして何とも可愛らしい手紙だ。


゛放課後、食堂で会えませんでしょうか?

どうしても伝えたいことがあります


宜しければ18時に待ってます


From.〟


「…………」


 手紙には差出人の名前がない。

 放課後に身支度をしていると、鞄の中にこの手紙が入っている事に気がついた。向日葵ひまわりは職員室に用事、冬樹ふゆきはボード消しをしていたため二人にはまだ知られていない。

 差出人不明なことから悪戯とも考えたが、一人になりたかった時は『教師に呼び出された』という口実ついでに食堂に来たのだ。


――伝えたいことって何だ?


 差出人が書かれてないので相手は分からないが、向日葵ひまわり冬樹ふゆき以外とは必要最低限の付き合いしかなく、全く心当たりがない。手紙の可愛らし感じから女性の可能性が高いが、普段から暗い雰囲気の自身に、手紙を出してまで内密に話せる女子生徒がいるとは思えない。


「緋葉は手紙なんか出さない気がするし……」


 自殺の目撃者であるときだけに伝えたい事があるというなら納得いくが、如何せん手紙の字が驚くほど綺麗なため、失礼だがなかなか想像できないのだ。しかし、何れだけ悩もうと来てしまった以上は大人しく待つしかない。


「まぁ、ここで待ってれば分かるか」


 食堂の時計を見ると、もうすぐで18時になる。外もいつの間にやら薄暗くなり人の声も無い。


 ブーブーブーブー。


「……メールか」


 ポケットからスマホを取り出し確認すると、向日葵ひまわりという文字が写し出されていた。


゛急にごめんね(;>人<)

カレー作ってたんだけどお母さんが水をこぼしちゃって、味戻ししたら沢山になっちゃったの……。

材料足すのに買い物してからだから20時くらいになっちゃうけど、持っていくから鍵開けといてね。


by.ひまわり〟


「20時か……」


 どうしようか迷ったが、20時なら早く話を済ませて走れば確実に間に合うので素早く返信を書く。


゛いつも悪いな。

夜は危ないから20時になったら俺がいく。

はなさんにもよろしく伝えといてくれ。〟


 打ち終わるとメールを送信してポケットにしまい、時計を見る。

 18時は少し前に過ぎていた。

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