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 冬樹ふゆきは急いで体操着に着替え、体育館に向かうと向日葵ひまわりが扉で待ってくれていた。冬樹ふゆきの姿に気づくと元気に手を振る。


ふゆちゃーん!」


向日葵ひまわり早っ!女の子って普通遅いんじゃ……」


「むー!私、女の子だもん!」


 可愛らしくふてくされる向日葵ひまわりを、まぁまぁと苦笑しながら宥めていると、ある事に気がついた。


「ところでときはどうしたんだ?」


 冬樹ふゆきは、辺りを見回しながら話題を変える。

 皆、体育館に入っているのか周りには誰もおらず、冬樹ふゆき向日葵ひまわりしか居ない。

 不思議に見回す冬樹ふゆきに、向日葵ひまわりはニッコリと笑顔を浮かべた。


ときなら彼処にちゃんと繋いでるよ♪」


 向日葵ひまわりの指差す方を見てみると、階段に人影が見えた。

 体育館の中には上の照明や舞台管理へ続く少し錆びた鉄の階段があり途中で無くなっているのだが、その階段をよく見てみると鎖が巻かれており、鎖の先には腕を上に縛られ吊り下げられたときがいた。


「んん゛ー!!!」


 口は布で巻かれているため上手く言葉がでないようだ。


「…………何あれ……」


 冬樹ふゆきは、真っ青になりながら尋ねる。


ときが逃げ出さないように持ってた鎖で繋いだの」


 向日葵ひまわりは、子供のような無邪気な表情で答える。

 鎖を常備している事にツッコミみたかったが、真実を知りたくないというのが本音だったので敢えて黙っておく事にした。


「とりあえずときをどうにかしない?あれじゃ色々ヤバいからさ……」


「うーん……じゃあ体育倉庫に移そっか」


「それはもっと駄目だから!」


 行動に移そうとする向日葵ひまわりを慌てて止める。

 『どうにか』を『見つからないように』と解釈してしまったようだ。

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