9

 その頃、ときは自殺のあった寮の場所を生徒から聞き出し向かうと辺りを見回し息を切らしながらも叫んだ。

 自殺のあった女子寮は中庭を介して校舎とは離れており、建物は男子寮と同じだが色がクリーム色で白色の男子寮とは色の違いがある。

 寮では、県外や訳アリで寮暮らしをしなければならない生徒などが暮らしており、男子寮と女子寮にて分かれている。

 建物は校舎と同じく近代的なデザインになっており、何もかもが最新鋭の技術や設備が整っている。

 そんな寮の玄関前でときは立ち止まって目的の人物を探していた。


緋葉あかばー!緋葉あかばどこだー!」


 少し待ってみるが返事はない。辺りは静まり返っており、警察や職員の姿も見当たらない。走り続けたせいで喉に痛みがあったが、構わず叫んで緋葉あかばを探す。


緋葉あかば!いるなら返事しろ!緋葉あかばー!」


 帰ってこない返答に、ときは焦っていた。

 死んだならもう病院なのでは?

 そう思ったとき上から聞きなれた声が叫んだ。


「ちょっとあなた!人の名前を大声で叫ばないでよ!」


 ときは、慌てて上をみると緋葉あかばが寮の屋上から、こちらを見下ろしていた。

 ときは、慌てたように寮に走っていく。

 暫くすると屋上のドアが開き、ときは、縁にいる緋葉あかばに向かって走って行くと自身の方に引っ張り二人は転がる。


「きゃっ!」


 ときは、起き上がるとは叫んだ。


「だから簡単に死ぬんじゃねぇて!だいたい寮から飛び降りなん……て…………え?」


 ときは、生きている緋葉あかばを見て自分が空回りしていたことに気づいた。

 緋葉あかばは怪我一つ無く存在しており、怒りを露にするときの気迫に唖然としていたからだ。

 その直後、恥ずかしさと安堵が一気に押し寄せてくる。


「離しなさいよ、この変態!」


 緋葉あかばは、今朝と同じくときを突き飛ばすと立ち上がった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る