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 教室に入ると、生徒達がざわめいている事に気づいた。

 怪訝に見つめていると、二人の姿に気づいた冬樹ふゆきが慌てた様子もなく近づいてきた。


「二人とも遅かったね」


ふゆちゃん、何の騒ぎなの?」


 冬樹ふゆきは、チラリとときを見た後、向日葵ひまわりに視線を落としながら事の次第を説明した。


「ほら、今朝グラウンドに変な着ぐるみがいたでしょ?」


「うん、いたね」


「なんか先生が向かったら消えたって話で…。その事について噂が出回って大騒ぎになったから、その対策についての話し合いでニ講目は自習なんだって」


 向日葵ひまわりは『やった!』と言わんばかりの笑顔を見せた。次の授業は、向日葵ひまわりの苦手な歴史の為、無くなる事は嬉しい事なのだ。


「それだけか?」


 先程まで黙っていたときが、質問を投げ掛けると冬樹ふゆきは時を見据えた。


「さっすがときだね」


「え?何かあるの?」


 向日葵ひまわりは、分からないと言う感じで二人の顔を見合わせる。

 ときは、冬樹ふゆきの顔を見つめていたが、ため息をつくと面倒くさそうに話を続けた。


「本当は何で自習なんだ?」


「うーん、よくは知らないけど……その、すぐ後に自殺があったらしい」


「「?!」」


 冬樹ふゆきの言葉に、二人は息を呑む。

 話によると、着ぐるみが現れて先生が慌てて向かったが近づいた直後消えたと言うのだ。

 そのすぐ後に、FAXに一通のメッセージが送られてきた。内容は内密との事でわからないが、その後、少し先の4階だての寮から、一人の女子生徒が転落死しているのが発見されたらしい。

 女子生徒は即死だったようで、遺体の状況から屋上からの転落という事になり、警察が屋上一帯を調べたが、とくに不審な点は見当たらなかったという。その為、女子生徒は自殺だと判断された。


「その転落した人って……この学園の生徒だったんだね……」


「そうみたい……」


 向日葵ひまわりは青ざめながら呟くと、冬樹ふゆきも小さく頷いた。


ーーこの学園の……?


 ときは、二人の会話を聞いて、ふと今朝の自殺志願者の事を思い出した。

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