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 向日葵ひまわりに引かれ、駆け足で自販機へと向かう。

 自販機は、ときのクラスからだとかなり遠く、校舎を降りて、渡り廊下を進み、食堂を抜けて行かなければならない。何故なら近くの自販機は、校舎の改装で、生徒の安全を考慮し自販機が取り払われているからだ。

 何とか自販機に到着すると、向日葵ひまわりはポケットから兎のような形のがま口財布を取り出し、小銭を自販機に入れながら鼻唄を歌いつつ、いちごオ・レのボタンを押す。


「相変わらず、いちごオ・レ好きだな」


「えへへ、だって美味しいんだもん」


 向日葵ひまわりは、満面の笑みを浮かべるとストローを口に入れる。

 ときも財布を取り出すと小銭を入れ、カフェオ・レを買う。


ときこそ、カフェオ・レ好きだね。でも牛乳飲まないとふゆちゃんには勝てないよ?」


「ぐ……い、良いんだよ!俺は、カフェオ・レで!」


ときは、目をそらしながらカフェオ・レを飲む。


――何で、向日葵ひまわり知ってんだよ……


冬樹ふゆきは背が高く、顔も整っているのでクラスでもかなりモテる。モテる自体は興味は無いが、スラッとした背の高さは男でも憧れてしまう。

 ときは、牛乳が苦手なので仕方なくカフェオ・レを飲み続けているが、あまり効果はないらしく160cmちょいしかない。女の子の向日葵ひまわりよりは少し高いが、冬樹ふゆきとの身長差を考えると、突かれる度に純粋に傷つく。


「大丈夫!背が低くくても、ときは十分格好いいよ」


 向日葵ひまわりは、可愛らしく笑顔を浮かべて気にしていないようだったが、明らかに重い空気のまま二人は教室に戻った。

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