5

 休み時間のチャイムが鳴り生徒たちは一目散に解散していく。

 ときは、朝から走った為か少し喉が乾いたのでジュースを買いに行こうと席を立とうとすると、向日葵ひまわりが即座に反応した。


「ふぇ?とき、何処か行くの?」


「さてはサボりか」


 冬樹ふゆきも気づき悪戯笑みを浮かべる。


「自販機」


 ときは素っ気なく返答すると、鞄からグレーの折り畳み財布を取り出し席を立つ。


「あ、なら私も行く!」


 向日葵ひまわりは、可愛らしくジャンプして席を立つ。

 が、ときは呆れたように見つめ、手をかざし制止の合図を送ると向日葵ひまわりの机の横を指差した。


「ストップ。向日葵ひまわりはmy水筒持ってきてるだろ」


 指差した先には、白いハート柄の巾着袋が鞄と一緒に吊るされている。

 向日葵ひまわりは、いつもお手製のブレンド茶を水筒に入れてきて持ってきているのだ。まだ一講目が終わったばかりなので、中にはまだまだ入っているのは誰にでも分かることだ。


「むー、ジュースが飲みたいの!ほら行こ行こ」


 向日葵ひまわりは頬を膨らますと、お構いなしにときの袖を引き二人は教室を出た。

 ときは出る間際、冬樹ふゆきが苦笑いで手を振っているのを見逃さなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る