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 ドアや窓の鍵はきっちり閉めたので侵入する「者」は皆無な筈だが、ライトは当たり前のようにここに居る。透けていれば壁を通り抜けて家に入る事は可能かもしれないが、ライトの体は透けている様子もなく、なんなら野菜すら触って触れている。そうなると目の前に居るこいつは幽霊か?魔法使いか?透明人間か?

 ときがあらゆる状況の思考を巡らせていると、ライトはそれを察したのか説明する。


「私は幽霊でも魔法使いでも透明人間でもないですよ。言ったでしょう?私は貴方自身だと」


 淡々とした口調で出会った時に話していた言葉を紡ぐ。


「あー……だったな………って説明になってねぇよ!」


 ときは叫んだ後、冷蔵庫から卵や冷凍しておいたホウレン草のおひたしを手荒に取り出した。その後は、ゴボウを取ると洗い始める。

 ライトは、ボーとその行動を見つめた。


「どーせまた「いずれわかる」とか言うんだろ?飯……お前の分も作ってやるから少し座っとけ」


 てきぱきとゴボウを洗うと、人参を次に洗い始める。

 ライトは黙って椅子に座ると、料理をするときをただ見守る。そんなライトを目尻に、ときは人参とごぼうを切っていく。


トントントントン。

トントントントン。


 リズム的な音のみが部屋に広がり、2人だけの空間はゆっくりと時間が流れるように落ち着いている。

 朝が早いからか外からの音は一切なく、開かれた大きな窓からは朝日が照らし出し、僅かに残っている木の葉が影を作り出して幻想的な雰囲気を醸し出す。

 そんな静寂閑雅な空間を切り裂いたのはときの方だった。


「なぁ……」


 ライトに声をかけたが、手は動かしたままでリズム的な音が響く。

 ライトは、ときの質問を見透かしたように目を細めた。


「何か?」


トントン……ト……。

 ときは、何処か言いづらそうな表情をすると手を止める。

 ライトは、特に表情を変えず黙って言葉を待った。

 ときは、視線を落として言葉を探すとゆっくりと言葉を紡いだ。


「……本当に……消えるのか?」


 ときは、ライトに何かを伝えるように視線を向けた。

 そんなときの視線に、ライトは見据えたまま言い放った。


「はい」


 ライトの言葉には重みも感情もなく、ありのままの真実を紡ぎだしているかのようだ。

 ときは静かに俯くと、「そうか」と小さく言って、また手を動かし始めた。

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