EncounteR-出会い-

1

 鳥のさえずりが部屋へ響き渡り、窓から差し込む光が朝を伝える。


「ん……んん……」


 ときは、カーテンの隙間から差し込む光の眩しさに手をかざし目を覚ました。

 鳥のさえずりが耳に心地よく、漏れ出る日の光は温もりを与えながらも朝の訪れを告げており、朝の訪れを身に感じる。

 眠気が残る中、ベッドの棚に置いてあるデジタル時計を確認すると時間は5時43分を表示していた。普段は6時にセットしているため目覚ましが鳴る時間ではない。


「なんだ……まだ6時前か。久しぶりに早起きしたな」


 目覚まし時計のアラームを止めるとゆっくり起き上がり、背伸びをして布団から出ると準備をしておいた制服にさっさと着替え身支度をする。

 着替え終えると机へ向かい、椅子に置いておいた藍色の革製の鞄を開け、忘れ物がないか中身を確認する。


「あ、歴史忘れてる。危なかった」


 歴史書を棚から取り出して鞄に入れると、鞄の付け根を取り自部屋を出た。

 階段を素早くおりると洗面台へと向かい、顔を洗って歯磨きをしてからリビングへ向かうと、ドアを開けてテーブルへと歩いて行き、椅子に鞄をかけてキッチンにへと向かうと、畳んでおいたエプロンをそそくさと身に付ける。


「さて、今日は早く起きたし魚のホイル焼きにしとくか。となると……人参……ごぼう……」


 冷蔵庫から必要な材料を順々に取り出していき、キッチン台に乗せていく。


ときさん料理できたんですね」


「当たり前だ。一人だから自分の……こ……と…………は?」


 聞きなれた声の方を振りかえると、そこには昨日の翠髪の青年、ライトが冷蔵庫を覗き込みながら立っていた。

 呆気に取られていたときだったが、次第に状況を理解する。


「な?!なんでおまっ?!」


 ときは、驚きのあまりに手にしてたごぼうを突きつける。

 それをライトはあっさり避けると、澄ました無表情でときを見つめた。


「危ないですよ。刺さったらどうしてくれるんですか」


「刺され!てか、なに勝手に人ん家に上がってんだよ!」


 ごぼうをキッチンに置くとライトを睨んだ。

 ライトは、ときの視線には気にもとめずキッチン台に置かれた材料をまじまじと見ている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る