3

 ライトは、疑問を浮かべるときを不思議そうに見つめた。


「はい、貴方自身ですよ。兎に角、あと179時間程の命……大切にしてください。貴方の中にある疑問はいずれ解決しますから」


 ときは、ライトを怪訝そうに見ていたが諦めたように俯いた。考えていても詳しい説明を聞けそうにないので、今はこの状況を受け入れた方が話もすんなり進むのだろう。

 ライトも、疑問は何れ解決すると言っているのだ。今は慌てる必要はないのだろう。


「わかったよ。まぁ、俺の命が短いことだけは確からしいからそれだけは肝に命じとく」


 ため息を付くと自身も気づかないまま掠れるような声で小さく呟いた。


「漸く……終わる……」


 ときの声は本当に小さく、言葉に込められた消えることのない悲しい記憶と共に冷風が音を乗せて運んでしまう。

 ライトに聞こえていたかは分からないが、「そうですね」と口が小さく動いたように見えた。

 いつのまにやら、2人だけの無音の空間は現実世界へと戻ってきたかのように無くなっており、今は子供の声や車の音、自然の音が鳴り響いている。いつの間にか、お昼も終わりを告げていたようだ。

 空を見上げたときは思った。何のためにここにいるのか……と。

 鳥が羽ばたくことがない広すぎる空を見つめていると、逃れられない記憶が心を抉り取り、消えゆく運命に身を任せたくなる感情が芽生える。

 こうしてときの命に砂時計がぶら下げられた。

 これから待ち受ける運命と共に。





残り約179時間

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