三十七・五℃、媒介性の恋
白江桔梗
三十七・五℃、媒介性の恋
最新の研究によって、恋は虫が関わっていることが証明された。
その話を見て、寝起きで上手く働かなかった頭は冴え出す。何を馬鹿馬鹿しいことを、そう思う自分がいる一方で、どこか胸の引っかかりが取れた自分もいた。まったく、恋とは脳や心のバグだなんて上手いことを言ったものだ。
今日
では、そこで問題が一つ浮上する。なぜ今まで見つからなかったかのか。だが、答えは
この論文を発表した研究チームは、人間社会と密接に関わりのある昆虫群について調査を行っていたところ、個体数データに明らかに見合わないタンパク質量を計測した。つまり、
蚊であるということは、その生育に植物あるいは動物の血液を必要とする。だが、自然豊かな森には本種は生息しておらず、コンクリートジャングルである都会に数多く生息していたことから、人間の何かを利用して生きている可能性が高く、様々な実験からこの虫は人間の心臓から、血ではない
一説では人間の感情を栄養としているという話もあるそうだが、それは定かではないとのこと。そして、胸を刺された人間は一様に、発熱や狭心症に似た症状が起きるという。だが、人間と共進化を遂げた生物であるが故か、それによって死に至ることはない。むしろ、この虫に刺された人間は周囲の人間、特に異性に対して
「んー、おはよう……そんなに集中してスマホを見るなんて、面白いことでも書いてあった?」
眠気まなこを
「……ううん、何でもないよ」
つまり、君と目が合うだけで
「さっ、朝ごはん食べて出かけようか。始業式までに部活のシューズ、買い替えたいんでしょ?」
この想いは、この苦しみは、ただの虫のせいだったんだね。
三十七・五℃、媒介性の恋 白江桔梗 @Shiroe_kikyo
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