第7話 連絡先を交換しましょう

 あの約束をした時以来、しばらく白幡さんとは話さなかった。


 何故かと言われればもちろん白幡さんの席にはいつも人が集まっているからだった。


 ……まあ俺が諒の所へ避難している事もあったが。


 ────そうして1週間が過ぎた頃。


 ガチャ。

 俺はいつものように玄関のドアを開けた。


「あ」


 なんと。


 ドアを開けた先には白幡さんが歩いていたのだ。


 白幡さんもこちらに気付いたようで


「え?」


 という声を出して目を丸くしていた。


「た、高宮さん」

「ど、どうも」

「こんなところで会うなんて驚きです」

「それはこっちもそうですよ」


 そんな他愛ない話をしていると、


「折角なので、一緒に行きませんか?」

「え?」


 そんな事を言われるなんて思ってもいなかった。


 ……まあ期待していなかったと言えば嘘になる。


 こうして俺と白幡さんは一緒に登校する事になった。

 後で諒になんて言われるんだろうか。


 …………今は考える事をやめた。


「……白幡さんはこの近くに住んでるんですか?」

「は、はい。高宮さんもここに住んでいるんですね、近くに住んでいたなんて驚きです」


 どんな偶然だよ!と自分でツッコミしながらも、心の中でガッツポーズをした。

 しかしそんな喜びもつかの間。


「………………」

「………………」


 …………気まずい。


 それもそのはず、今まで会話も片手で数えれるくらいしかしていないので相手の趣味や好みも分からないので、会話のネタなどもあまり思い浮かばなかった。


 あぁぁぁ! なんでこういう時に限ってなんも思いつかないんだ!


 何かいい会話のネタはないか必死に頭で考えていたが、考え終わる前に白幡さんが口を開いた。


「た、高宮さん」

「? は、はい」

「連絡先を交換しましょう」

「あぁ、分かりました……ってえ?」


 流れが唐突過ぎたので普通に承諾してしまった。


 え? 今この人連絡先を交換しようって言った?


 まじ?


「あっ! 嫌なら全然大丈夫です! ただ折角こうやってまた会ったのも何かの縁だと思うのでこういうのは大切にしていたいんです…………」

「い、いや、全然大丈夫なんですけど突然だったので驚いただけです」

「で、ですよね! ではこれを!」


 なんか流れに押されているような気がするのは気のせいだと信じて、スマホを差し出した白幡さんと俺は連絡先を交換した。


「これで大丈夫ですかね?」

「ありがとうございます……!」


 白幡さんは目を輝かせながら、スマホを見つめていた。


「私、あまり友達がいなかったので……こうやって友達と交換出来て嬉しいです」


 俺は白幡さんのあまりの可愛さにドクンと心臓が跳ねた。


「あれ、俺白幡さんの友達になったんですね?」

「あ、駄目でしたか!? ご、ごめんなさい!」

「違いますよ、俺も友達が少ないので嬉しいです」

「ならよかったです……!」


 いつの間にか白幡さんの友達認定されていたらしい。

 俺は再び心の中でガッツポーズをした。


 ただでさえ友達が少ないのに美少女と連絡先を交換した事実を受け入れられず、心臓がずっとばくんばくんと鳴っていた。


「そして高宮さん」

「は、はい?」


 まだ何か要求があるのか。


「折角友達になりましたし、今後は普通にタメ口で喋りましょう」

「え、えぇ……?」


(ちょっとなんかグイグイ来すぎでは……!?)


 今日は忘れられない一日になりそうだ。

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