夏の特別編・夏の甘い思い出

羽弦トリス

夏の特別編・夏の甘い思い出

現在、梅雨の真っ只中。1ヶ月ほど我慢すれば、アッツイ本格的な夏が到来する。

僕は生まれも育ちも鹿児島県。

進学の為に上京し、何故か今は名古屋に住んで22年になる。

少年期は野生児で、山から竹を切り取ってきて、釣り竿にして魚を川で釣っていた。

ニジマスが釣れた時はとても喜んだ。

また、小川の石堤の穴へ釣った小魚をエサに一晩浸けておいて、翌朝テグスを引くと、ウナギが釣れた。

一日に4匹釣れた時は嬉しくて、実家の外の水道の前で、魚用のまな板にウナギを釘で打ち付け背開きにして、骨を取り、ぶつ切りにして、蒲焼きを作ったりしていた。

魚の捌き方は、親戚のオジサンから教えてもらい、少年時代から三枚に下ろせるのだ。

これは、中学生まで続いた。魚釣りに飽きたら、川で泳いでいたもんだ。


中学生になると、鯉釣りにはまった。巨大な鯉がヒットしたがリールからのテグスがパンッといって千切れてまさに大魚をのがしてしまった。

それからは、50センチ程の鯉を数匹。

野生児の夏は終った。

高校に入ると色気付いた。それまで、魚釣りか囲碁しかしない若年寄が恋をする。魚の鯉ではない。

テレビゲームには全く興味が湧かなかった。そんな暇があるなら、小説を読んだ方が楽しい。

あれは、高校1年生の冬だった。当時はスマホなんてなかったから、ポケベルが流行していた時代である。

同じクラスの女の子から、好きだと言われた。

僕はOKした。かわいくて、胸が大きい女の子だ。


彼女が出来ても、僕は今まで魚釣りや囲碁しか知らないので何をしていいのか、分からなかった。

付き合って半年、休み時間にお喋りしたり、放課後弓道部なのにUNOをしていた。

あれは、高校2年生の夏。彼女の自宅の近くの運動公園で、下らないお話をしていた後だ、、、。

「ハヅル君、手を繋いでくれる?」

と言われて、

「いいよ」

と、答えた。手を繋ぎ運動場を1周した。

それから、登下校は手を繋ぐのが当たり前になり、間も無くしてチェリーボーイを卒業した。


大学を1年で退学して働いた。超就職氷河期で兎に角働きたかったのだ。一時、鹿児島に戻り働いたが、名古屋に出てきた。

彼女が地元ではなく名古屋の病院の看護師として働き始めたからだ。

名古屋は大いなる田舎で、心が落ち着く。

彼女とは9年間付き合ったが別れた。それが、26歳の時である。


28歳の夏、新しい彼女が出来た。5歳年下だが、僕よりもしっかりしている。

2年間付き合い、結婚した。

嫁さんが妊娠した時は嬉しかった。

2人でハイタッチして喜んだ。

やがて、息子が生まれた。名前は僕が1ヶ月間考えて命名した。

ある程度大きくなったら、夏は市民プールへ連れていくのが恒例となった。息子は小学6年生になっても僕と手を繋いで歩いた。

既に僕は40代になり、腹が出ているホントにビジュアル的に問題のある父親になった。


プールが終ると、コンビニへ行き息子はアイスかジュース、僕はビールを飲む。

息子に、

「パパがビール飲んだ事は内緒にしてね」

「うーん」

「頼むよ」

「分かった。じぁ、から揚げ君買って!」

「……なんて、ヤツだ!」

その息子も今は中学生。人間が歳食うのは早い。

また、アスファルトが焼ける夏がやってくる。

43歳だが、夏が来れば心踊らせる。

今年も、息子は市民プールに行きたいと言うのだろうか?

出来るだけ、息子と接したい。

真夏はもうすぐだ!


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夏の特別編・夏の甘い思い出 羽弦トリス @September-0919

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