第7話 RPG配信① #猥褻物陳列罪
「大して関わりないご近所さんに話しかけられたら気まずいよな。はい、どうも、黒樹ハルです」
ーー
『同意でしかないがなぜ今www』
『初っ端かましてきやがった』
ーー
もちろん、今世では引きニートだから一切外に出たことないしご近所さんがいるのかも知らんが。箱入り娘というか箱入り息子。
「そんなわけで一時間ぶり、お前ら。今回は趣向を変えてRPGやっていくぞー」
ーー
『ずっとミークラだったから嬉しい』
『ミークラも楽しいけど同じゲームはね』
ーー
「すまんすまん。俺がミークラにハマってたんよ。なんだろうなぁ。ああいう創作ゲームって深みにハマると抜け出せなくなる。オリジナル性って大事だよね」
ーー
『気持ちは分かる』
『自分だけの◯◯〜、みたいのは憧れるw』
ーー
「だろ? 次回のミークラはお稲荷像を作るから見てくれよな!」
ーー
『お稲荷(意味深)』
『遠慮が消えたwww』
『小悪魔清楚……どこ』
『もうすでに……下ネタに侵食されちまったよ……』
ーー
「最初から内心で下ネタ言いたいなぁ、ってずっと思ってたが? むしろ、下ネタが清楚を侵食した」
ーー
『そんな真実聞きたくなかった』
『内心でムラムラしてるやん』
『抑えろよ、抑えろよぉ!』
ーー
なかなか盛り上がってるな。
これはキャラを作っていた時の勢いを凌駕している。配信している俺も楽しいし、心なしか下僕も遠慮がなくなっている気がする。
ふぅ……素晴らしい。
「やはり下ネタは世界を救うのか……」
ーー
『は?w』
『どうしてそうなったwww』
『その帰結はおかしい』
『男宣言して下ネタ言いまくってるVtuberってマジ?』
ーー
「下ネタに貴賤無し。絶対他のVtuberだって内心で悶々してるって!」
ーー
『お前と一緒にすんな』
『他が可哀想だろ』
ーー
ぐすん……扱いが酷い。
我男ぞ? 恐らく世界初の男性Vtuberやで?? もっと騒いでもよくない? チヤホヤしてもよくないぃ!?
「くそが。先進まないからゲームやっぞ! ぱいぱい!」
ーー
『おいこらw』
『なんのゲームやんの?』
ーー
「知ってる人いるかなー。俺も完全初見だから手探り状態なんだけどな。下僕のリプライで教えてもらったゲームだぜ。その名も……!」
てぃっ、と、慣れてきた操作で画面にゲームを映す。
昔懐かしのドット絵と、特徴的なゲーム音楽が流れる。
「『冒険者の村ッッ』!!」
そこまで人気はないから、きっと隠れた名作とかそんな感じだと俺は思ってる。
滲み出るクソゲー臭。
だがやりもしないでクソゲーと決め付けるのは三流なのだ。ちなみに俺は120%クソゲーだと思ってる。は? 三流ですが何か?
ーー
『え、何これ知らねー』
『絶対有名どころ踏んでくると思ったのにマジで知らねぇ』
『まじか。ワイ、オススメしたやつやんw』
ーー
「お、リクエストしてくれた下僕、ありがとなー。こういう隠れたゲームを発掘させるのも配信の醍醐味だ。ま、楽しんでいってくれぃ! ゆっくり進めるからなー」
ーー
『おけ!』
『RPGって初見以外はあんまり楽しめないしね。楽しみ』
『神ゲー期待w』
『いや、溢れ出るクソゲーwww』
ーー
だよな。溢れ出てるよな。
怪しさ満載なんだよ。言ってないだけで。
「レッツスタート!」
スタート画面を押すと、中世風の街が映し出され、テキストが現れる。
【ここは冒険者が集う街『ボーケンシャー』】
「もっと良い名前なかった??」
手抜きすぎだろ。
ーー
『そのままで草』
『捻りを寄越せ』
ーー
【そこで暮らしている『貴方』は街の嫌われものだ】
「ほうほう。これはあれか? 主人公の暗い過去エピソード的な」
【何故なら、貴方は一糸纏わぬ輝かしい裸体で街を闊歩しているからだ】
「そりゃそうだ!! 服を着ろ! てか、なんでテキストメッセージはちょっと肯定的なんだよ。輝かしい裸体なんていらんわ。フルフルティンティンでええやろ」
ーー
『至極真っ当な理由だったw』
『ただの変態じゃねぇかw』
『お前はお前で下ネタ言うなよ』
『フ ル フ ル テ ィ ン テ ィ ン』
『www』
ーー
「包み隠さず言っただけだが?」
ーー
『ゲームの主人公は服を着てもろて、黒樹ハルは言動にフィルターをかけてもろて』
『無理だろ(確信)』
ーー
「うん、無理」
ーー
『即答w』
『くっそ、いい笑顔だな!』
ーー
【さて、街の治安を守る衛兵である貴方は例え嫌われていようと職務を全うしなければなりません】
は!?
「お前衛兵なのかよ! 冒険者の街要素どこ!? 街の治安守る前にお前の股間の治安を守りやがれ!!」
どうなってんのこの世界。衛兵が治安を乱しているの本当に草なんだけど。
ーー
『衛兵なん!?』
『衛兵カモン!かと思ったらまさかの御本人だった』
『うっそだろおい』
『股間の治安は草』
『パワーワードだろw』
ーー
そんなツッコミは他所にゲームは進む。
【さあ、今日も街の平和を守るために貴方はパトロールに向かいます!】
「平和を守りたいなら服を着ろ。お前の特級呪物がプランプランしてたらだめなんだよ」
ーー
『特 級 呪 物 w』
『ティンティンを呪い扱いすんなw』
『聖なる……いや、性なるもんだろォ!』
ーー
「言い直すなよ」
どうもテキストメッセージはゲームの導入部分だったようで、操作可能になり自キャラが表示された。
槍を持った衛兵は全身がモザイクに包まれていた。
「ゲームにまで猥褻物陳列罪扱いされててウケる。ドット絵のせいでやけに風景に馴染んでるのも結構腹立つな」
ーー
『確かに』
『違和感がねぇ……』
『草』
ーー
「じゃあ、操作していくぜぇ!! これが進む……で、おっけ、とりあえず街を練り歩いてみるぜー」
適当に喋りながら真っ直ぐキャラを操作していると、再びテキストメッセージが現れた。
ほう、強制イベントかね。
【あ! 善良な市民に暴力を振るっている冒険者がいます!】
筋肉ムキムキの男と、蹲っている少年がいる。存在が犯罪物質のコイツだが一応、一応! 衛兵だ。
【貴方はどうしますか?
1.冒険者と共に暴力を振るう
2.市民を助けるため場に飛び込む
3.股間を強調しながら下卑た視線を二人に向ける】
「おい、3番。一つだけ選択肢おかしいだろが。てか、強調ってなんだよ」
ーー
『いいぞ、もっとやれ』
『明らかに遊び心満載だな、運営』
『強調w』
ーー
「2、以外あり得ねぇだろ。よっと……」
なぜか下僕たちからブーイングが送られた。謎すぎる。
【あ? 誰だお前って、なんで裸なんだよ!!】
【選択肢
1.俺は衛兵だ!
2.ありのまま自分。それを大切にすべきだと思わないか?】
「曝け出す部分が間違ってるんだよ。ゼロか百で動いてるだろお前。こんなもん1だ、1」
【お前が衛兵!? 世も末だな!!】
「ごもっともで。おい良いのか、さっきまで市民殴ってた奴にこんな正論言われて」
ーー
『世も末w』
『同意でしかない』
『犯罪者に諭される衛兵w』
ーー
マジでなんだよ、このゲーム。
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